Home / ホラー / 怖い話まとめ2 / Chapter 41 - Chapter 50

All Chapters of 怖い話まとめ2: Chapter 41 - Chapter 50

63 Chapters

第六感

 私の妹は勘がいい。というか、特別な力を持ってるのかもしれない。 子供の頃から、色んなことを予知してきた。 例えば、小学生の頃、妹はブランコで遊ぶのが大好きだったんだけど、放課後に公園に行っても、ブランコに乗ろうとしない。「今日はブランコいいの?」って砂遊びをしてる妹に聞いたら、「今日はブランコだめだよ」って言う。 私はお姉さんぶりたいというのもあって、妹と一緒に砂遊びをしてた。しばらくすると、他の子がブランコで遊びだしたんだけど、鎖が外れて、その子は怪我をした。 こんな感じで、悪いことを予知していた。 妹の予知能力は大人になっても衰えることはなかった。 大学どこに行こうか、パンフレットを見ながら悩んでると、「ここは駄目」ってとある大学のパンフレットをゴミ箱にねじ込んだ。 今までのこともあるし、他にも候補はあるから、その大学を候補から外して、違う大学に入ったら、例の大学は不祥事が発覚して炎上してた。 妹も同じ大学に入って、一緒にお昼を食べてる時に好きな人の話をしてたんだけど、「その人とは関わらないほうがいい」って言い出した。 恋は盲目というか、好きな人のことまであれこれ言われるのが嫌で、どうアプローチしようか考えてたら、好きな人は売春の斡旋をしてたらしく、逮捕された。 何回も救われてきたけど、1番はこれ。 大学卒業した後、アパートを借りてひとり暮らししてた。ちょっとボロいけど、割と居心地が良くて気に入ってた。 仕事から帰る途中、妹と会って、「今すぐ荷物まとめて」って切羽詰まった様子で言うから、最低限の荷物をまとめて、妹のアパートに一晩泊まった。 翌日、私が住んでたアパートは燃えていた。 別の部屋に住んでる女性がストーカー被害にあってて、ストーカーが放火したらしい。 前に妹にどうして分かるのか聞いたけど、「自分でも分からない。でも、絶対悪いことが起こるって確信する」って言ってた。
last updateLast Updated : 2025-12-21
Read more

公園の少女

 子供の頃、公園でよく一緒に遊んでる子がいた。Aちゃんっていって、可愛らしいけどおてんばな女の子。 Aちゃんはいつも公園でひとりでいて、私を見つけると、満面の笑顔で駆け寄って来て、「一緒に遊ぼ」って私の手を引く。 Aちゃんのことは大好きだけど、私はAちゃんについてよく知らない。 5時になると皆帰るか、親が迎えに来てくれるものなんだけど、Aちゃんは5時になっても帰らないし、誰も迎えに来ない。 前に1回「Aちゃんは帰らないの?」って聞いたら、「まだ帰れないの」って言ってた。 Aちゃんは私と同じくらいの身長だから、勝手に同学年だと思い込んでたけど、何年生なのかは知らない。同じ学校ではないことは確か。学校でAちゃんを見たことないし、学校の友達に聞いても、誰もAちゃんを知らなかったから。 ちゃんと触れるし、服も毎回違うから、幽霊とかではないと思う。 いつものように公園に行くと、Aちゃんは泣いていた。服もボロボロで、顔に土埃がついていた。「Aちゃん、どうしたの!?」「いじめられたの――」 Aちゃんは泣きながら、クラスの女子にどんなことをされたのか言った。 Aちゃんをわざと転ばせて、泥子って呼んだり、服をわざと汚したり切ったりしてボロボロにして、ボロ雑巾とか、雑巾女って言ったらしい。「ひどい! Aちゃんにそんなことするなんて!」「怒ってくれてありがとう。遊ぼ」 Aちゃんは涙を拭って笑う。私は少しでもAちゃんが嫌なことを忘れますようにって願ってから、思いっきり遊んだ。 家に帰ると、お母さんにAちゃんの相談をした。「ねぇお母さん聞いて! 私の友達、Aちゃんって言うんだけど、学校でいじめられてるみたいなの」「Aちゃん?」「そう、Aちゃん。違う学校の子なんだけど、よく公園で一緒に遊んでるんだ」 私はAちゃんがどんなことをされたのかお母さんに話して、どうすればAちゃんを救えるか一緒に考えてほしいって相談した。お母さんは難しい顔をしてたけど、助言はくれなかった。 その日から毎日Aちゃんはボロボロになって泣いてるし、そのことをお母さんに話したら、複雑そうな顔をしていた。 どうしたらいいか聞いても「違う学校のことはどうしようもない」って言うばかりで、ここまで頼りにならないのかとお母さんに失望したりもした。 それでも話さずにはいられなかった。 Aちゃ
last updateLast Updated : 2025-12-21
Read more

死人沼

 大学生の頃、旅行サークルに入ってた。旅行して、その土地の歴史や名産品なんかをまとめたりしてた。 隣県の温泉街に行った時、死人沼っていう沼の話を聞いた。なんでも、その沼に会いたい死人の遺品を投げ込むと、沼から死人が出てくるとか。 よくある怪談だと思って、友人のAにこの話をすることにした。 Aは高校から一緒で、サークルには所属せず、バイトばかりしていた。Aはオカルト好きで、よく色んな怪談話を仕入れては、俺に聞かせる。 Aにこのことを話してやろうと思い、連絡すると、ちょうど今夜空いてるっていうから、飯を食いに行った。「この前、隣の県にある温泉街に行ったんだけど、面白い話聞いてさ」「面白い話?」「怪談だよ」「つまらなかったらおごれよ」「面白かったらおごれよ」 俺はAに死人沼の話を聞かせた。最初はあんまり興味なさそうだったけど、次第に食いついてきた。「よし、ここ奢ってやる! だから今度、その死人沼に連れて行ってくれよ」「肝試しか? 冬だってのに」「いいじゃねーか。帰りにラーメンでも奢ってやるから、連れてけよ」 苦学生にとって、これ以上魅力的な殺し文句はない。俺は即答し、Aと隣県に行く予定を立てた。 肝試し当日、日中は旅行サークルで行けなかった観光地に行ったりした。ついでに死人沼の下見も。 夕方に宿にチェックインして、夜10時に宿を出て、死人沼に向かう。沼の近くは街灯がなくて、懐中電灯の灯りを頼りに進んだ。 無事、死人沼についてから気づいた。投げ込む遺品がないと意味がないんじゃないか?「なぁ、石でも投げてみるか?」 Aは俺の声なんて聞こえてないのか、上着のポケットから何かを取り出し、沼に投げた。暗いから何を投げたのかは分からないけど、手に収まるくらい小さなものだ。 それはぽちゃんと間抜けな音を立てて沼に落ちた。「Bに会わせてくれ!」 それを聞いて、俺は後悔し、自分のバカさ加減を呪った。 AにはBという歳の離れた弟がいたらしい。Aが中1の時、弟は小学2年生。放課後、偶然Aを見つけたBは、兄を見つけて嬉しくなったのか、道路に飛び出し、轢かれてそのまま亡くなってしまったという。「A、悪かった――。もう帰ろう」 俺がAの腕を引くと、沼からコポコポと音がした。何かがぬぅっと出てくる。懐中電灯で照らすと、小さな泥の塊だ。「B!」 A
last updateLast Updated : 2025-12-21
Read more

首折り椿

 俺は大手企業の支社で働いてる。そう言うと聞こえはいいかもしれないが、片田舎だ。それも、変な迷信が未だに残るようなところ。 町のはずれに小さな丘があって、丘の上には首折り椿と呼ばれている椿の木がある。かなり古い木で、何十年も前からある。下手すりゃ100年以上前から存在するらしい。 その椿に関する迷信がある。首折り椿を渡すと、相手は死ぬとか、クビになるとか。だから、誰もこの椿に触ろうとしない。もちろん、俺も。 働き始めて6年くらい経った頃だったかな。新しい上司が異動してきた。前の上司は気の弱いおっさんだったけど、新しい上司のAは30代で、やる気に満ち溢れていた。 今時いるんだ、こんな熱血バカって感じの人で、体調不良で作業効率が落ちてる人に、「大丈夫だ! 君ならできる! 信じてるから」と圧をかけたり、残業をさせる時に「今は大変だけど、きっとこれが糧になって役に立つ時が来るから」と言ったり、なんかズレてる。 前の上司はやれるだけやればいいって人だったから、俺も同僚たちも、Aが苦手だ。Aは鬱に理解がなく、精神疾患を患ってるBにしつこく絡んだ。 Bは自分のペースを崩されたり、目の前に大量の書類を積まれると軽くパニックになることがある。その代わり、集中力は誰よりもあって、黙々と仕事をこなしている。 ただ、メンタルに影響が出ると、早退してしまう。 特別遅いってわけじゃないし、仕事も丁寧だから、誰もBを咎めなかった。 でも、Aは違う。「Bさんは仕事できる人だから大丈夫だって。これもやってみよう」「甘えちゃ駄目だ! さぁ、これもやってみよう」といった風に、やたら仕事を任せたり、早退させなかったりする。 他の人が事情を説明して早退させるように言っても、「引き継ぎでBさんのことは聞いてる。でも、このままじゃBさんは成長しない。苦難を乗り越えてこそ、手に入れられるものがある」と抜かしやがる。 Bは無断欠勤や、無断早退が増えていった。俺達は仕方ないと思ったけど、Aはやはり違う。Bがいないことに気づくと、Bの家に突撃して無理やり引っ張り出してくる。 Bから聞いた話だけど、両親が説得しても、「そうやって親御さんが甘やかすからいけない。Bはもう社会人なんだから、頑張らないと」と言って、無理やり引っ張り出すらしい。 しかも、止めてるのにズカズカと家に上がり込むとか。 こ
last updateLast Updated : 2025-12-21
Read more

コトガミ

 子供の頃、たぶん、幼稚園生の頃だったと思う。お婆ちゃんから紙で出来た人形をもらった。紙で出来てるので、一般的な人形みたいな立体さはない。 折り紙で作るやっこさんって知ってる? あれみたいな感じ。 紙人形を大きめのお守り袋に入れて、「困った時はコトガミ様に頼りなさい」って言った。 その紙人形はコトガミ様というものらしい。つらいことがあったら、コトガミ様に話すといいって言われたんだけど、いくつかルールがあったの。・コトガミ様に汚い言葉(誰かの悪口)を言ってはいけない。・コトガミ様に「◯◯死ねばいいのに」など、死を願ってはいけない。・コトガミ様に相談して解決したら、必ずお礼を言わなければいけない。・コトガミ様を手放してはいけない。 コトガミ様をくれたお婆ちゃんは母方のお婆ちゃんなんだけど、お母さんは私がコトガミ様を受け取るのを、にこにこしながら見てた。お父さんは、薄気味悪そうに見てたかな。 コトガミ様は本当に効果があった。友達と喧嘩して、仲直りしたいって相談したら、向こうから謝ってくれたし、失くしものの相談をしたら、1時間後に見つかった。 だから私はコトガミ様を大事にした。いつもお守り袋に入れて持ち歩いたし、無闇矢鱈に人に見せるようなこともしない。 毎日コトガミ様に声をかけてた。といっても、挨拶がほとんどだったかな。「おはよう、コトガミ様。今日は天気いいね」って感じで。 事件が起きたのは小学1年生の秋。学校は楽しかったけど、問題児のAが嫌だった。すぐに暴力振るうし、悪口も言ってくる。クラスメイトの大半は、Aに泣かされた。もちろん、私も。 その日の放課後、私は図書室で宿題をしようとしてた。私はバス通学だったので、放課後はバスが来るまで暇なので、遊んだり、宿題をしたりしてたの。 バスが来るまで40分くらい時間があったかな。 筆箱を開けたら消しゴムがない。あと、ランドセルにつけてたお気に入りのキーホルダーも。 私はコトガミ様を連れて、教室に戻った。誰もいない教室で消しゴムとキーホルダーを探しても、どこにもない。「コトガミ様、消しゴムとキーホルダーが見つからないの。どうしよう――」「お前、何に話しかけてんだよ、キモ―!」 振り返ると、Aがニヤニヤしながら近づいてくる。「見せろよ」「嫌!」「いいから見せろって!」 Aは私を突き飛ば
last updateLast Updated : 2025-12-21
Read more

水神の子

 俺が子供の頃の話。子供の頃は村に住んでて、村人達にはやたら可愛がられた。黙ってすれ違うなんてことはまずない。絶対に笑顔で声をかけてくれるし、大半の人はお小遣いやお菓子をくれた。 物心がつき始めた頃は、数少ない子供だからだと思ってたけど、どうやら違うっぽい。 俺の他にも子供は何人かいた。年上はふたり、同い年はひとり、年下にひとりだったかな。 皆と遊んでると、全員に声はかけるんだけど、なんか違う。 俺には「今日も元気に遊んで偉いね」って感じなんだけど、他の子には「◯◯(俺)に怪我させないようにね」って言う。 それは全員の大人がそうで、例えば同い年のAと遊んでる時にAの親に会うと、「うちのAと遊んでくれてありがとね」と言って、お菓子やお小遣いをくれる。で、自分の子には「◯◯くんに無茶させたりしないでね」とキツめの口調で言う。 中には差別的っていうか、あからさまっていうか、何人かで遊んでるのに、俺にだけ声をかけて何かをくれて、他の子には何もないって人もいる。 大半の人は大袋のお菓子をくれるから、皆で食べられるけど、そういう時は困る。 小さい頃は自分だけ特別扱いされて気分が良かったけど、だんだん嫌になってきた。嬉しいのは嬉しいけど、皆に申し訳ないというか、気まずい。 だから、俺にだけ何かをくれる人を遠くから見つけると、皆と違う道を選んだりしてた。 そんな俺でも、村人にこっぴどく叱られたことが1度だけある。 村は川沿いにあるんだけど、夏、暑いしプールも遠いから、皆で川遊びをしようってことになった。 中央は結構深いけど、浅瀬は足首に浸かる程度だったから、そこで水の掛け合いとかして遊んでたら、全員怒られてげんこつを食らった。 特に俺はこっぴどく叱られて、2発も殴られた。 水辺は危ない的なことも言われたけど、近くにある祠がどうとか言われた。 土手があって、土手を降りると狭い河川敷があるんだけど、土手を掘って作った祠がある。それが大事なものらしい。 でも、俺達が遊んでいた場所と祠は結構離れてるし、祠がある方に向かって水を飛ばしても、絶対に届かない距離だったから、理不尽だと思った。 中学3年生の頃、事件は起きた。 朝から村が騒がしい。何があったのか聞いても、誰も教えてくれなかった。けど、親を含め、会う人全員が、「今日はまっすぐ帰ってこい」って言うん
last updateLast Updated : 2025-12-21
Read more

事故物件の鏡

 Aっていう友達が、事故物件に住んで変わった話。 私の友達のAは、物静かで、自分から発言することはほとんどない子だった。だから友達も少ないし、目立たない。 そんなAが、事故物件に引っ越した。どうしてそんなところに住むのか聞いたら、「やりたいことあるから貯金したいんだよね。私霊感とかないし、節約したいからさ」って言ってた。 私も霊感はないけど、幽霊は信じてるので、Aが住んでるマンションには行かなかった。 Aとは月に1回会って遊ぶような仲なんだけど、事故物件に住むようになってから、Aは少しずつ変わっていった。 最初に変化があったのは髪型。Aは重たい前髪で顔の半分近くが隠れてるし、美容室が苦手で、髪は腰まであった。 なのに、セミロングくらいになってたし、前髪もワックスかなにかでいじって、顔がよく見えるようになった。 次は服装。黒無地とか、ネイビーとか、シンプルかつ暗い色の服ばかり来て、ズボンばかりだったのに、暖色系のおしゃれな服を着るようになった。寒色系を着たとしても、前みたいな全身黒とかじゃなくて、淡いブルーのトップスに、白いフレアスカートと爽やかな感じ。 性格も徐々に明るくなって、前より笑うようになったし、すごく楽しそう。友達として、Aのこの変化は嬉しいけど、不思議で仕方なかった。「A、最近いい方向に変わったよね。恋でもした?」「恋はしてないよ。でもね、友達ができたの」「どんな?」「鏡の中にいるんだ」 にこにこしながら言うA。予想の斜め上の回答に固まってると、Aが話してくれた。 今住んでる部屋には、洗面台に大きな鏡があるらしい。鏡にはユキという女の霊がいて、Aに似合う髪型や服装を教えてくれたり、励ましたりしてくれるそうだ。「すごくいい子なんだよ。会ってみる?」「いや、いい――」 幽霊は信じてるけど、怖がりの私は丁重にお断りした。 幽霊っていうと悪霊のイメージが強いけど、いい霊もいるんだなって、霊に対するイメージが変わった。 あと、Aのイメチェンに失敗した私としては、ちょっと悔しいし、謎の対抗心が芽生えてる。
last updateLast Updated : 2025-12-21
Read more

アルビノ信仰

 高校の頃、映画同好会を作った。メンバーは俺、A、B、C、Dの5人。ついでに、映画好きの顧問がひとり。 活動内容は同じ映画を見て、感想を語り合ったり、映画の技法について学んだりしてた。 部室は視聴覚室だった。 夏休み、俺達はいつものように視聴覚室に集まった。家だと暑いし、クーラーガンガンつけてたら文句言われるから、皆避難所感覚だったと思う。 どんだけ低い温度に設定しても文句言われないし、大好きな映画も観れるから、最高だった。 いつも10時頃に集まって、映画鑑賞→語り合い→飯→映画鑑賞→語り合いって流れなんだけど、映画のDVDを持ってくる順番は、俺&顧問、A&B、C&Dのローテーションだから、喧嘩することもなかった。 その日、俺と顧問の日だったので、俺はあえて冬の映画を持ってきた。顧問は古いバットマンを持ってきてた。ジョーカーがジャック・ニコルソンのやつ。 飯食い終わって、顧問が持ってきたバットマンを見てると、ジャックが薬品の樽に落ちたところで、Aが止めた。一時停止ボタンを押したんじゃなくて、プレイヤーの電源をオフにした。「なんだよ、これからおもしろくなるっていうのによ」「ふざけんなよ」 ブーイングの嵐だったけど、Aの顔色が悪いのに気づいて、体調不良かなにかだと思って心配しだした。「ごめん、怖いこと思い出して――」 今思えば最低だけど、俺も他の奴らも話を促した。最初は嫌がってたけど、しつこく聞いたら、渋々話しだした。 Aがこの辺に引っ越してきたのは、中学生の頃だったらしい。俺はAと知り合ったのは高校に入ってからだったので初耳だ。 Aが引っ越す前、その地域にはカルト宗教があったらしい。その宗教はアルビノを信仰してた。 俺も詳しいわけじゃないけど、アルビノっていうのは、生まれつき色素が少ないんだったかな。それで、髪も肌も白いし、瞳の色も赤っぽかったり、グレーだったりするとか。 信者は時折近くの家を回っては、「我々と共に神(アルビノ)に仕えて、幸せになりませんか」って勧誘してたそうな。 特に熱心だったのが、色黒のおばさん。黒さんって書く。 黒さんはアルビノは天使の生まれ変わりだとか、神の使いだとか言ってた。他の信者ももちろん言ってたんだけど、なんていうか、熱量も違うし、うまく説明できないけど、他の信者よりヤバい感じがしたとか。 黒さん
last updateLast Updated : 2025-12-21
Read more

おうちに帰りたい

 怖いというか、不思議な話。 私はたくさんの子供達がいる施設で働いてる。ここには訳あって家族と暮らせない子や、赤ちゃんポストに入れられてた子がいる。 赤ちゃんポストに預けられてたAちゃんって子がいて、その子は変わっていた。 5,6歳あたりから、「おうちに帰りたい」と「ママに会いたい」が口癖になった。Aちゃんは赤ちゃんポストに入れられたから、両親の顔も、住むはずだった家も知らないはずなのに。 施設では子供達が少しでも社会に溶け込めるように、町の中を散歩したり、買い物をしたりするんだけど、Aちゃんと他に数人の子供を連れて散歩してると、Aちゃんが「ここ!」と言い、繋いでた手を振りほどいて、その家の敷地に入っていった。 ちょうど家から出ようとしてたのか、20代前半の女性が出てきて、Aちゃんはその女性に抱きついた。「すいません! Aちゃん、駄目でしょ」「やだ! ママといる!」 Aちゃんは女性にしがみついて離れようとしない。女性もAちゃんを抱きしめ、慈しむような目で見ていた。 なんとか女性――、佐藤さんと説得をして、Aちゃんと施設に帰った。それからは大変で、Aちゃんは毎日「ママのところに帰る」と言って泣いていた。 数日後、佐藤さんが施設に来て、Aちゃんを引き取りたいと言う。話を聞くと、「私、妊娠も出産も経験したことないんですけど、Aちゃんが自分の子に思えてしかたないんです」と言ってた。 手続きを終えて、Aちゃんは佐藤さんの娘になった。時々ふたりを見かけるけど、ふたりは本当の親子のようにしか見えなかった。 
last updateLast Updated : 2025-12-21
Read more

2階の地下

 あれがなんだったのか、未だに分からなくてモヤモヤしてる。 3年前、俺はアパートの2階に引っ越した。特別安いとか、近くに墓地や石碑があるとか、そういうのはない、普通のアパート。 家賃は平均より少し高いくらいだけど、新しめだし、収納もたくさんあったから気に入ってた。 荷物を部屋に入れ終えた後、改めて見て回ってると、リビングに床下収納があったので、開けてみたら階段があった。 コンクリで出来た急な階段で、灯りはあるように思えない。 ビビリだし、「あ”、あ”ー――」って声がうっすら聞こえた気がして、降りる気になれなかった。急いで閉めて、不動産に電話した。 不動産は何号室か確認してきたので伝えると、焦った声で「今すぐそちらに向かいますので、荷解きしないでください」って言って、電話を切った。 20分くらいすると、顔色の悪い不動産がふたり。担当してくれた人と、上司と思われる人が来て、高級菓子折りを持ってめちゃくちゃ謝ってきた。「すいませんが、引っ越していただけませんか? こちら、候補です」 見せてきた物件は、どれも家賃15万以上の物件で、俺が住めるようなところじゃない。「1年間、無料でいいです。その1年で、新しい物件を見つけて、そちらに引っ越してください」 理由を聞いても、話してくれなかった。 ビビリだし、ここから離れたいとは思ってた。それに、無料で高級物件に住めるなんて、夢みたいだ。 だから了承して、せっかくだからと、1番高い物件に引っ越すことになった。 ふたりは荷物を運ぶのを手伝ってくれて、即日で引っ越し完了。 高級物件なだけあって、住心地よくてさ。生活水準下げるの嫌で、必死に働いて年内に昇給したんだけど、不動産にもっと住みたいって言ったら、無料期間が終わった後、半年は半額にする。それが限界みたいなこと言われた。 改めて床下収納のことを聞いたら、勘弁してくださいって言われたので、あれがなんだったのか、未だに分からない。
last updateLast Updated : 2025-12-21
Read more
PREV
1234567
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status