中学と高校が同じのAって子がいるんだけど、Aは皆に嫌われてた。私も距離を置いてたけど、いじめとか嫌なので、最低限のコミュニケーションは取ってた。でも、それくらいで、友達ってわけじゃない。 Aはアイドル並みに可愛いし、性格も明るいんだけど、盗み癖があったから嫌われてた。 中学の頃は可愛い文房具とキーホルダー。高校の頃は財布とかアクセサリーも盗んでたっけ。 高校1年にして、3回目の盗みで退学処分。その後、Aがどうなったのか知らないし、冷たいようだけど、興味もなかった。 高校を卒業して、社会人になって2年も経つと、Aのことなんかすっかり忘れてた。 お盆休み、実家に帰ってゆっくりしてると、電話が鳴った。出てみるとか細い女性の声で「もしもし」と聞こえたんだけど、かろうじて聞き取れるくらい小さい声だった。「どちらさま?」「その声、〇〇?」 相手は名乗りもせず、嬉しそうに言う。声は少し大きくなった。「あの、誰?」「あ、ごめんごめん。私、Aだけど」 名前を聞いて、ようやく思い出した。でも、何故彼女が私に電話をしてきたのか、何故電話番号が分かったのかが気になった。「実は、話したいことがあって――」 Aの声は、少し震えていた。何かに怯えてるみたいに。「いいけど、まずはこっちの質問に答えて。どうして電話番号分かったの?」「学生の時、連絡網ってあったでしょ? まだうちにあって、それで知ったの」 この回答にあまり納得できなかったけど、Aと会うことにした。 Aの頼みでカラオケボックスに行くと、Aは先に来ていた。一緒に部屋に入ると、Aはカバンの中にあるものを全部テーブルに並べ、手錠とその鍵を私に渡してきた。「え? え?」「それが私の所持品です。財布の中を見てもかまいません。ここは私が出すつもりです。手錠をかけてください」 まくしたてるように言うAに、恐怖を感じる。「A、どうしたの?」「お願い、手錠をかけて。そうすれば、あなたも安心できるでしょ?」 泣きそうになりながら懇願するので、手錠をかけると、「鍵はあなたが持ってて」と言ってきたので、ポケットにしまった。「いったいどうしたの?」「私、盗み癖があって、それで退学したでしょ? その後、窃盗強制施設に入ったの。その話を、どうしても誰かに聞いてほしくて――」 そしてAは語りだした。 施設は2階
Last Updated : 2025-12-21 Read more