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All Chapters of 怖い話まとめ2: Chapter 61 - Chapter 63

63 Chapters

お犬様

 若い頃、100万円貯めてから旅に出た。子供の頃、棒を倒して、倒れた方に曲がっていくってやったことない? あの方法で旅をしてたんだ。 流石に木の棒を電車やバスに持ち込むわけにはいかないので、指示棒を買って、それを使った。先っちょに指し指がついてるやつな。 電車とかバスに乗る時は、路線図を広げて、指示棒で決める。分かれ道があった時もそう。 なんなら、メニューを決める時でさえ使う時もあった。 指示棒の向くまま旅をしてたら、ザ・田舎ってところにたどり着いた。店もなければ宿もないようなところで、隣の家が数百メートル先にあるようなところで、民家よりも田畑の方が圧倒的に場所を占めている。 どういうわけか、犬がたくさん歩いてる。最初は野良犬かと思ったけど、皆首輪っていうか、紅白のしめ縄みたいなのを首につけてた。 それだけでも不気味なのに、村人達は犬を見ると土下座みたいな体勢になって、崇めていた。「それ、なにしてるんすか?」 気持ち悪いと思いながら老婆に聞くと、「この村にとって、お犬様は神様なんだよ」って言ってた。 例えば、田畑を決めるのにもお犬様頼りらしい。普通、田んぼって決まった場所は何かない限り田んぼだし、畑って決めた場所も、ずっと畑で、植える野菜や果物も変わらないだろ? まぁ、俺のイメージなんだけど。 でも、この村では犬が1軒1軒回って、家主の顔を見て吠えたら田んぼ、吠えなかったら畑になるんだと。 俺みたいな客人が来た時も、犬が客人のにおいを嗅いでから、どこかの家に案内する。その家の人は客人をもてなさないといけない。 他にも色んなことを犬に決めてもらってる。 どっちが畜生か分からないなと思ったけど、口に出すのは辞めておいた。「おぉ、お犬様じゃ」 老婆と話し込んでると、1匹の犬が来て、俺のにおいをかぐ。「きっと家に案内してくださる」「いや、泊まるつもりは――」「お犬様に逆らうのは、お客人でも許されないよ」 老婆は俺を睨みつけながら言う。なんとも言えない気味の悪さに、背筋が凍った。 犬は数歩歩くと振り返って吠える。「ついてこいと言っておる」 うさんくさいと思いながらついていくと、民家の前で止まり、何回か吠えた。家からは小柄な女性が出てきて、俺と犬を交互に見ると、「お客様ですね、どうぞ」と家の中に招いてくれた。 断りたかったけど、断
last updateLast Updated : 2025-12-21
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身代わり人形

 まず、私はこの話の関係者ではあるけど、当事者ではないことを伝えておく。 社会人になると、Aという同僚と仲良くなった。Aは芸能人と言っても信じてしまうくらいには可愛いし、優しい上に細かい気配りもできるから、人気がある。 1年経って仕事にだいぶ慣れた頃、Aが神妙な顔をして、「話があるんだけど、仕事終わったあといい?」って言ってきた。 1年も経つとお互いの好きなものや性格が見えてくる。意外と共通点が多いAとは親友といっても過言ではないほど仲が良いので、「もちろん」と即答する。 仕事が終わると、Aの希望で個室の飲食店に入った。食事が運ばれてくると、Aは話しだした。「私ね、ストーカーに困ってるの」「え、誰!?」「Bさんなんだけど――」 Bというのは30代の既婚者で、私達の上司だ。面倒見が良くて、私達の教育係も自分からやってたし、教え方も丁寧で尊敬していた。「入社してすぐ、何かあった時のためにって、連絡先交換したでしょ? 最初は普通に仕事の話しかしてなかったんだけど、少しずつ内容が変わってきてね――」 AはBとのやり取りを見せてきた。最初は私もしたような仕事の話だったけど、徐々に変わっていった。 まずは仕事の話のついでに、ちょっとしたことを褒める。「今日の髪型似合ってた」とか「いつも珈琲飲みたいって思った時に持ってきてくれるから嬉しい」とか。 そのうち「今日の服可愛かったけど、もう少し可愛い色でもいいんじゃない?」とか「肌綺麗だよね。もっと見たいな。資料室でこっそり見せてよ」とか、セクハラ発言に変わっていく。「どうして返事くれないんだ?」「この服絶対似合うから着てみてよ【URL】」「グロス変えた? ぷっくりしててえっちだね。舐めてほしいな」「この前教えた服、まだ買ってないの? 買ってあげようか」「柔軟剤変えた? それとも香水? 前の匂いの方が好みだったな」「今週の有給同じ日だから、デートしようよ」「少し胸大きくなってない? 大人になっても胸って膨らむんだね」「うなじ見たいからポニーテールにしてきてよ」「好きだよ」「照れてるの? 返事してよ」「おーい」「どうしたの?」「おいってば」「返事しろ」 他にも、Aの隠し撮りした写真を送り、感想を書いたり、AV女優の写真を送って、「この子より胸大きそうだよね。触りたいな」とか、気持ち悪いこと書いてあった。
last updateLast Updated : 2025-12-21
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ケッソン村

 僕がまだ漫画家の卵として色んな出版社に原稿を持って行きつつ、会社員をしてた頃、同級生だったAから電話があった。「よぉ、久しぶり。お前、まだ漫画描いてるのか?」「あぁ、描いてるよ」「だったら、今俺が働いてるところ来いよ。きっと、いいネタになると思うぜ」 誘いは嬉しかったけど、Aの職業は義肢装具士。彼の職場はたぶん、病院とかリハビリ施設だろう。そう思うとすぐにイエスとは言えなかった。「俺、今はケッソン村ってところで働いててさぁ。珍しい風習がある面白い村なんだよ。いいところだから来いよ」「ケッソン村? どこにあるんだ、それ」「同じ県のどこかとだけ。詳しい場所はメールする。じゃあな」 一方的に電話は切られ、数分後にメールが来た。ケッソン村の住所と、「いつ来てもいいけど、前日には連絡くれ」という内容だった。 僕は木・金に有給を入れて四連休を作り、ケッソン村へとやらに行った。僕が住んでるところから、車で1時間半のところに、ケッソン村はあった。 村というと古めかしい家が並んでいるのを想像していたが、今時の洋風な家がほとんどだし、コンビニやスーパーもあって、生活するのに困らなそうな場所だ。 Aが職場として使っているという公民館に行くと、5,6人ほど人がいる。来客が珍しいのか、彼らは僕をじっと見てくる。それだけでも気味が悪いのに、彼らの半数以上は一部が人工物だった。義足や義手の人もいれば、義眼の人もいる。そういった人に偏見があるわけではないが、こんなにいるのは少し異常だ。 車から降りて彼らに挨拶をすると、Aが公民館から出てきた。「よぉ、久しぶりだな」「あぁ、久しぶり。招待ありがとう」「招待なんていうほど大層なものじゃねーよ。まずは村を案内してやる。美味い飯もあって最高だぜ、ここ」 浮かれ気味のAについていき、村を見て回る。すれ違う大人達は、ほとんどが義手や義足、義眼をつけていて、僕をジロジロ見てくるから、居心地が悪かった。 村は現代的で2階建ての小規模ショッピングモールもあったし、小さな運動公園なんかもある。見たところ、一通りのものは揃っていて、村というより小さな町と言ったほうがしっくり来る。 異様な点といえば、さっき書いた通り、体の一部が人工物の人が多いことだ。 しばらく歩き回ると、個人経営の蕎麦屋についた。「おう、先生いらっしゃい」「
last updateLast Updated : 2025-12-21
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