All Chapters of 異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい3: Chapter 41 - Chapter 50

54 Chapters

41話 唯一の龍殺し、神代の遺産を継ぐ者

 ……はぁ……。まさか独り言を、あんなにハッキリと声に出しちゃうなんてな。 気まずさを振り払うように夜道を歩きながら、俺はさっき手に入れた魔石のことを思い出した。そう言えば、以前ブルードラゴンを倒した時の魔石だけで金貨120枚の価値があったはずだ。ドラゴンは存在そのものが希少で、素材も魔石も天文学的な金額で取引される。低級のドラゴンですら滅多に現れず、討伐には国中の精鋭が必要な超高難度だと聞くし、あの値段も当然なのかもしれない。 隣で俺の腕に寄り添うサーシャに目をやると、彼女は可笑しそうにクスクスと笑っていた。「ねぇ、ユウヤ。あんなので驚いてたら、さっきの『最古のドラゴン』を売ったら国がいくつ買えちゃうだろうね~?」「……勘弁してくれ。そんなの出したら、命を狙われるどころか世界大戦になるだろ」「あはは♪ それもそうだね~」 彼女は俺の腕を強く抱きしめ、満足げに微笑んだ。俺の収納の中には、金貨何万枚、あるいはそれ以上の価値がある素材が眠っている。そんなとんでもないものを抱えながら、俺たちは穏やかな夜の街の喧騒の中を、恋人同士のように歩き続けた。「あれは本物だったのかな……?」  武器屋を離れた後も、俺は先ほどの盾のことが気になってサーシャに問いかけた。 どうにも、自分の収納にあるあの圧倒的な威圧感を放つ素材と比べると、頼りなく見えてしまったからだ。「ま~本物だよ?」「ん?『ま~』って?」「ドラゴンはドラゴンでも下級のドラゴンで、種族も弱いタイプだよ。それでもドラゴンだし、本物だよ」  サーシャは事も無げに答えた。 下級のドラゴンの鱗で、金貨15枚……。 もし下級のドラゴン一頭を丸ごと回収できたら、それだけで一生遊んで暮らせるほどの大金持ちになれるんじゃないだろうか。 下級で弱いとはいえ、ドラゴンの名を冠する以上、その防御力には期待していいはずだが。「だから質感やオーラが違って見えたのか……詐欺でも偽物でも無かったんだな。でも、ちゃんと攻撃に耐えられるのかな?」「普通の人間なら十分じゃないのかな~? さっきの人形のモンスターくらいの攻撃なら貫通
last updateLast Updated : 2026-02-01
Read more

42話 永遠の誓いと、夜明け前の帰還

  サーシャは得意げに胸を張り、俺の腕をぎゅっと抱きしめた。 世界に唯一無二の素材。それをこの手の中に持っているという事実に、俺は改めて震えが止まらなくなった。 そんなとんでもないものを「ラブラブしたかった」なんて理由で戦わせたこの女神様は、やっぱり感覚がどこかズレている。「あ……そっか。じゃあ超希少じゃん」「希少どころか、それは存在はするけど、絶対に出回らない素材だし、人間には扱い切れない素材だよ」  サーシャは呆れたように肩をすくめた。 世界の創世から一度も敗北を知らなかった伝説の欠片。それはもはや素材というより、神の領域に近い遺産なのだろう。「そっか。じゃあ売れないか……」「さっき『売っちゃダメだからね』って言ったよ! もぉ! それで売ってどうするの? お金は余るほど持ってるでしょ?」「あぁ……レア物って思うと売りたくなる……悪い癖だな」  俺は苦笑いしながら、頭を掻いた。 前世のゲームの感覚なのか、希少価値が高いと聞くと、ついその「価格」を確認したくなってしまう。 レア物はコレクションしたいし、可能な限りの高額で取引したくなる――そんな俗っぽい欲望が、俺の中にはまだ根強く残っているらしい。「そういえば初めて会った時、ユウヤは戦いは好まないって言ってたよね?」  サーシャがふと思い出したように、横顔を覗き込んできた。 月の光を反射する彼女の瞳は、穏やかだがどこか鋭く、俺の心を見透かそうとしているようだった。「あ~うん。でも大切な人を護るのに強さは必要だって思ってさ~、それに体が思った通りに動いて最近は楽しくなっちゃって。ストレス解消にもなるし」「そっか……世界征服なんてやめてよ……」  彼女は少しだけ真面目な顔をして、釘を刺すように呟いた。「世界征服って……」  征服して何をするんだよ。 面倒な政務に追われ、四方八方から恨みを買うような生活のどこが楽しいのか。 俺は今の、この少し騒がしくて、隣に温かな存在がいる生活に十分に満足している。「しないって。そんな面倒なこと。俺がやりたいのは、こうしてサーシャとぶらぶら歩いたり
last updateLast Updated : 2026-02-02
Read more

43話 女神の祝福と、天罰

 そんなサーシャの健気な言葉を聞いていると、自然と手が動いていた。 彼女の柔らかい銀髪を優しく撫でると、サーシャは嬉しそうに目を細めて、俺の胸元に顔を埋めてくる。 神様を撫でるなんて不敬かもしれないけれど、今はただ、この愛らしい存在に癒やされていた。  足を止めると、広場の向こうに荘厳な佇まいの教会が見えた。 街の喧騒から少し離れた場所に、静かに鎮座する白亜の建物。 この街に来てから色々と忙しくて、教会があるなんて今の今まで気が付かなかった。「な~教会に入ってみる?」「へぇ~わたしを崇める気になったの?」  サーシャは悪戯っぽく、それでいてどこか得意げな表情で俺を見上げてきた。  ん?……あっ!? そうか、忘れていたわけじゃないけれど、あまりに身近に居すぎて感覚が麻痺していた。 目の前で俺の腕を抱きしめて「えへへ」と笑っているこの美少女は、この世界の創造主であり、人々が祈りを捧げる対象そのもの、つまり本物の女神様なんだ。「そういえば……あそこに祀られてるのって、サーシャなんだよな?」  改めて目の前の教会を見つめる。 中では人々が熱心に祈りを捧げ、彼女の慈悲を乞うているのだろう。 そんな神聖な存在が、今、俺の隣で「ラブラブしたい」なんて言っている事実に、なんだか不思議な笑いが込み上げてきた。「もしかして教会って、サーシャを崇めてるの?」「そりゃそうでしょ~♪ この世界に他の神はいないよ?」  サーシャは当然だと言わんばかりに、誇らしげに胸を張った。 この世界における唯一絶対の存在。その事実に改めて直面し、俺は冷や汗が流れるのを感じた。「不味いだろ……その崇めてる女神と、結婚してイチャイチャして教会に入るなんて……」  信者たちからすれば、信仰の対象が人間の男と腕を組んで現れるなんて、聖域を土足で踏みにじられるようなものじゃないだろうか。 下手をすれば不敬罪どころか、世界中の信徒を敵に回しかねない。「そうお? 皆、喜んでくれるんじゃない?」
last updateLast Updated : 2026-02-03
Read more

44話 女神の神罰(たいばつ)と、選ばれし魂の理

  酒の勢いも手伝ってか、一人の男が調子に乗ってサーシャに手を伸ばした。 脂ぎった手で、彼女の白く透き通るような肩を抱き寄せようと、じりじりと距離を詰めてくる。 その眼光は濁り、欲望が剥き出しになっていた。  ――パチッ。  空気が弾けるような音がした。 サーシャの周囲だけ、夜の闇が一段と深くなったかのような錯覚を覚える。 彼女は俺の隣に座ったまま、伸ばされた男の手を冷徹な眼差しで見据えていた。  その表情にはもはや、俺に見せるような可愛らしさも、天真爛漫な無邪気さも微塵もない。 自分の聖域を侵そうとする羽虫を、ただ不快に思う高次の存在としての怒り。 邪魔をされ、大切な時間を汚されたことへの苛立ちが、彼女の纏うオーラを黒く、鋭く変質させていた。「……不潔ね」  彼女の唇から漏れたのは、氷の礫(つぶて)のような一言だった。  隣に座る俺にはわかる。 彼女の指先が、怒りでわずかに震えている。 それは恐怖ではなく、この下劣な存在をこの世界から「消去」するためのトリガーを引く直前の、静かな爆発の予兆だった。「はっ? 女神だからってね……いつもいつも……優しさや祝福だけを与えてる訳じゃないのよ? 天罰だって与えられるのよ? 人の幸せを解答して……」 サーシャの声は低く、そして驚くほど静かだった。だが、その声には地響きのような重圧が宿り、ベンチの周囲だけ重力が変わったかのように空気が重く沈み込む。 あっ、そっか……。女神様って、慈悲を与えたり奇跡を起こしたりするだけの存在じゃない。神話の中では、傲慢な人間や不敬な輩をその一振りで滅ぼす、災厄としての側面も持っているんだった。 だが、酒に酔いしれた男には、目の前の少女が放つ不穏な神気に気づく知性すら残っていないらしい。彼はサーシャの言葉をただの「痛い妄想」だと受け取り、さらに下品な笑みを深めてニヤついた。「可愛いからって自分の事を女神って思ってるのか? 大丈夫か……このお嬢ちゃん&hel
last updateLast Updated : 2026-02-04
Read more

45話 神と夫の物理的攻防

 「ふぅ~ん……良かった」 「でも~引っ叩く事は出来るからね?」 サーシャはニヤリと小悪魔のような笑みを浮かべると、右手を振り上げて引っ叩くジェスチャーをして見せた。魔法や奇跡ではなく、物理的な攻撃。それは神としての力ではなく、ただの女の子としての、そして妻としての力だ。 「うわっ。やめて……それは痛いし、ショックで精神的にもツライからな」 俺が本気で嫌そうな顔をして首を振ると、サーシャは可笑しそうに声を上げて笑った。 「あははっ! じゃあ、浮気とかしないで、ずっとわたしだけを愛しててね。そしたら、痛いのも悲しいのも、絶対にさせないからっ♪」 彼女はそう言って、俺の腕を抱きしめる力をさらに強めた。夜風に乗って、教会の花壇から花の香りが微かに漂ってくる。空に浮かぶ満月が、幸せそうに微笑む女神の横顔を、どこまでも優しく照らし出していた。「ん? なにか悪い事したの? そんなに怯えたような顔をして……天罰に相当する悪い事をしてたら……ユウヤの元の世界の神様にお願いも出来るんだからね~ダメだよ悪い事しちゃ」 サーシャは俺の顔を覗き込み、いたずらっぽく小首をかしげた。元の世界の神様とまで繋がっているなんて、神様ネットワークは意外と広大らしい。 「してないっての! ずっと一緒に居ただろ……。それに、ずっと俺のことを見てたんだろ?」 「あ~そうだった。えへへ……」 彼女は思い出したように、照れた笑みを浮かべた。そうして二人で広場の中心まで歩いていくと、大きな噴水が見えてきた。水しぶきを上げて光るその中心には、慈愛に満ちた表情で水瓶を抱える美しい少女の像が立っている。どこか既視感のあるその顔立ち……。よく見れば見るほど、今俺の隣で腕にぶら下がっている彼女にそっくりだった。 「あの噴水の女の子ってサーシャっぽいな」 「この広場は、教会の広場だからね~」 やはり、この世
last updateLast Updated : 2026-02-05
Read more

46話 幼き王女の来訪と、嫉妬に震える女神の影

 夜の静寂の中、トボトボと歩く俺の背中に、彼女の柔らかな体温が伝わってくる。背中に当たる、むにゅっとした胸の感触……。さっき「今のままで十分」と言ったけれど、改めてその感触をダイレクトに味わわされると、言葉とは裏腹に心拍数が跳ね上がるのを止められない。「ユウヤ、あったかいね……」 耳元で囁く彼女の吐息がくすぐったい。俺は照れ隠しに少しだけ歩く速度を上げたが、背中の感触を意識しすぎて、結局最後までニヤけそうな顔を必死に抑えながら屋敷の門をくぐるのだった。「ねぇ~エッチな事考えたでしょ……?」 背中の上で、サーシャが耳元に唇を寄せて、くすくすといたずらっぽく囁いた。心拍数が上がったのが伝わってしまったのか、あるいは女神としての直感で俺の煩悩を見透かしたのか。 「まぁ~少し」 下手に隠すのも余計に恥ずかしい気がして正直に認めると、彼女の反応は意外なものだった。 「えへへ……♪ そっかそっか~。ふぅん……えへへ」 文句を言われるか、あるいは呆れられるかと思っていたのだが、サーシャは心底嬉しそうに声を弾ませ、俺の首筋に顔を埋めてきた。想定外の反応に拍子抜けしたが、嫌がられていないのなら、男としてはこれほど安心することはない。 「……なんだよ、そんなに嬉しいのか?」 「だって、ユウヤがわたしにドキドキしてくれてる証拠だもんっ♪」 彼女は俺の背中で幸せそうに身悶えして、さらに強く密着してくる。屋敷の廊下に響く俺たちの足音。誰にも邪魔されないプライベートな空間に戻ってきたことで、彼女の甘い雰囲気はさらに加速していくようだった。 この女神様は、俺が彼女を「神様」として敬うよりも、一人の「女」として意識することに、何よりも喜びを感じるらしい。俺は少し火照った顔を隠すように、屋敷に戻って来ると……あれ?ちびっこがいる……「ん? 誰の子?」 屋
last updateLast Updated : 2026-02-06
Read more

47話 満天の星空の下での温泉

♢温泉への憧憬と幼き許嫁の宣言 ユフィリスは身を乗り出し、期待に瞳を宝石のようにキラキラと輝かせた。その純粋な熱量に圧倒されつつも、ユウヤの脳裏には一つの素朴な疑問が静かに浮かび上がっていた。国王はあれほど熱心に温泉を絶賛し、他人である自分にまで勧めておきながら、愛娘である彼女は一度も入ったことがないのだろうか。王族という立場ゆえ、警備の都合上、開放的な屋外の風呂など滅多に許されないのかもしれない。あるいは、幼い子供の肌には泉質や温度が刺激として強すぎるのか、それとも何かアレルギーのような体質的な障壁があるのだろうか。思考を巡らせながら、彼は優しく彼女の顔を覗き込んだ。「ユフィ、温泉は結構熱いけど大丈夫か?」「あついの? お兄ちゃんが一緒なら、ユフィ頑張るっ!」 無邪気に笑い、拳を握りしめて意気込むユフィリスの反応は、年相応の幼さと愛らしさに溢れていた。高貴なお嬢様でありながら、時折見せるこうした子供らしい一面は、見る者の心を自然と和ませる。「無いよ~だって……危ないって言われて。それに……裸を見られるからダメだって……」 ユフィリスは少しだけ寂しそうに眉を下げ、桜色の唇を尖らせてその理由を打ち明けてくれた。なるほど、とユウヤは心の中で深く納得した。道中のモンスターの危険もさることながら、この国の貴族や王族が抱える婚姻事情は極めて厳格なのだろう。高貴な身分の女性が結婚前に他人に肌を晒すなど、単なるスキャンダルでは済まされない。最悪の場合、国家間の外交問題や家門の失墜にさえ繋がりかねない。「じゃあ……やっぱりダメじゃん?」 ユウヤが困り眉でそう諭すように言うと、ユフィリスは不思議そうに小首をかしげた。そして、絹糸のような髪を揺らしながら、あまりにも唐突で、とんでもない言葉を口にした。「なんでなんで~? お兄ちゃんと、けっこんするから大丈夫でしょ?」 ――ん!?  今、自分の預かり知らぬところで世界そのものが書き換えられたのではないか。そんな錯覚を覚えるほどの、凄まじい破壊力を秘めたパワーワードが
last updateLast Updated : 2026-02-07
Read more

48話 静寂を裂く威圧、山道に漂う禍々しい気配

 王女という至高の立場にある彼女なら、王宮の宝物庫に眠るような立派な宝石など、これまでに幾らでも目にしてきたはずだ。しかし、冷えた指先でお湯の底を探り、自らの力で見つけ出したこの小さな光の粒が、今の彼女にとっては世界のどんな至宝よりも価値のある、特別な宝物なのだろう。 小さな掌の中で大事そうに石を握りしめ、宝物を守るように胸元へ引き寄せるその無邪気な様子を眺めていると、ユウヤの口元も自然と緩んでしまった。お湯の熱さとはまた別の、穏やかで柔らかな熱が、じわりと胸の奥に広がっていくのを感じた。 「お兄ちゃん……浮いてるね~。すごーい……」 水面にぷかぷかと体を浮かべ、脱力しきっている俺の姿が、ユフィリスには不思議な魔法のように見えたらしい。  波紋を立てながら近づいてきた彼女は、水面から出ている俺の顔を覗き込み、興味津々といった様子で瞳を丸くした。 「わたしもやる~どうやるの?」 「あ、やめて……」 今にも俺の真似をして仰向けにひっくり返ろうとするユフィリスを、俺は慌てて手で制した。  いくら幼い子供とはいえ、彼女は一国の王女だ。  お湯の中で無防備に手足を伸ばせば、膨らみ始めたばかりの柔らかな胸元や、年頃の女の子として隠すべき場所が、容赦なく水面から露出してしまうことになる。  そんな光景を目の当たりにするのは、教育上も、そして俺の精神衛生上も極めてよろしくない。「えぇ~お兄ちゃんだけズルい~!」 頬をぷくっと膨らませて不満を露わにするユフィリス。納得がいかないと言わんばかりに身を乗り出してくる彼女の勢いに、俺は必死に頭を回転させ、もっともらしい理由を捻り出した。「えっと……ホントはお風呂でしたらダメなんだよ。王女様が、マナー違反をしてるのがバレたら大変でしょ?」 この世界に、お風呂で浮いてはいけないという作法があるかは知らない。だが、俺が元いた世界の公共マナーを引き合いに出して、できるだけ厳格そうな顔を作ってみせる。王族という立場上、マナー違反という言葉は彼女にとって無視できない重みを持ってい
last updateLast Updated : 2026-02-08
Read more

49話 寝ぼけ眼の創造主と緊張感ゼロの神界通信

 初めて目にする魔物だが、そこから放たれるプレッシャーは、これまで相手にしてきた連中とは比較にならないほど強大だった。サーシャがこの世界へやって来てからというもの、世界の理そのものが狂い始めているのか、現れる敵の質が明らかに跳ね上がっている。「……ちっ、面倒なことになったな」 俺は一瞬の迷いもなく、咄嗟の判断を下した。道沿いにそびえ立つ切り立った岩壁へ、凝縮した魔力の障壁を叩きつけて強引に横穴を穿つ。崩れた岩の粉塵が舞う中、その急造のシェルターの奥へ、俺はユフィリスを静かに下ろした。「なんか手強そうなモンスターが現れちゃって、少し待っててくれる? ベッドも出しておくから寝てても良いよ」 彼女の抱く不安を和らげるよう、努めて穏やかな声で語りかけながら、アイテムボックスから使い慣れたベッドを取り出して岩穴の中へと設えた。ユフィリスは少し不安げにその大きな瞳を揺らしたが、俺の言葉を信じるように、すぐに小さく、けれど固い決意を込めて頷いた。「うん……気をつけてね……ちゅっ♡」 不意に背伸びをした彼女の唇が、俺の頬へと柔らかく触れた。温かな体温と共に伝わったその感触は、夜の冷気に晒された肌に熱を灯す。「あ、ありがと……」 予想だにしなかった不意打ちの贈り物に、俺は一瞬戸惑いながらも、愛おしさを込めて彼女の柔らかな頭をそっと撫でた。そのまま、すぐさま穴の入り口へ多重のバリアを展開して封鎖し、音も姿も外からは一切感知できないよう、遮音と不可視化の術式を幾重にも重ねていく。 完璧な守護を完成させた俺は、再び闇が支配する山道へと、静かに、けれど鋭い眼差しで向き直った。そこには、獲物の臭いを嗅ぎつけた異形の軍勢が、不気味に武具を鳴らしながら俺を待ち構えていた。 眼前に立ち塞がる巨躯の群れを鋭い眼光で睨み据えながら、俺は掌に滲んだ冷や汗を拭った。一体一体が放つ、大気を押し潰すような重苦しい威圧感。それは、かつて対峙した俊敏な犬型の魔物や、ただ図体がデカいだけの人形モンスターとは、根源的な次元から比較にならない。おそ
last updateLast Updated : 2026-02-09
Read more

50話 存在消去の理。 倒すか消すか、創造主が語る神の処理方法

「あるあるー……! 倒せばそのモンスターの魔力が開放されて辺りに放出されて、新たなるモンスターを創り上げる源になるからね~あの最古のドラゴンの魔力はハンパないからね~そりゃ強いモンスターやモンスターの群れが創られていても不思議じゃないよ」 女神様による、あまりにも衝撃的な世界のシステム解説。つまり、あの日俺が力任せにぶち抜いたあのドラゴンの膨大な魔力が、今のこの世界の歪な養分となってしまったというわけか。 あの巨躯に凝縮されていた神話級の魔力が一気に大気中へと霧散し、それを吸収した魔物たちが急激な変異や進化を遂げているのだとしたら、目の前で蠢くバケモノたちの異常な強さも説明がつく。俺が世界を守るために振るった力が、巡り巡って新たな驚異を育む土壌になっていたという事実に、俺は奥歯を噛み締めた。 けれど、そもそもあのドラゴンを目の前に引きずり出し、俺を戦いに巻き込んだのはどこの誰だと言いたい。不条理な思いが胸を掠める。「はぁ……言うの遅くない……か、それ。それで、サーシャが倒したって違いは?」「あ、えっと……だから~わたしは倒してないよ? わたしはドラゴンの存在を消したんだよ。もともといなかった事にしたの。だから魔力が放出されてないのよ。あ、でも……世界のバランスが崩れないように世界の何処かに同じドラゴンを移した様な感じにしたけどね~」「そうですか……」 さすがは創造主と言うべきか。物理的な破壊によって命を絶つのではなく、存在そのものを世界の理から抹消し、最初から「なかったこと」にするという、次元の違う処理を平然とこなしていたらしい。おまけに、世界の総魔力量が変わらぬよう、どこか別の場所へ放り投げてバランス調整まで済ませているという抜かりのなさだ。 つまり、この場に漂うSSS級のプレッシャーも、元を辿れば俺が「普通に倒してしまった」ことへのツケというわけか。俺は深く重いため息を飲み込み、手の中で魔力を鋭く練り上げた。原因が理解できたところで、目の前の二十体のバケモノたちが霧
last updateLast Updated : 2026-02-10
Read more
PREV
123456
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status