All Chapters of 異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい3: Chapter 51 - Chapter 54

54 Chapters

51話 多重障壁の軋み

 その時、静寂を切り裂いて二体の巨躯が爆発的な踏み込みを見せた。巨体に似合わぬ神速。大気を鋭く引き裂く音が遅れて届くほどの速度で、二振りの大剣が俺の急所を目掛けて同時に突き出される。「――っ!」 咄嗟に魔力を展開し、半透明の障壁を眼前へ多層に張り巡らせる。ガキンッ! という耳を劈く硬質な衝撃音とともに、バリアが激しく火花を散らした。 うわっ、早っ……! 今まで戦ってきたどんな魔物とも、攻撃の初速とキレが段違いだ。もし俺が剣一本だけで戦っていたとしたら、一体の突きを弾いた瞬間に生じる隙を突かれ、もう一体の刃に確実に貫かれていただろう。避けることすら困難な、精密で暴力的な同時攻撃。多重バリアという面の防御があって初めて防ぎきれる、死の連撃だった。 障壁越しにダイレクトに伝わる凄まじい振動に、腕の骨がミシリと嫌な音を立てて軋む。だが、その危機的状況とは裏腹に、俺の唇の端は自然と吊り上がっていた。 ……ヤバイな、これ。 背筋を伝う冷や汗が流れる一方で、心の奥底では熱く滾る何かが沸き上がるのを感じる。圧倒的な力を持つ創造主の気まぐれが生んだ、この絶望的なイレギュラー。本来なら恐怖に足がすくむはずの光景だ。だが、今の俺にはそれが、最高に刺激的で面白い遊びのように思えていた。 全身の血が騒ぎ、視界が異常なほどクリアに冴え渡っていく。多重バリアを叩く大剣の重みも、闇に蠢く残りの魔物たちの殺気も、すべてが俺をさらなる高みへと押し上げる糧に変わっていく。 攻勢に転じるべく、俺は魔力の障壁を鋭利な刃の形へと硬質化させ、眼前の個体へ向けて叩きつけた。重い衝撃音が夜の空気を震わせる。モンスターは咄嗟に強固な籠手でガードしたものの、その衝撃に耐えきれず後方へと派手に吹き飛んでいった。 だが、手応えは芳しくない。バリアの斬撃は厚い防具を捉えたに留まり、致命的な深傷を負わせるには至らなかった。 マジか……バリアの直接攻撃ですら、この程度しか効かないのか。 いざとなれば、対象の体内に直接バリアを発生させて内部から破裂させるなり、やりようは
last updateLast Updated : 2026-02-11
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52話 覚醒の咆哮、神速の蹂躙

「はぁっ~!? ユウヤ……が苦戦って……? 何と戦ってるの? ドラゴンの群れとか?」 さらりと言ってのけたサーシャのその言葉に、俺は思わず戦慄した。 ドラゴンの群れだと? 一体倒しただけで世界の魔力バランスが狂い、これほどの化け物が湧いて出てきたんだぞ。そんなものが群れで現れて、それをもし俺が全部倒してしまったら――。 溢れ出す魔力がさらなる怪物を生み、この世界がどんな地獄絵図に変わるか。想像するだけで背筋に冷たいものが走る。今の俺にとっては、目の前の十九体以上に、サーシャの口にする「最悪の可能性」の方がよっぽど恐ろしかった。「違うしっ!」 俺は思考を遮断するように叫び、迫りくる鋼の嵐をバリアで強引に弾き飛ばした。火花が散り、金属が擦れる嫌な音が夜の山道に響く。 原因を作った張本人の無自覚な言葉に、怒りはついに頂点に達しようとしていた。この女神様、早く帰ってきて一緒に寝たいなどと甘い言葉を吐いておきながら、俺をこの窮地に追い込んだ元凶が自分だということを、一体どこまで理解しているのやら。「じゃあ……何と戦ってるのよ?」 脳内のサーシャは、未だに事態の深刻さが飲み込めていないようで、どこか疑わしげに問いかけてくる。俺は迫りくる三振りの大剣を、ミリ単位の精密な回避と最小限の魔力障壁で受け流しながら、現状を言葉にして叩きつけた。「ん~……人型で角が生えてて、人より大きくて武装をしてて……剣で攻撃されると俺のバリアが持たない感じのモンスター二十体と戦ってる」「はぁ?……そりゃ強いモンスターと……って二十体!? うわぁっ……まじで~!? でも……制限解除すればユウヤなら余裕じゃないの?」「はい? 制限解除ってなによ? 初めて聞くし、知らないんだけど……?」 耳慣れない不穏な単語に、思わず攻撃を捌く手が止まり
last updateLast Updated : 2026-02-12
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53話 創造主の誤算

 あまりの圧力に、愛用していた剣の柄に嵌め込まれていた魔石が、その奔流に耐えきれずパキィィィンッ!と甲高い音を立てて弾け飛んだ。 それだけではない。俺の全身からは、ゆらゆらと陽炎のような金色のオーラが立ち上り、深い夜闇の中で眩いばかりに可視化されている。これほどまでの密度で魔力を放出するなど、魔術師が見れば卒倒しかねないほどの贅沢な無駄遣いではないのか。「出来たんだけどさ……これって体の周りにオーラみたいなのが出てるんだけど……勿体ないんじゃない?」「あぁ……気にしなくても大丈夫だよ……息をして吐いた息が勿体ないって言ってる様なものだし……って、うわぁ~一回の制限解除で、そんな状態になっちゃってるの?」 脳内の彼女の声が、明らかな驚愕に震えている。どうやらこの黄金の輝きは、創造主である彼女の予想すらも遥かに上回る、異常なまでの高出力の証だったらしい。 ん? なんだその反応は。 一回の解除。ということは、この尋常ではない状態ですら、まだ一段階目に過ぎないということか。吐く息と同じ感覚で垂れ流しているこの魔力量ですら、俺にとっては微々たるものだというのか。 どんだけ力を抑えて生活していたんだ、俺は……。 戸惑いながらも視線を巡らせれば、視界の端に映るモンスターたちの動きが、先ほどまでの神速が嘘のように、まるでスローモーションの映像を見ているかのように感じられる。周囲の人々がどうなのかは知らないが、少なくとも目の前で怯えたように足を止めた十九体のバケモノたちが、今はひどく矮小な存在に見えていた。「そっか……それよりさ……制限時間とか、解除した時の代償とか副作用ってあるの? あるなら、初めに教えておいてほしいんだけど」 溢れ出す魔力に全身が支配される感覚は心地よいが、その反面、恐ろしいほどの万能感には不安もつきまとう。戦いが終わった瞬間に激痛に襲われたり、あるいは数日間動けなくなるような反動
last updateLast Updated : 2026-02-13
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54話 月光の寝顔

 俺は、さらに加速した。黄金のオーラを尾のように曳きながら戦場を縦横無尽に駆け抜け、瞬く間に半数の個体を文字通りの塵へと変えていった。一振りごとに異形の肉体が易々と両断され、夜の静寂に崩壊の音が混じる。 ふと足を止め、一度全身の力を抜いて意図的に制限をかけ直してみた。そして今度は、より繊細に、古びた蛇口を慎重に少しだけ捻るようなイメージで「僅かな制限解除」を試みる。全身を包んでいた過剰なオーラが静かに収まり、狂乱していた周囲の空気が平穏を取り戻すように安定していった。「これくらいで良いんじゃない……?」 これなら魔力を無駄に垂れ流すこともない。バリアの強度は十分に保たれ、敵の動きも手に取るように捉えられる。圧倒的な力に任せて一方的に蹂躙し尽くすよりも、この程度の均衡を保っている方が、戦いとしての手応えがあってはるかに楽しい。 残された数体のモンスターたちが、勝機を見出したと言わんばかりに再び包囲を狭めてくる。だが、その絶望的な認識の差すらも、今の俺には心地よい余興に感じられた。「お~いっ! ユウヤぁ~! ねえぇ~まだ、戦闘中なの?」 またしても脳内に響く声。今度は先ほどまでの眠気よりも、待ちぼうけを食らっていることへの隠しきれない不満が混じっているようだ。まるで、約束の場所に遅れてきた相手を詰問するような響きである。「あ、うん。ちょっと遊んでた……」 俺は迫りくるモンスターの攻撃を軽くいなしながら、正直に答えた。「寝ないで、待ってるんだからねっ」 サーシャの口調から、不満そうに可愛らしい頬を膨らませている姿が目に浮かび、微笑ましくてユウヤの口元が緩んだ。「え? 寝てて良かったのに」 気を使わせたと思い、ユウヤは申し訳なさそうに呟いた。「もぉっ! 知らない……っ。おやすみ!」 ぷいっと、目に見えるかのような鮮やかさで横を向いた気配とともに、頭の中に響いていた念話が唐突に途絶えた。 どうやら、あまりに気のない返答を繰り返したせいで本気で怒らせてし
last updateLast Updated : 2026-02-14
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