──んみゅようんにゃがああいこんもおうんびゃにゃあう包帯の中で輪郭のないくぐもった奇声を発し、彼女はベッドの上で死にかけのバッタじみた動きで激しく暴れた。布団から彼女の手足が伸び、布団を蹴散らした。手足は無傷で触れただけで消えてしまいそうな滑らかな肌。綺麗な手足と包帯巻きの顔が不調和で余計に痛々しさが増す。精神が変質し、おかしくなっているみたいだ。「お願い落ち着いてくれ。俺の話を聞いてほしい」亮はみぞおちに蹴りを食らっていた。彼女は聴覚を失っていると分かっていながら、口で伝えようとするほど亮も動転している。暴れていた小野さんはベッドから落下した。看護師の男が慌てて二人の間に割って入ろうとする。小野さんは覚束ない足で立ち、窓の方に向かう。「待ってくれ。沙耶、落ち着いて。俺は君を絶対に失いたくない。沙耶のためにたくさん曲作って絶対に売れてみせるから」亮は両腕を伸ばして小野さんの肩を掴んでいる。二人の間に看護師の男が入って小野さんが飛び降りないようにし、亮をこれ以上近づかないように牽制していた。亮がここまで自身の気持ちをはっきりと言葉にしている様を初めて見た。直接的な告白や、熱い決意の言葉を口にする人物だった記憶がない。小野さんは奇声を発しながら両腕を振り回し、亮も看護師の男も振り払った。看護師の男は弾みでベッドの縁に腰を打った。部屋の真ん中まで下がって呆気にとられている亮の前に、小野さんはゆっくり移動し立ち止まった。「沙耶。こっちに来てよ」亮は両腕を広げて彼女を受け入れようとした。だが、彼女は動かない。小野さんの手はゆっくりと頭の包帯に伸び始めた。緊張感は最高潮にまで達する。「やっ、やややや止めなよ」小野さんの手は止まらない。包帯が解かれて薄くなるにつれ、饐えた生ごみのような肉が焦げたような刺激臭が漂い始めた。嫌な予感からの恐怖で私の両足は震え始める。亮は彼女の名前を小さな声でポツポツ呼びかけるだけで石化した。小野さんからはどす黒い排他性を感じる。完全に包帯の中身が露わになった。目にした途端、一瞬で今朝食べたトーストとヨーグルトが口から出そうになった。これは酷すぎる……。顔の皮膚は黒い下痢便のような質感で溶けかけている。赤ミミズや白滝に似た肉の繊維のようなものが
Last Updated : 2026-01-31 Read more