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62 Capítulos

何もかも、失えば……

   ♢ 唯織ここはどこだろうか。白い壁、白い天井、白い床。天国にでも行けたのかと思ったが、違うとすぐに気づけた。白衣観音像の〈本当の〉胎内だ。「唯織、しっかりしてくれ」隣から声が聞こえる。夢人かと思ったが違った。亮だ。頭の中が霞がかっている。胎内の中は先ほど見たように、影の人間もおらず何の香りもせず、ただ無機質なだけだ。壁にかかる生クリームや果物も落ちて、床の端にゴミみたいに積もっている。生命が消えたような喪失感が、ふやけた脳みそをホロホロと崩しながら入り込んで来る。一年程前に山本さんの赤ん坊の死骸を見て、生まれたての子の気持ちを想像した時の喪失感とどこか似た苦味がする。とりあえず何か実体のあるものを感じたかった。適当に右手を動かしていると、何か温かいものを掴んだ。私の名を呼ぶ声と一緒に拍動が手のひらに伝わる。亮の体のどこか一部を掴んだみたいだ。人間の一部に触れていると徐々に感覚が研ぎ澄まされていく。清水から銃で撃たれた腹部に激痛が走る。「唯織、今警察の人が救急に連絡してくれているから、それまで頑張って耐えてくれな」どうやら警察もいるみたいだ。私が清水に銃で撃たれた後、宮田さんが清水を撃った。それから何があったのかは記憶にない。ただ一つ、今まで一生懸命働いていた仕事が幻と分かった今、私の生きる意味を失った。「夢人さんは、どこに」人生を生クリームと果物で甘く酸っぱく味付けしてくれた夢人葵は今どうしているのか。亮が助かって、警官が一緒にいる現実を考えると嫌な予感がする。「夢人は警察に捕まった。良かったよ。アイツは簡単に人を殺せるれっきとした犯罪者なんだから」亮の言葉と同時に周囲に散乱する果物の匂いが鼻を突いた。今、確かに彼は捕まったと聞いた。私が唯一愛した男は、結局宮田老人の駒も同然だった事実や、私自身の不甲斐なさ、理不尽と分かっているが亮への憤りが、明瞭になっていく意識の中で旋風のように吹き荒れる。「宮田さんは、どこにいるの」「さっきまでいたけど、今はここにいないみたい。多分何人かの警官と一緒に外にいるのかな」掴んでいる亮の一部が手首と分かったので、両手で捻じって床に伏せた。どこから力が沸いて出るのか腹部から血を流しながら立ち上がり出口に向
last updateÚltima actualización : 2026-03-05
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恋物語、完成

   ♠ 亮光のない空間、俺は横になる。唯織が亡くなってから、恐らく一週間ほど経っただろう。俺は結局唯織を助けられなかった失意から死を決意し、再び顔を破壊する行為に出た。唯織を助けようと思って生きていたため、今更生き永らえる目的もなかった。今回は誰の勧めでもなく、俺自身の意思で顔面の破壊を実行した。前回の破壊では口は手を着けなかったが、今回は水酸化ナトリウム水溶液を口の中に含んで口腔も爛れさせ、舌も溶かした。もう歌手として活動しない俺には、口も必要ない。口を失って、本格的に今の人生をやめる決心が付いた。唯織の自害からずっと心配してくれた警官の一人が、自室で顔を血と膿で一杯にして倒れている俺を発見したようだ。病院へと搬送されたように感じる。沙耶も唯織も、歌手としての夢も、俺の未来自体も何もかも捨て去り、ただ死に損なった。残った左の眼球も錐でめった刺しにしたため、視覚ももうない。今は脳内の世界で残り僅かな正気で思考だけをし、命尽きるのを待つだけだ。俺にとっては沙耶や唯織、歌手としての艶撫亮のみが唯一の思考の中に残る光だ。ひたすら三つの光の鮮やかさに見惚れ続け、人生が途絶える瞬間を待つ。だがその中で、輝かしい空想だけではなく、当然のように不純な思考が差し込む。宮田老人は何故自らの娘も一緒に殺そうとしたのか。死に価値を見出していた宮田老人でも、娘の死は思い留まらないのか。娘に消火器に収めた臭いを発射させる役を与え、逃がす機会を奪っていたように見えた。宮田老人は自らで消火器を使って娘は逃がしても良かったのではないか。ずっと何かが引っかかっている。宮田老人は娘もまとめて殺そうとしていたのではないか。それは果たして、生死の神秘性を与えて作品化させるためだけか。もしかしたら、娘が死ぬべき存在だと見做していたのではないか。だが、その理由が思い当たらない。しばらく考えていると、一つ別の角度からの可能性に思い当たった。逆に娘が父親を利用していたとなるとどうだろうか。今まで親子の関係から、父親の宮田老人が諸悪の根源だと思い込んでいた。だが、実際に沙耶をリンチする際、集団を束ねているのは娘の方だった。もしかしたら、既に合同会社は父から娘に代表の座を受け継いでいたのではないか。
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