♠ 亮間に合わなかった。宮田が仁王立ちし、唯織を隠された瞬間にやられた。宮田がどいた時には唯織が背後から金属バットで殴られてグッタリしていた。その後数人やって来て唯織を担いで連れ去られようとしていた。このままではまずいと思い、焦って木陰から出て彼女の方に向かった。「艶撫亮さん、何をしているのですか」強い力で肩を掴まれて尻餅を着いて倒れた。濃紺のスーツ姿の包帯男、夢人葵が立っていた。「最近まで何をしていたのですか。連絡しても一向に繋がらないですから、三浦さんと一緒に心配していたのですよ」この者たちは一体何が目的なのか。「もう『日本ルネッサンス会』とは関係を持ちたくないんです」尻餅を着いたまま喚く俺はさぞ滑稽に見えるだろう。「そういうこと言っちゃいますか。良いのですか、我々ではないと今のあなたを売り出すなんて不可能なのですよ」脅しのつもりだろう。だが彼らに対する不信の方が圧倒的なウェイトを占めるので迷わない。「良いです、もう二度とあんなライブをしたくないので」「なるほど。艶撫亮さんは我々にとって不要物になった感じですね」夜闇の中で砂利を踏むザクザクした音が四方八方で響く。周囲にはいつの間に多くの男女が集まり、こちらに黒い眼差しを放っている。「私は今から本間さんの方に行かないと駄目なので、後はこの男一人どうにかしちゃってください」集団に呼びかけてから、夢人は俺に背を向けて去ろうとする。「待て。どうせ今から殺されるのだろうから最後に一つ聞かせてくれ」「一つだけですよ。急いでいるんだ」「唯織を狙い始めたきっかけは何なんだ」「きっかけは山本さんの恋情ですよ。彼女が学生時代の唯織さんをボクシングの試合で見て恋に落ちたんですよ。我々は現実で恋愛物語を商品にしていますから、山本さんに本間さんとの恋愛を売っただけです」夢人は去った。ようやく唯織が狙われた背景が分かった。山本が全ての元凶だった。集団の影がこちらに接近する。だが、まだ諦めきれない。このまま唯織を危険に晒したまま死ぬ訳にはいかない。どうやって集団の包囲を抜け出すべきか、必死になって考える。
Última actualización : 2026-02-21 Leer más