樹の心臓が、とつぜん激しく高鳴り始める。彼は一目散に舞台へ駆け上がると、女性を囲んでいたチンピラたちを蹴り飛ばした。「全員どけ!」チンピラのリーダーは背中から激しく、地面に叩きつけられた。彼は地面に唾を吐くと、憎々しげに樹をにらみ上げる。「河野さん、あんたが金持ちで権力があるのは知ってるよ。でも、こいつは俺が金を出して落としたんだ!さっきのオークションで黙ってたくせに、なに今更ヒーロー気取りしてるんだ?ん?」チンピラはそう言うと、女性を引き戻そうと腕を伸ばした。しかし、逆に樹に一発殴られてしまった。樹は懐からカードを取り出し、チンピラの顔に投げつけた。「この中には、お前が払った十倍の金が入ってる。これで十分だろ!金を受け取ったら、とっとと失せろ!」男は目をきらりと光らせると、慌ててブラックカードを拾い、バーから出ていった。周りの野次馬もあっという間にいなくなったので、樹は恐怖に怯えている女に向き直る。そして、自分のジャケットを脱ぐと、そっと彼女の肩にかけてあげた。「安心して。君をいじめてた連中はもう行ったから。もう大丈夫だよ」女の子は怯えた様子でうなずくと、小さな声で「ありがとうございます」と言った。「君の名前を教えてもらってもいいかな?」「私は……和田明里(わだ あかり)です」樹の目に宿っていた希望の光が消えたが、それでも、彼はまだあきらめきれずに、明里を見つめる。「じゃあ、君は、記憶をなくしたりとか、整形したりとかは……してない?」明里は驚いて顔を上げた。答えようとしたその時、突然うでを引かれ、次の瞬間には強烈な平手打ちをくらわされた。「この泥棒猫!よくも私の旦那を誘惑したわね!」目を真っ赤にした泉が、もう一度明里に手をあげようとした。しかし、逆に明里によって手首を強くつかまれてしまった。「人を誘惑しておいて、よくそんな口がきけるわね。今日はそのふざけたツラ、ズタズタにしてやるから!」泉は力いっぱい腕を引いた。でも、明里の手はびくともせず、逆に突き飛ばされて地面に倒れてしまった。彼女は一瞬呆気にとられたが、すぐに地面を何度も叩きながら、わざとらしく泣き始める。「みなさん、見てください!今どきの浮気相手は、開き直るどころか、正妻に手まで上げるんですよ!私たち夫婦が長
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