和田若葉(わだ わかば)は、K市中で名の知られた名家のお嬢様だった。その立ち居振る舞いは常に美しく、驕ることも、焦ることもない。彼女に想いを寄せる男は、K市にとどまらず国外にまでいるほどだったが、若葉はその誰の求婚も受け入れなかった。名だたるエリートたちをすべて断り、彼女が自ら選んだのは、女癖の悪さで知られる河野家の御曹司・河野樹(こうの いつき)だった。樹は、彼女の結婚の申し出を拒みはしなかった。だが結婚式を目前にして、突然このままでは結婚できないと言い出し、条件を一つ出した。それは、オークションで、別の女の「初夜」を買い取れというものだった。すると若葉は何も言わずに、誰もが驚くような金額でその女を競り落とし、そのまま彼女を海外へと逃がした。そのことを知った樹は顔に、不敵な笑みが浮べた。そして結婚式当日、彼は他の女との誰もが目を覆いたくなるような映像を巨大スクリーンで流した。しかし、それでも若葉は怒りを樹には向けずに、シャンパンタワーのそばにあったワインボトルを手に取り、力いっぱいスクリーンに叩きつけただけだった。すると樹は冷たい笑みを浮かべ、若葉の腕を無理やり掴んで新居へ連れ帰った。新居へ着くと、樹は暴れる若葉を無視して、彼女をベッドに押さえつける。そして、熱い唇で若葉の体に火をつけた。しかし、彼女の甘い吐息が聞こえた途端、ぴたりと動きを止め、あざ笑うかのように声を立てて笑った。「若葉。もし18の頃のお前が、今みたいだったら……きっと俺は、お前から離れられなくて、ずっとベッドの上にいたかもしれない。でも、もう5年も経ったんだよ。お前は全部忘れて俺と結婚できるようだけど、俺は無理だ」そう言いながら、目元を赤くした樹は、指で若葉の頬をなぞる。しかし、すぐにそばにあったジャケットを掴み、大股で部屋を出て行ってしまった。部屋には、若葉が一人だけ。若葉は窓の外を見つめる。心臓が鷲掴みにされたように、心が痛い。痛みのせいなのか、若葉は5年前のことを一瞬にして思い出した。樹の母親・河野蘭(こうの らん)は、若葉に骨髄を提供してくれたいわゆる命の恩人。このことをきっかけに、若葉の母親・和田綾(わだ あや)と蘭が親友になり、樹と若葉も自然と子供のころからずっと一緒だった。若葉も反抗期になり、家出をした16歳のとき
Baca selengkapnya