時雄が戻ってくると、須恵に別れを告げた。そして、二人はそのまま屋敷を後にした。ちょうどその頃、来希とはなもほとんど同じタイミングで屋敷を出た。二人の車は、ぴたりと後ろにつけていた。萌花は何度かバックミラーをのぞいたが、そのたびに後続車が離れずついてきているのが見えた。萌花は心の中で首をかしげた。彼女の知る限り、来希は今ずっと会社に泊まり込んでいるはずだし、はなは産後ケアセンターに断られてから、ずっとホテルに滞在している。どちらに向かうにしても、こちらと同じ道になるはずがない。一方、後ろの車内でも、はなが運転席の来希に同じ疑問をぶつけた。「来希さん、道、間違ってない?」 来希は何も答えず、ただひたすらに前の車を追い続けている。やがてその車が都心の高級住宅街・白蘭邸のゲートをくぐったところで、ようやく彼は車を止めた。はなも、彼の意図を察したようだ。車が停まると、緑の濃い街路樹が並ぶ邸宅街を見つめながら、彼女は静かに口を開いた。「時雄叔父様、ここに物件を持ってるの。会社から一番近いから、普段はここから通ってるんだって。ってことは……萌花さんと叔父様、お芝居じゃないみたいね。本当に同棲してるんだわ」 そう言い終えると、彼女は恐る恐る来希の顔色を窺った。「ねえ、来希さん。あなたと萌花さんと離婚してまだ半月しか経ってないのに、もう叔父様と結婚して同棲だなんて……もしかして萌花さん、浮気してたのかな」 「黙れ」 来希がはなに対して声を荒げるのは珍しいことだ。はなは慌てて謝った。「ごめんなさい。でも、あまりにも展開が早すぎるから、つい疑っちゃって……信じないなら、今のは聞かなかったことにして」 萌花が浮気をしていたなど、来希は絶対に信じられない。この二年間、萌花は仕事こそしていなかったが、毎日コマのように回り続けていた。家事全般を一人でこなすだけでなく、尚子の食事の支度や度重なる通院への付き添い、さらには怜の勉強の面倒まで見ていた。彼女には自分の時間などほとんどなく、一日中家に縛り付けられていた。浮気をする暇などあるはずがない。その点については、来希の直感がそう告げている。しかし、はなの言葉は小さな棘のように来希の胸に突き刺した。どうしても腑に落ちない。あの二人は芝居をしているだけな
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