萌花も和樹の勉強をずっと気にかけている。かつて怜のことでたびたび学校に足を運んでいた萌花は、クラスの生徒についてもすっかり詳しくなっていた。和樹は常に学年トップの成績を維持していた。それだけに、今回の成績が大きく落ちたと知ったときは、萌花もさすがに驚いた。だが幸いなことに、最後の模擬試験ではしっかりと学年一位の成績を取り戻した。帰宅後、和樹は自らその順位表を萌花に見せに来た。萌花は心底ほっとしたような嬉しそうな顔をした。「和樹君、本番もこの調子で行けば、首都大だって絶対合格できるわよ」和樹は素直にコクリと頷いた。「おばさん、安心してください。絶対に首都大に受かってみせますから」萌花は再び成績表に視線を落としたが、そこに怜の名前を見つけることはできなかった。彼女は気になって、思わず聞いた。「怜はどうだったの?なぜ名前がないのかしら?」怜が転校してきたばかりの頃、成績はクラスの最下位だった。萌花は親身になって彼女の勉強をサポートした。学習スケジュールを組み、夜遅くまで一緒に間違い直しに付き合い、苦手なところを把握しては彼女に合った教え方を工夫してきた。その地道な努力の甲斐あって、少しずつ順位を上げ、ついにはクラスのトップ5に入るまでに成長させたのだ。怜の成績向上のために、萌花は数え切れないほどの心血を注いできた。学生だった頃の百倍は苦労したと言っても過言ではない。それなのに、その苦労が報われることはなかった。怜からは感謝の言葉を一つもかけられたことがないどころか、厳しすぎると文句ばかり言われていたからだ。「怜なら、あの日から一度も学校に来てません」と、和樹は答えた。「そう……」萌花は短く相槌を打っただけで、それ以上は何も聞かなかった。どうせ、もう自分には何の関係もないことだ。一方、その頃。会社にいる来希のスマートフォンには、尚子から鬼のような着信が入り続けている。毎回どうでもいいような些細なことばかりなので、彼は家からの電話には本当に出たくないのだ。会社の上場が間近に迫っているというのに、未解決の課題が山積みで、来希は毎日てんてこ舞いの状態だ。ただ唯一の救いは、はながすでに入社し、彼の負担を少し肩代わりしてくれていることだ。さすが海外の名門大を卒業しているだけあって、実務能力はすぐに社内の信頼を勝ち
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