ほどなくして、萌花と紗夜は時雄のオフィスの前に立っていた。萌花はそこで足を止め、指先に思わず力が入った。紗夜の言葉はそれほどまでに萌花の心を揺さぶった。もし紗夜の話がすべて本当だったら、もし時雄が自分と結婚したこと自体、最初から周到に仕組まれたものだったら、自分は、あまりにも滑稽である。紗夜は迷わなく扉をノックした。ドアを開けたのは時雄の秘書で、扉の前に立つ二人を見て、明らかに驚いた顔をした。「陸崎さん、二条さん……社長はただいま会議中で、あと十分ほどで終わります」その一言で、萌花の胸に嫌な予感がさらに濃く広がった。秘書は明らかに、時雄と紗夜の関係を知っている。以前、萌花を見たときには必ず「奥様」と呼んでいた。なのに今日は違う。紗夜の前だから、そう呼ぶのを避けたのだろう。なぜ避けるのか、考えれば考えるほど、背筋が冷えた。紗夜はまるで、昔からそこに出入りしていた人のように遠慮のない口調で言った。「水原さん、悪いけどちょっと二人にしてもらえる?」秘書はすぐに部屋を出ていった。紗夜はオフィスに入ると、まっすぐ時雄のデスクへ向かい、その椅子に腰を下ろして萌花を見た。「時雄のオフィスに来たことはあります?」萌花は眉を寄せた。そういえば、時雄のオフィスには一度も来たことがない。時雄からは何度か誘われたことがあるが、萌花は、社内で余計な噂が立つのを避けたくて、足を運ばなかった。一緒に帰っても、たいてい地下駐車場で時雄を待っていた。紗夜は静かに言った。「この人の引き出しに、誰の写真が入っていると思います?」そう言うと、紗夜は腰をかがめ、時雄のデスクの一番下の引き出しを開けて、そこからひとつのフォトフレームを取り出した。紗夜はその写真をしばらく見つめていて、指先でそっと写真の表面をなぞる。うつむいたままの彼女の長いまつげが目元を隠し、その奥にある感情は読み取れない。やがて紗夜は、その写真を時雄のデスクの上に置いた。萌花にも、ようやく写真が見えた。そこに写っているのは三人である。まだ少年の面影をしている時雄、その隣で笑う紗夜と蓮。三人の関係が、たった一枚の写真からはっきり伝わってきた。三人とも、今よりずっと幼い。あどけない顔で、同じユニフォームを着ている。真ん
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