昔の話になった。小春がつい口を滑らせた。「この間、あの元旦那さんがうちの事務所に来たとき、法律上はもう離婚してるってこと、まだ知らなかったみたいだけど」「今はもう知ってるわ」と萌花は答える。「で、絡まれたりしてない?」「別に、そこまでは」折しも、テーブルに置いてある萌花のスマホが鳴った。萌花は画面を一瞥しただけで、着信を切った。その反応を見て、小春は相手が誰だか察したようだ。「ちょうど潔い人だって褒めようとしてたのに」萌花は口元を引きつらせた。「ちょっとお手洗い」そう言って席を立ち、手洗いへ向かう途中でまた電話が鳴った。今度は時雄からだ。萌花は通話ボタンを押した。「何か用?」「今夜は残業で帰りが遅くなるから、妻に報告しておこうと思って」時雄が時折口にする「妻」という響きに、萌花の心臓はいつも跳ね上がってしまう。「分かった」電話を切る気配がなかったため、萌花は尋ねた。「まだ何か?」「明日、母さんの古希の祝いがあるんだ。一緒に来てくれるか?」萌花は少し驚いた。以前、時雄から母親が重い病気を患っており、生きているうちに息子の結婚する姿を見ることが最大の願いだと聞いていたからだ。萌花があの時、彼との入籍に同意したのは、その話を聞いて情にほだされたという理由もあった。「いいわよ」と、萌花はほとんど迷わずに答えた。手洗いを済ませ、レストランへ戻る通路で、萌花は見覚えのある人影を目にした。来希が壁に寄りかかり、タバコを吸っている。萌花が近づいてくるのに気づくと、彼は慌ててタバコを消し、近くのゴミ箱に捨てた。萌花の足が一瞬止まったが、すぐに来希などそこにいないかのように振る舞い、彼の横を通り過ぎようとした。しかし、すれ違いざまに腕を掴まれた。来希はひどく疲弊した顔をしていた。「萌花、もう意地を張るのはやめてくれ。家に帰ろう、な?」萌花は今や反射的に、彼に触れられることを拒絶していて、即座に来希の手を振り払った。「来希、私はもうあなたの妻じゃないの」「萌花、俺の負けでいい。最近、本当に辛いんだ。帰ってきてくれ。お前が俺にとってどれだけ大事か、今さら思い知らされたんだ」ここ最近の来希の状況は、まさに八方塞がりで火の車だった。金融庁の監査で会社に二億円もの使途不明金が発覚し
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