はなの顔色が瞬時に変わった。「どういうこと?入居する時は42日間って約束だったじゃない。まだ半月しか経ってないのに、どうして出て行かなきゃいけないのよ」「小林様、誠に申し訳ございません。お詫びとして、お支払いいただいた800万円は全額返金させていただきます。つまり、この半月間のサービスは無料だったとお考えいただければ」「冗談じゃないわ。800万円程度のお金に困ってると思う?急に追い出されたら迷惑なのよ。お金で解決できる問題じゃないわ」支配人はにこやかに言った。「小林様、まさか慰謝料目的で難癖をつけるおつもりですか?」はなは怒りで震えた。「お金なんていらないわ、訴えてやる!」支配人は穏やかに説明した。「契約書には明記されております。当センターの事情によりサービスを継続できない場合、費用は全額返金すると。小林様、このお金を持って他の施設を探された方が賢明かと存じますが。むしろプラスになるのではありませんか?」はなは内心、支配人の言葉に納得していた。もともとは、もう少し賠償金を引き出そうとしていただけだが、契約書にそう書かれている以上、どうしようもない。この海城ノ浦には、高級な産後ケアセンターなどいくらでもある。今から移動すれば、半額で済むかもしれない。浮いた400万円でエルメスのバッグだって買える。はなはそれ以上食い下がるのをやめ、すぐにスマホを取り出して来希に電話をかけた。来希に来てもらって手続きを済ませ、ついでに新しいケアセンターへの引っ越しを手伝ってもらおうと考えたのだ。その頃。来希は車で小林グループの本社ビルへと向かっていた。今日は時雄と契約を結ぶ日だ。昨夜知った離婚の事実は、彼にとって悪夢だった。一晩中まんじりともせず考え続け、ようやく結論に達した。離婚できるなら、復縁だってできるはずだ、と。一刻も早く萌花と復縁しなければならない。それに、彼はまだ信じている。萌花はただ頭に血が上っているだけで、きっと後悔するはずだ。昨日、萌花ははっきりと「はなのことが気に食わない」と言っていた。結局のところ、それは彼を愛しているからこその嫉妬ではないか。思考が乱れる中、スマホが光った。はなからの電話だ。来希は少し迷ったが、結局電話には出なかった。すぐに、来希は小林グループのビルに到
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