律は彼女の手をそっと握りしめた。「親戚の連中が何を騒いでも、これ以上心を痛めないでほしい。面倒事は全て私が処理するから。……いっそ、会社の実権なんて伯父さんたちに渡してしまっても構わないんだ。私に未練などない。おばあちゃんが望むなら、どんなことだってするよ」微かに震える声が、本心であることを物語っていた。「私はね、会社を継ぎたいわけでも、拝島家の財産が欲しいわけでもないんだ。ただ、おばあちゃんには一日でも長く……元気で私の傍にいてほしいんだよ」その切実な願いに、志津は目を細め、幾重にも刻まれた目尻の皺をさらに深くして優しく微笑んだ。「お前が財産なんてこれっぽっちも欲しがっていないことくらい、おばあちゃんが一番よく分かっているよ。……でもね、会社はお前に任せたいんだ。お前以外の人間に拝島グループを託して、安心して目を閉じることができるものかい。血の繋がらないお前に、これだけの重圧と理不尽な苦労を背負わせているのは本当に申し訳なく思っている。だけどね……どうか、おばあちゃんを助けると思って、この難局を乗り越えておくれ」志津の言葉は静かだが、強い確信に満ちていた。「会社は私が一代で築き上げたものだ。それを誰に託そうと私の自由だし、私の決意は揺らがない。この先、何があってもだよ」あの二人の息子がどれほど騒ぎ立てようと、彼らに会社や遺産を渡す気は毛頭なかった。自分の腹を痛めて産んだ子だからこそ、その身勝手さと無能さを誰よりも知っているのだ。彼らに会社を任せなどすれば、数年と経たずに骨の髄までしゃぶり尽くされ、拝島の看板はあっけなく地に落ちるだろう。自分の生涯をかけた血と汗の結晶を、あの息子たちに無惨に踏みにじられるのだけは絶対に我慢ならなかった。「……分かりました。おばあちゃんがそこまでおっしゃるなら、もうこの話はしません。会社は、私が責任を持って守り抜きます」律は静かに頷き、その決意を言葉に込めた。「でも、さっきの約束だけは絶対に守ってくださいね。親族のいざこざなんて気にせず、今はご自身の体を第一に考えてください。どうか、これ以上無理をなさらないで」律の胸の奥には、熱いものが込み上げていた。自分が拝島家の血を引いていないと知らされた時、彼は激しい痛みに襲われた。もう、この大好きな「おばあちゃん」の孫でいられなくなるのではないかという恐怖があったか
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