堂々巡りの絶望。 出口のない迷路の壁に頭を打ち付けているような錯覚。 志保さんは、ゆっくりと顔から手を離した。 涙で濡れたその顔には、もう迷いはなかった。一度すべてを壊してしまった者が、最後に残されたたった一つの希望にすがりつくような、凄絶な光が宿っていた。「いいえ。……まだ、道はあります」 彼女は、濡れた手で自分のバッグを探り、一枚の厚紙を取り出した。 そして、それをテーブルの上、私の目の前に滑らせた。 裏返しにされたそれは、上質な和紙のような手触りのカードだった。「……これは?」「明日の、臨時株主総会の入場パスです。……私の権限で、特別枠として用意しました」 息を呑む。 株主総会の、入場パス。 剛造さんが牙を剥き、湊がそれに無抵抗で噛み殺されようとしている、あの戦場への切符。「これを、私に?」「ええ」 志保さんは、私を真っ直ぐに見据えた。「あの子の目を覚まさせることができるのは、もう私ではありません。……あなたしかいないのです」 ◇「ちょっと待ってください」 お姉ちゃんが、冷ややかな声で割って入った。「朱里がその会場に行けば、それこそ剛造の思う壺じゃないですか。あの契約書を突きつけられて、『ほら見ろ、金で雇われた女だ』って吊るし上げられるんですよ。湊の傷口を広げるだけです」 正論だった。 私がノコノコと姿を現せば、世間の好奇の目はさらに九龍家に集まり、スキャンダルの炎は天井知らずに燃え上がる。 だが、志保さんは首を横に振った。「……ええ。理屈の上ではそうです。あの契約書が存在する限り、何を言っても言い訳にしか聞こえないでしょう。世間はあの子を非難し、失脚を求めるかもしれません」 彼女は、カップの隣にある私の手を、両手で包み込んだ。 氷のように冷たかった彼女の手は、今は微かに熱を帯びている。「
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