復讐のために彼をレンタルしたら、まさかのCEOに溺愛契約で雇われました

復讐のために彼をレンタルしたら、まさかのCEOに溺愛契約で雇われました

last updateLast Updated : 2026-05-08
By:  花柳響Updated just now
Language: Japanese
goodnovel18goodnovel
10
0 ratings. 0 reviews
399Chapters
21.9Kviews
Read
Add to library

Share:  

Report
Overview
Catalog
SCAN CODE TO READ ON APP

「今の彼氏は、あんたなんかより百倍素敵な人よ!」 結婚直前に裏切られた朱里は、プライドを守るためレンタル彼氏での復讐を決意。だが当日、業者は現れず、絶体絶命の朱里がとっさに捕まえたのは息を呑むほど美しい男だった。 彼をホストと勘違いし復讐を成功させ、勢いで一夜を共にするが……翌朝、衝撃の真実が待っていた。 彼は業界の頂点に君臨するホテル王・九龍湊。 「君を婚約者役として雇いたい。月額300万。住む場所は僕の家だ。ただし、あの夜のことは『業務外』だ」 レンタルしたはずが、まさかの逆雇用!? 冷徹な契約と身体の熱が交錯する、嘘つきな二人の溺愛契約ラブストーリー!

View More

Chapter 1

第1話 最悪の裏切りと出会い①

 人生には三つの坂があるという。上り坂、下り坂。そして――「まさか」の坂。

 結婚式のスピーチで使い古されたその言葉が、これほど鋭利な刃物となって私の喉元に突きつけられる日が来るなんて、想像さえしていなかった。

 私、茅野朱里(かやのあかり)、二十五歳。

 職業、ブライダルコーディネーター。

 一生に一度の晴れ舞台を演出し、誰よりも近くで「幸せ」の形を作り上げるプロフェッショナル。それが私の誇りであり、アイデンティティだった。

 けれど、運命の脚本家はあまりに悪趣味で残酷だ。

 まさか、私を裏切って別れた元彼と、彼を横から奪い取ったかつての親友に、自分たちの結婚式を担当してくれと笑顔で懇願されるなんて。

 それは三流ドラマの脚本家ですらボツにするような、滑稽で救いようのない「まさか」だった。

 時計の針を、三ヶ月前――私が人生のどん底へと突き落とされた、あの日へと戻そう。

 私の職場である高級ブライダルサロン『Felice Luce(フェリーチェ・ルーチェ)』。

 柔らかなダウンライトが照らす打ち合わせスペースは、未来への希望に満ちたカップルたちの幸福な空気で満ちていた。その一角で、私は全身の血液が逆流するような悪寒と戦っていた。

「あ、朱里。久しぶり……だね」

 気まずさを隠そうともせず、しかしその瞳の奥に明らかな優越感を滲ませて手を挙げた男。

 三ヶ月前、「他に好きな人ができた」というありきたりな理由で、一方的に私を切り捨てた元彼、拓也だ。

「朱里、元気だった? 私たち、今日はどうしても朱里に『お願い』があって来たんだ」

 拓也の腕に甲斐甲斐しく絡みつき、悪気のない子供のように屈託なく笑う女。

 大学時代、私の部屋に入り浸り、服も化粧品も、悩み事さえも共有し合った親友――美咲。

 二人の左手薬指には、これ見よがしに揃いのプラチナリングが嵌められている。サロンの照明を反射して鋭く光るその輝きが、私の網膜を焼き切るように痛い。

(……久しぶり、なんてよく言えるわね)

 拓也が「好きな人」と言った相手が美咲だと知ったのは、別れの直後だった。

 それだけではない。共通の知人からの情報で、二人が私と付き合っていた半年前から、すでに肉体関係を持っていたことも知っている。私の誕生日に「仕事が忙しい」と嘘をついた拓也が、美咲のマンションへ消えていった夜があったことも。私が美咲に恋愛相談をしていた時、彼女が心の中で私を嘲笑っていたことも。

 すべて知っている。

 けれど、目の前の二人は、私がその事実を知らないと信じ込んでいる。「可哀想な、何も知らずにフラれた元カノ」だと、私を見下しているのだ。

「……で、何の用? 私、これから新規のお客様のアテンドが入っているのだけれど」

 喉の奥から絞り出した声は、自分でも驚くほど低く、冷たかった。

 テーブルの下で組んだ両手は、指先が白くなるほど強く握りしめられている。爪が掌に食い込む鋭い痛みだけが、煮えくり返りそうな怒りを辛うじて繋ぎ止めていた。

 ここで泣き叫び、テーブルの水を浴びせかけてやれば、どれほど楽だろう。

 だが、それはできない。私はプロだ。この『Felice Luce』のチーフコーディネーターとしての矜持が、無様な醜態を晒すことを許さなかった。

 そんな私の必死の理性などお構いなしに、二人は信じがたい爆弾を投下した。

「それで……朱里。俺たち、結婚することにしたんだ」

「そうなの! それでね、朱里にお願いがあって。私たちの結婚式、朱里に担当してほしくて」

 時が止まった気がした。

 呼吸の仕方を忘れた肺が、小さく悲鳴を上げる。

 担当? この私に?

 私の目を盗んで背徳の蜜を啜り合い、今また私の目の前で「真実の愛」の体現者のような顔で笑う、この裏切り者たちを? 私が、心を込めて祝福しろというの?

「やっぱり、朱里のセンスが一番だって、美咲とも話してたんだ。朱里なら、俺たちのこと一番わかってくれてるだろ? 一生に一度のことだし、信頼できる人に任せたくてさ」

 拓也の言葉が、鼓膜を不快に撫でる。

 信頼? 一番わかってる?

 どの口が言うのだろう。その薄っぺらい誠実さの皮を剥いで、中身の腐臭を嗅がせてやりたい。

 ああ、そうだ。美咲は昔からそうだった。私が努力して手に入れたものは、何でも欲しがる。限定のコスメも、私の夢だったこの仕事も、そして、彼氏も。

 奪うことでしか、自分の価値を確認できない哀れな生き物。

 ふつふつと、腹の底からドス黒いマグマが湧き上がる。

 それは単なる怒りではない。もっと粘着質で、重く、内臓を雑巾絞りにされるような屈辱だった。

 ここで断れば、私は「未練がましく逃げ出した負け犬」になる。一生、あいつらの酒の肴にされる。

 それだけは、死んでも御免だ。

「……いいわよ。喜んで」

 顔を上げた瞬間、私は完璧な「ブライダルコーディネーターの微笑み」を顔に貼り付けていた。

 唇の端を美しく上げ、目は優しく細める。鏡の前で何千回と練習した、営業用の仮面。

「ただし、条件があるの」

「え?」

「私、その日は別の結婚式にゲストとして招待されているから、担当プランナーとして当日仕切ることはできないわ。準備は手伝うけれど、当日はゲストとしてお祝いに駆けつける形になる」

 一瞬、二人が顔を見合わせる。

「もちろん、私の『大切な人』と一緒にね」

「え、朱里……彼氏、いたの?」

 拓也が鳩が豆鉄砲を食らったような顔で目を見開く。その間抜けな表情に、胸のすくような暗い快感が走る。「自分以上にいい男がいるはずがない」「朱里はまだ俺を引きずっているはずだ」という傲慢な自意識が透けて見えるようだ。

「当たり前でしょ。拓也と別れてから、ずっと熱烈にアプローチしてくれていた人がいて。もう、その人と婚約しているの」

 一度口をついて出た嘘は、止まることを知らずに加速していく。

「拓也なんかより、百倍素敵な人よ。背も高くて、仕事もできて、お金持ちで……何より、嘘をつかない誠実な人」

 嘘だ。全部、その場しのぎの真っ赤な嘘。

 ズタズタに引き裂かれたプライドを、ボロボロの端切れで必死に繕っただけの虚勢。けれど、今の私にはこの「見えない恋人」だけが、自分を守る唯一の盾だった。

「そ、そうなんだ……。でも、よかった。朱里も幸せそうで」

 美咲が心底ホッとしたように胸を撫で下ろす。その安堵の表情が、何よりも憎かった。私の「幸せ」を確認することで、自分たちの罪悪感を消し去り、正々堂々と幸せになろうとしているのだ。

 ふざけないで。

 絶対に、あんたたちの思い通りにはさせない。

 こうして私は、自ら退路を断った。引き返すことのできない、断崖絶壁の淵へと。

 ◇

 そして今日。

 約束の、地獄の結婚式当日。

 六月の陽射しが、容赦なく肌を焼く。

 都内の一等地に佇む、白亜のゲストハウス。その重厚なエントランス前で、私は石像のように立ち尽くしていた。

 今日の私(のドレス)は完璧だ。

 この復讐劇のためにボーナスをはたいて新調した、シャンパンゴールドのパーティードレス。背中が大きく開いた大胆なデザインだが、上質なシルクが肌に吸い付くように馴染み、決して下品には見えない。早朝から馴染みのサロンでセットした髪は、一分の隙もなく艶やかにまとめられている。メイクも、姿勢も、纏う香りも。

 すべてが、「幸せな婚約者」を演じるために計算し尽くされた完璧な武装。

 ――ただ、もっとも重要な「武器」を除いて。

「……来ない」

 乾いた独り言が、熱気の中に溶けて消える。

 約束の午後一時を、もう十五分も過ぎていた。

 あの日、大見得を切った手前、私は文字通り「拓也より百倍素敵な、完璧な彼氏」を用意する必要に迫られた。当然、そんな都合の良い相手が身近にいるはずもない。私が頼ったのは、インターネットの海に漂う現代の闇――レンタル彼氏サービスだった。

『完璧な恋人、レンタルします』

 藁にもすがる思いで予約したのは、業界でもトップクラスと評判の、時給五万円という破格の超高級キャスト。サイトのレビューには、「まるで王子様」「彼のエスコートで世界が変わった」「もう彼以外愛せない」と、信者めいた絶賛の言葉が並んでいた。

 結婚資金としてコツコツ貯めていた定期預金を解約することに、迷いはなかった。金でプライドが買えるなら、安いものだと思った。今日一日、私を「世界一愛されている女」にしてくれるなら、全財産を失っても構わないとさえ思った。

 なのに。その「五万円の王子様」が、現れない。

「どうしよう……っ」

 じわり、と嫌な冷や汗が背筋を伝い、シルクのドレスを汚していく。

 震える指先でクラッチバッグからスマートフォンを取り出し、祈るような気持ちで電源ボタンを押す。しかし、画面は無情な漆黒のまま沈黙を守っていた。

 昨夜、不安と緊張から自宅で安ワインを空け、ネットの掲示板で「レンタル彼氏 ドタキャン」などという不吉なワードを検索し続けて寝落ちしたせいで、充電を忘れてしまったのだ。家を出る時には虫の息だったバッテリーは、ここへ向かうタクシーの中で力尽きた。

 最悪だ。考え得る限り、最悪のシナリオ。

 私のすぐ横を、着飾ったゲストたちが談笑しながら通り過ぎていく。幸せそうな笑い声。甘い香水の匂い。

 あの重厚な扉の向こうには、私の人生に泥を塗った二人が、「可哀想な朱里」がひとりで惨めに現れるのを、今か今かと待ち構えているのだ。

 もし、今ここで一人で会場に入ったら?

(あら朱里、彼氏はどうしたの?)

(もしかして、嘘だったの? やっぱり朱里には、俺しかいなかったんだな)

 美咲の同情を装った優越感に満ちた目と、拓也の歪んだ自尊心を満たすようなニヤけた顔が、脳裏に鮮明に浮かび上がる。

 吐き気がした。それだけは、絶対に嫌だ。

 そんな屈辱を味わうくらいなら、このまま舌を噛んで死んだほうがマシだ。私のプライドは、もう限界まで張り詰め、悲鳴を上げている。

 どうする?

 逃げる? 仮病を使って、このまま家に帰る?

 いや、逃げたら負けだ。一生、あいつらに「負け犬」として笑われ続けることになる。自分の人生の主導権を、あんな奴らに渡したまま生きていくことになる。

 でも、どうすれば――。

 焦燥と屈辱、そして自分自身の愚かさへの激しい怒りで、視界が滲みそうになった。

 その時だった――。

Expand
Next Chapter
Download

Latest chapter

More Chapters
No Comments
399 Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status