私の言葉が、マイクを通して静かな会場に浸透していく。 湊は、口を半開きにしたまま、私を見つめていた。 彼の強固な防壁が、音を立てて崩れ落ちていくのがわかる。「……本当に、君という女は」 ◇ 湊の手から、力が抜けた。 マイクの奪い合いが終わり、彼は私からマイクを取り上げると、そのまま演台の上にドンと置いた。 ゴッというノイズが鳴る。 次の瞬間、彼は私の腰を引き寄せ、何百人もの視線が注がれる中で、強く抱きしめた。「……っ!」 スーツの硬い生地越しに、彼の激しい心臓の音が伝わってくる。 汗の匂いと、微かなコロンの香り。 私の頭を撫でる彼の手は、微かに震えていた。「……降参だ」 耳元で、彼が深く息を吐き出すように囁いた。「君には……絶対に勝てない」「……当たり前でしょ。私が一番、あなたのことをわかってるんだから」 私は彼の背中に腕を回し、その震えを鎮めるように強く抱きしめ返した。 カメラのフラッシュが、今までで一番激しく瞬く。「……おい! 何を神聖な総会の場で……! ふざけるな!」 剛造が我に返り、顔を真っ赤にして怒鳴り散らしている。「議長! こんな茶番は終わりだ! 今すぐ採決を……!」「……茶番ではない」 湊が、私を抱きしめたまま、ゆっくりと剛造の方へ顔を向けた。 その瞳には、先ほどまでの死んだような虚無の色はもうない。 獲物の喉笛に狙いを定めた、冷酷で、絶対的な強者の光が戻っていた。 彼は私の肩を抱いたまま、演台のマイクを引き寄せる。「……皆様、お騒がせいたしました。……先ほどの私の『辞任』という言葉は、撤回させていただきます」
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