言い終えると、裕也は絵里の腰を抱き寄せ、その場を後にした。和也は呆然と立ち尽くしていた。怒りと未練、そしてどす黒い情念が入り交じった瞳で、遠ざかる二人の背中を射抜くように睨みつける。胸の奥底では、嫉妬という名の暗い炎がじりじりと彼自身を焼き焦がしていた。だが絵里は裕也の身体にぴたりと寄り添い、彼に抱かれるがまま歩みを進め、和也には一瞥すらくれようとしなかった。彼はようやく現実を突きつけられた。絵里は今回ばかりは本気だ。本当に、自分を捨てたのだと。そう実感した瞬間、胸を鋭利な刃物でえぐられるような、息もできないほどの痛みが全身を貫いた。その時ふと、絵里が口にしていた寧々に関する数々の出来事を思い出し、彼の瞳に一筋の希望が宿った。三年前の真相を突き止め、自分の誠意を絵里に示せば、きっと許してもらえるはずだ。絵里がこんなにも早く自分への愛を失うなど、彼には到底信じられなかった。……しかし、絵里の愛はすでに完全に冷め切っていた。和也は気性が荒く、すぐに激昂しては見境がなくなり、自分や他人を傷つけるような真似を後先考えずにやってしまうのだ。以前付き合っていた頃、絵里は何度もそんな目に遭ってきた。機嫌の悪い彼をなだめようとして、逆に苛立った彼に強く突き飛ばされ、怪我を負ったこともある。だが当時の絵里は彼に夢中で、「わざとじゃないんだ」、「気が済むまで俺を殴ってくれ」といった彼の安っぽい言葉に、いとも簡単に丸め込まれていたのだ。今になって冷静に過去を振り返ると、自分がどれほど愚かで間抜けだったかを痛感する。本来愛すべきなのは、根っから優しく誠実な人であって、一時の熱に浮かされ、気まぐれにほんの少しの優しさを見せるだけの男ではないのだ。ホテルに戻るなり、裕也は数歩先を歩く絵里を見つめた。その小柄で、今にも壊れそうなほど華奢な背中を見るうち、彼はふいに大股で歩み寄り、背後から彼女をきつく抱きしめた。「絵里」裕也は彼女の頭の上に顎を乗せ、少し掠れた声で囁いた。「今夜は、辛い思いをさせたな」絵里はハッとした。彼が突然こんな行動に出るとは思ってもみなかったのだ。ましてや、彼がこれほどまでに強い自責の念に駆られているとは。「私なら本当に大丈夫。あなたがすぐに来てくれたから、和也に何もされずに済んだのよ」
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