脚本チームは総勢八名。絵里に割り振られたのは、現代物の「俺様社長」系だった。期限は半月、それまでに初稿を上げなければならない。昼の十一時、会議が終わった。同じく脚本家の古賀霞(こが かすみ)は、時代物を割り振られて悲鳴を上げている。「もう書き飽きたよぉ。ねえ絵里、ボスに言って交換してもらわない?」絵里はこの手のジャンルが好物だし、筆も乗る。彼女はにっこりと笑い、無慈悲に却下した。「寝言は寝て言って。さっさと準備しなさい」「はーい……」霞はがっくりと肩を落とし、うめき声を漏らす。だが時間を確認すると、すぐに気を取り直して誘ってきた。「仕事に取り掛かる前に、パーッと美味しいものでも食べに行かない?」「いいわよ。奢るわ」絵里がペンと手帳をしまい、席を立とうとした時、LINEの通知音が鳴った。開いてみると、裕也からのメッセージだ。【今夜、飯でもどうだ?】自然と口元が緩む。彼女はフリック入力で素早く返信した。【いいわよ】帰り支度を終えた霞が、春風のような笑みを浮かべてスマホを見つめる絵里を目撃し、ゴシップ魂に火をつける。「何そのニヤけ顔。彼氏?」絵里はスマホを置いた。笑ってた?確かに霞は、絵里に彼氏がいることは知っている。だが、その相手が藤原和也だとは知らない。ましてや、その和也を振って、彼の実の兄と結婚したなんて知ったら、どんな反応をするか……想像もつかない。「詮索好きね。ほら、行くわよ」……レストラン。食事が終わり、店を出る前に絵里は手洗いに立った。手を洗っていると、鼻をつくような、それでいて妙に馴染みのある香水の匂いが漂ってきた。続いて、隣に人影が現れ、手を洗い始める。「絵里、和也といつまで揉めてるつもり?まだ気が済まないの?彼にあそこまで機嫌を取らせて懇願させなきゃ気が済まないわけ?」寧々だった。彼女は絵里の目の前でペーパータオルを抜き取り、手を拭きながら、挑発と皮肉たっぷりに言い放つ。「私のことが嫌いなのは知ってるわ。でも、私が和也に一番可愛がられてる妹だって事実は変わらないの。どうしてそんなに私に突っかかるの?」絵里は鏡越しに寧々の完璧なメイクを施された顔を見据え、冷ややかに嘲笑した。「なんか臭うと思ったら……原因はあんたね。脳みそと腸が入れ替わ
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