裕也は絵里の顔に次々と浮かぶ表情を見て、この上なく甘い眼差しを向けた。「こういうのを、夫婦ならではの楽しみって言うんだ。分かるか?」彼はすこぶる機嫌が良く、三人に対する口調にも、普段のような棘がなかった。三人は同時に舌打ちする。絵里は呆れたように裕也を睨みつけた。だが、この気まずく恥ずかしい状況から逃げるわけにはいかない。強がってゆっくりと裕也の身体から離れ、背筋を伸ばしてから振り返った。そして笑みを浮かべる。少し引きつった、どこか気まずそうな笑みだったが、わざと何でもないことのように振る舞った。「これは……その……人生経験を豊かにするための、いろんな経験っていうか……?」三人は同時に言葉を失った。裕也の瞳の奥にある甘やかすような色は隠しきれず、まるで「絵里の言う通りだ」とでも言いたげだった。隆は顎を撫でる。「お前ら、仲直りしたのか?」「仲が悪かった時なんてあったか?」裕也の鋭い視線が隆を射抜く。隆は咄嗟に章を引き寄せ、盾にするように身を隠した。見えなければ何も起きていない、というような態度だった。篠が絵里の肩に手を置く。「絵里、意外ね。あなたもこんなことするなんて」絵里は乾いた笑いを漏らした。「皆さんのご指導の賜物よ」三人は途端に呆気に取られ、笑顔が凍りつく。こんなところまで責任転嫁されるのか?独り身の三人が、一体何を教えたというのだ。章は表情を変えず、淡々と言った。「二人とも謙遜するな。特に絵里、お前は独学で身につけたと言っても過言ではない」隆もすぐに同調する。「これに関しては章に賛成だ。彼の言う通り、絵里、お前は悪くなったな」篠は隆を白い目で見る。「悪くなったって何よ?成熟したって言うのよ」「……」絵里は裕也に視線を向け、二人は互いに何かを察したように微笑み合った。だが、それ以上は何も言えなかった。それでも、病室には楽しげな笑い声が満ちていた。彼らが帰ると、病室は静まり返った。篠が絵里を送り届けることになり、道中はずっと他愛ない話をしていた。「どうやら、あなたと裕也は仲直りして、もう問題ないみたいね」絵里は返答に詰まった。実際のところ、すべてが順調というわけではない。「彼は何も間違ったことをしていないわ。む
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