裕也の表情は依然として暗く沈み、喜んでいるのか怒っているのか、その感情は読み取れない。「確かに妙だな。どうやら母は、随分と多くの秘密を抱え込んでいるらしい」長い睫毛を伏せ、瞳の奥で渦巻く感情を隠すように、それ以上は何も口にしない。章と隆は顔を見合わせ、そのまま沈黙する。二人は常に一線をわきまえていた。踏み込みすぎず、引くべきところでは引く。それが彼らの流儀であり、何より裕也は昔から聡明な男だった。現在、藤原家を巡る報道は後を絶たず、雪枝の件はすでに世間を大きく騒がせている。もはや揉み消すことなど不可能であり、無理に火消しを図れば、ネット上で陰謀論が飛び交い、かえって事態を悪化させるだけだろう。ただ、長年の付き合いである彼らは裕也の事情をよく知っている。両親から愛情を注がれずに育った彼を思うと、どうしても不憫でならなかった。一方その頃。サウナ室でたっぷりと汗を流した絵里は、至福の吐息を漏らす。透き通るような白い肌は上気して淡く赤みを帯び、その瑞々しく艶やかな姿に、篠は思わず何度も見惚れてしまう。「人と比べても仕方ないとは言うけど、本当に肌が綺麗すぎるわ。やっぱり、どれだけ努力しても生まれ持ったものには敵わないのね」篠は感嘆の声を上げる。その胸にあるのは、純粋な羨望と称賛だけだ。実際のところ、篠も色白ではある。だが、絵里と並ぶとどうしても霞んでしまう。絵里は可笑しそうに彼女を横目で見て、タオルでしなやかな首筋を拭う。「他の人が言うなら信じるけど、あなたが言うと、お世辞にしか聞こえないわ」「なんでよ。私の言葉ってそんなに信用ない?」「だって、あなた自身がすごく優秀だから。美人で仕事もできるあなたにそんなことを言われると、なんだか恐縮しちゃうのよ」サウナで頬を上気させた篠は、吹き出すように笑う。「なるほど、お互い褒め殺しってわけね」絵里は肩をすくめる。「本音を言っただけよ」篠はますます楽しそうに笑い声を上げた。絵里と過ごす時間が長くなるにつれ、篠は彼女のことをますます好きになっていた。裏表がなく、気取らず、誰に対しても誠実なのだ。「よし、褒め合いはこのくらいにして、お腹も空いたし、ご飯に行きましょ」「ええ、そうね」絵里は汗を拭き、篠と共にサウナ室を出る。身支度を整え、そのまま
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