絵里の車は指定された住所を頼りに、ある廃校の敷地へと辿り着く。南は緊張した面持ちで車窓の外を見つめている。車が停まると、彼女の全身は激しく震え出した。「水原さん……」「怖がらないで。私がついているから」絵里は彼女の手を軽く叩いて励ます。南は服の裾をぎゅっと握りしめている。その内側には、例のボイスレコーダーが隠されている。絵里の後ろに続いて車を降りる。廃校の広々としたグラウンドは、土埃とゴミにまみれている。そこには一群の男たちが待ち構えており、皆一様に刃物を手にしている。白いワンピースを着た小さな女の子が、顔を泥だらけにして泣きじゃくっている。涙と土埃が混じり合い、恐怖のあまりその小さな身体は激しく震えている。「ママ……」「裕子……!」恐怖で声も出せなくなっていた裕子は、南の姿を見た瞬間、怯えながらも希望に満ちた声を張り上げる。ママの胸に飛び込もうと駆け出そうとするが、襟首を掴まれており、小さな身体でいくらもがいても前へ進めない。「ママ、ママぁ……」裕子はさらに激しく泣き叫び、大きな目から次々と涙の粒をこぼす。その姿はあまりにも痛々しい。南は悲鳴を上げる。娘がここまで怯えきっている姿に耐えきれず、半狂乱になって叫ぶ。「この畜生!早く娘を離して!」絵里も胸を締め付けられる。その「ママ」という切実な叫び声が、彼女自身の記憶を呼び覚ましたかのようだ。南を力強く引き寄せ、目の前の男たちを憎悪の込もった目で睨みつける。「要求の品は持ってきたわ。早く娘を離して。あの子はまだ子供なのよ!」南はボイスレコーダーを取り出し、彼らの前に掲げる。裕子を吊り下げている男はサングラスをかけ、坊主頭で、筋骨隆々とした巨漢だ。極めて凶悪な面構えをしている。「こっちへ寄越せ」南が渡そうと前に出かけたが、絵里が片手で彼女を引き戻し、交渉に出る。「先に裕子を解放しなさい」大男は不満げに吐き捨てる。「てめえに条件を出す資格はねえ!」彼は裕子を宙に持ち上げ、大きな手をその首元に添え、今にも絞め殺しそうな素振りを見せる。南は恐怖のあまりボロボロと涙をこぼし、もはや何も考えられなくなった。慌てて絵里を突き飛ばし、急いでボイスレコーダーを差し出す。大男はボイスレコーダーを受け取ったが、裕子を解放する
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