絵里は顔を強張らせ、眉を寄せる。洋二の自分に対する態度は常に素っ気なく、好かれているとは言えないまでも、嫌われているわけでもなかった。だが、この要求はあまりにも予想外だった。「どうしてですか」しばらくの沈黙の後、諦めきれずに問い返す。洋二は当然とばかりに言い放つ。「我々両家がここまで来てしまった以上、以前のように協力し合うことはもはや不可能だろう。裕也の母がお父さんを殺したんだ。お前は本当に、何もなかったかのように振る舞えるのか?絵里、起きてしまったことは取り返しがつかない。お前と裕也が別れることが、お互いのためなのだ。これまでの事業提携については、すでに動いている以上切り離すのは難しいが、今後は両家とも別々の道を歩むべきだと思っている」洋二の言葉の端々には身を引くよう促す意図が込められており、相談しているように見せかけて、実際にはとうに決断を下していた。両家がこのような事態に陥った今、洋二が絵里を嫁として受け入れることなど断じてあり得ない。絵里は伏し目がちに笑みをこぼす。裕也は自分のために、あわや肺を貫かれるほどの重傷を負ったのだ。裕也本人から言われない限り、絶対に諦めるつもりはない。「申し訳ありませんが、そのお話はお受けできません」絵里はきっぱりと拒絶し、顔を上げて洋二を見据える。その眼差しは澄み切って、揺るぎない。「雪枝は雪枝、裕也は裕也です。雪枝が罪を犯して裁きを受けることと、私が裕也と一緒にいることとは無関係です」洋二は驚き、ガタッと勢いよく立ち上がって声を荒らげる。「今や両家は世間の笑い者だ。お前に拒否権などない。いい加減にしろ!」そもそも、絵里が和也と婚約した当初から、洋二は絵里の性格を快く思っていなかった。傲慢でわがままなうえ、すぐに機嫌を悪くする。そのくせ何の役にも立たない。水原家の力が藤原家と互角であり、利益で結びついているという事情がなければ、最初からあんな婚約など撥ね退けていた。よもや絵里が裕也と電撃結婚することになろうとは、夢にも思わなかった。普段から裕也の周囲には女の影一つなかったため、この結婚も両家の強固な提携を維持するためのものだろうと考えた。それならば悪い話ではないと、洋二もあえて口出しはしなかった。だが今回、絵里は藤原家の体面などお
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