思い返せば、英二も桃子も老夫人の面影はないように思える。 英二は完全に老人似だが、老夫人に似ていないから老人似だと思っていた桃子はきつい目元が都似のようだ。 固まる優希に老夫人はふふと笑うと、優希の手を撫でながら続ける。 「井竜家の先代当主が出した結婚の条件だったの。私がおじいさんと結婚するにはその条件をのまなきゃいけなかった…。」 どういう理由で外の女性との間に子供を作る条件を出すのだろう。 優希は理解できずに顔をしかめた。 「私はおじいさんと結婚したかったからその条件を受け入れたわ。おじいさんが、何があっても私だけを愛していると誓ってくれたから、都さんの閨に向かうおじいさんを送り出した。でも1つだけ約束してもらったのよ。都さんと何をして、どんな話をしたのかは包み隠さず教えてと。肌を重ねる2人の中のやり取りで、私が知らないことがあるのが耐えられなかったから…。おじいさんはきちんと約束を守ってくれたわ。」 穏やかに話していた老夫人の声はそこで1度止まる。 その先の話は優希でも何となく予想できた。 「…でも最近になって、その約束が守られないの…。都さんと食事をしたことも知らなかったし、聞いても何も答えてくれないのよ…。いい歳してみっともないわよね…。桃子のこと言えないわ。」 少し震える声は老夫人の不安な気持ちを表し、いつもの上品で、でも茶目っ気を忘れない彼女ではなかった。 優希は暁春と有美の仲を疑い鬱鬱としていた自分を老夫人に重ね、強くその小さな肩を抱きしめた。 「大丈夫ですよ。おじいさんはおばあさんを愛しています。」 優希から見た老人は、妻である老夫人をとても大事にしており、むしろ老夫人以外の人間に関心が薄く感じる。
Последнее обновление : 2026-05-21 Читайте больше