All Chapters of 白月光は妹?私が死んでから元夫は泣いて後悔しました: Chapter 171 - Chapter 180

194 Chapters

171話 既視感のある新居

- 綾子は複雑な気持ちで、抱き合う有美と暁春を見ている。 2人の血縁関係は隆一から聞いていた。 有美の父親、つまり娘である麗華を苦しめた人物が、鳥居家の人間である可能性があることを知った時、綾子が気になったのは、有美がどこまで知っているのか、だった。 鳥居家の血を引く桃子は、随分と鳥居家に肩入れしているようである。そして聞くところによると、有美はその桃子と親しいらしい。 自分が保有する三滝製薬の株を譲るほどに。 もし有美が自分の出生を知っていて、それでも鳥居家と私欲のために関わっているのだとしたら。 もし犯人を知っているにも関わらず、親しくしているのだとしたら。 (…私は有美を許せないわね) 結局、孫は我が子の子供だから可愛いのであって、我が子の尊厳を踏み躙るような孫には愛情なんて湧かないのである。 綾子は娘の最期の目を思い出し、口を引き結んだ。 - 「何この家…」 火事から3ヶ月後、怒りと驚きが混じった声を出す有美の横で、暁春は呆然と新居を見ていた。 隣では馴染みの施工業者が心配そうな目をしている。 目の前には完成したばかりの新しい屋敷。 今日初めて目にする屋敷だが、その外観は、細かいところは異なるもののとても見慣れた形をしていた。 今にも懐かしい人が玄関ドアを開けて出迎えてきそうな、そんな既視感のある家だった。 「本当にこの家を暁春がオーダーしたの?本当に!?」 「え、ええ、外観と間取りを事前にお聞きして、そのように建てています…」 「…っ暁春!!」 有美と業者の会話を、どこか遠いところで聞いていた暁春は、有美の叫び声にようやく家から目を離した。 「何この家!こんなっ、前と同じ家!!私と一緒に住むのに!」 「……前の家も俺がデザインし
last updateLast Updated : 2026-08-16
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172話 マザコン??

新居での暮らしは、一言で言えば空虚だった。 有美は暮らしていくうちに機嫌を直し、日々内装を自分好みに変えていくことに精を出しているが、暁春はそれが落ち着かなかった。 慣れた間取りと配置だからこそ、前の家との差を感じてしまい、そのたびに暁春の胸はひどく空しくなるのだ。 なぜなのか。 その「差」というのは何なのか。 有美が壁に飾った写真たちを眺め、暁春は思考の底に沈んでいく。けれど、その答えは出ないまま時間だけが過ぎていった。 「私、子供を産んだらまた秘書に戻りたいわ」 その日の夕食時、ダイニングテーブルの向かいで、有美はフルーツを食べながらそう言った。 最近はつわりで気持ち悪いと言う日が増え、今日も日中は寝室で休んでいた。 暁春も食欲が無いので、同じフルーツの盛り合わせをつまんでいる。 「専業主婦もいいけれど、若いのに家に籠ってばかりいるのは勿体ないわ。ねえ、私をまた社長秘書に戻してくれるでしょう?」 暁春は苦笑いを浮かべる。 有美を社長秘書にしたのは暁春だ。 優希への復讐のために一度別れを切り出した時、有美は愛人役でもいいから協力させてほしいと言った。 それをとてもいじらしく感じ、貴重な若い時間を愛人役に費やさせる詫びとして、住居の他にもキャリアをプレゼントした形だった。 そもそもそんな理由で秘書にしたのだから、正直、能力には期待していなかった。 それでもただのお飾り秘書として終わらせるよりも、ある程度の力はつけてあげたいと思い、暁春自ら指導をしていた。 しかし実際のところ、キャリアウーマンとして見られたいらしい有美は、周囲の目があるところでは勤勉な態度を見せていた。だがそれもほとんどが見せかけで、実務能力だけでいえば、厳しい面接や試験を突破した一般社員にも及ばない。 暁春はそれも可愛いと気にしていなかったが、桃子はそう簡単にはいかないだろう。 「知っているだろう?俺はもう社長
last updateLast Updated : 2026-08-17
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173話 世界が揺らぐ

目に見えて有美の肩が震えた。 「ああ、心配しないで。下手したらおばあさんも大怪我をしたかもしれないから、おじいさんが怒っていたんだ。だから一応確認したいだけだ。あの録音の感じだと、君は関わっているのかな。」 再び顔を真っ青にした有美は言葉を詰まらせ、額から汗を滲ませると、突然席を立って暁春に抱きついてきた。 「ごめんなさい!!ごめんなさい!!私、あんな大事故になるなんて思わなかったの!!ちょっとお姉さんを怖がらせたくて……。」 額を暁春の肩に押しつけて泣き叫ぶ有美の背中を優しく撫でながら、暁春は自分の胸が冷えて行くのを感じた。 有美は昔から独占欲が強く、暁春が女子と話しているのを見ると、翌日にはその子へ堂々と牽制しに行くような子だった。 当時の暁春は桜と有美にしか関心がなく、その女子が有美からどういう仕打ちを受けても気にすることはなく、むしろ有美が怪我をしていないかを気にしていた。 しかし階段からの突き落としといい、タンクローリーの件といい、今は「よくも」という気持ちが強い。 その気持ちは、無意識に声にも表れてしまう。 「じゃあ、指示役の男とはどんな関係?鳥居 安忠だ。指示役はそいつだと、運転手が言っていたそうだ。」 「……っ桃子おばさんから紹介されたの……。信じて!誓って彼とはなんの関係もないわ!!私はあなただけのものなの!!お腹の子も、あなたの子で間違いないわ!!」 有美は、暁春が、自分が知らないところで男性と繋がったことに嫉妬していると思ったのだろう。 見当違いな訴えに、暁春は自分が呆れていることに気づいた。 しかしそれを訂正することはせず、冷たい感情を押し殺して両手で有美の顔を包み込むと、以前のように彼女の目を見つめて囁く。 「そんな心配はしていない。大丈夫、おじいさんには、おばあさんを傷つけようと思っていなかったと伝えて
last updateLast Updated : 2026-08-19
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174話 まさか

悟の話では、例の投稿から4ヶ月経ってもなお、井竜グループの評判は落ちたままで、役員の間でも不安が広がっているという。そこで桃子は、前社長の色を払拭するための経営体制の刷新と、昔から取引実績のある鳥居コーポレーションとの連携強化を打ち出した。経営の安定化を対外的に示すためだと説明され、役員たちも承諾したそうだ。「現状では、特に利用者の信頼が重要な医療部門で、新体制への移行を強く打ち出すようです。その一環として鳥居コーポレーションとの資本業務提携を進め、鳥居側から役員を受け入れる方向で調整しています。実際、鳥居コーポレーションは井竜グループの医療関連会社の株式を取得し始めています」「綺麗に言葉で飾った企業侵食だな」暁春は鼻で笑う。この状況で、鳥居コーポレーションが動くことは想定内だった。そもそも、井竜グループにほとんど利益をもたらさない鳥居コーポレーションとの取引は、長年グループの膿となっていた。大きな損害はないものの、利益が出ないのなら、経営者として切り離したいもの。しかし老人が良しとしなかったのだ。老夫人が絡むと途端に弱くなる彼は、鳥居コーポレーションを切った後の報復を恐れていた。何があっても老夫人に知られたくないことを、都が握っていたから。だから暁春は、鳥居コーポレーションを切る正当な理由を炙り出すために西地区の開発の情報を流した。都と桃子が、より多くの利益を得るために食いついてくると思ったから。案の定2人は暁春と老人に、鳥居コーポレーションと契約を結ぶようお願いしてきた。特に桃子は、親族の会社を助けるよう、暁春にしつこく言ってきたのだ。しかし暁春は鳥居家を親戚とは思っていない。厚かましい彼らは、力も無いのに井竜グループのものは自分たちのものでもあると思っていた。その厚顔さが嫌で、自分にもその血が流れていることが虫唾が走るほど嫌だった。暁春の目は冷たく光る。その時、階段下で有美が暁春を呼ぶ声がした。「電話
last updateLast Updated : 2026-08-20
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175話 そう思っていた

検査を了承した医師だったが、パソコンを打ち込む音が聞こえるとすぐに「……おや?」と呟いた。「なんだ?」緊張していた暁春の神経は敏感で、思わず情けない声が出てしまう。「ああ、その検査は、以前会長夫人のご依頼で実施しております。結果もお渡ししているはずですが、再度検査致しますか?」暁春は眉をひそめた。「そんな話は聞いていない。なぜおばあさんは検査を依頼したんだ?」「そこまでは私にも分かりません。では、以前の検査結果を後ほどメールでお送りしますね」「結果」という言葉に暁春の胸はざわつき、返した「ああ」という声も緊張で掠れていた。電話を切っても落ち着かない気持ちは鎮まらず、震える手でタバコを口に咥える。(もし「そう」なら、俺はどうするつもりだ……?)それは、自分の世界がひっくり返ることを意味していた。しかし、気持ちの整理もつかない間に、パソコンの画面にはメールの受信を知らせる文字が表示された。飛びつくようにそのメールを開き、添付ファイルにカーソルを合わせる。柄にもなく恐怖を感じて一瞬躊躇したが、無理やり指を動かした。そして開かれたファイルを確認した途端、その目は大きく開かれ、体の震えすら止まった。「……3.1%……」それは、暁春と有美が血縁関係にあるということを示していた。すぐに携帯で、それがどのくらいのものなのかを調べると、およそはとこ程度の血縁関係と出た。(はとこ……)仮に安忠が有美の父だとすれば、この数字と当てはまる。「はは……」暁春は乾いた笑い声と共に、背もたれに倒れ込んだ。有美が鳥居家との繋がりを隠していたことから、おそらく彼女は全てを知っているのだろう。暁春の血筋だけでなく、自分の血筋も。(彼女はなぜ俺に近づいた?)有美に惹かれた、あの庭でのことも、都が仕向けたのだ
last updateLast Updated : 2026-08-21
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176話 詰められる

すると暁春の声が、それまでの甘いものから、鋭いものに変わった。同時に恍惚としていた目も、氷のように冷たくなっている。「でも今は、顔も見たくない」これには有美は狼狽えた。過去、これほどの怒りと敵意に満ちた目を、彼から向けられたことがあっただろうか。(いいえ、初めてよ…)二人の関係が変わる予感に、有美の体は凍りついた。そんな有美から視線を外し、暁春は怠惰な動作で机の上のパソコンを触る。「これについて、どう思う?」有美は冷たい声にぎこちない動きで首を動かし、暁春の腕の先に目を向ける。スクリーンセーバーが解除された画面には「株主名簿」という文字が表示されていた。「君が持っていた株と同数が、今は鳥居コーポレーション名義になっている」暁春は画面を見たまま、静かに続けた。「三滝製薬の株を、鳥居コーポレーションに譲渡したのか?」暁春の意図が分からず、小さく頷く。「え、ええ…」「なぜそこに?」そう聞かれ、有美は暁春が安忠との関係をまだ気にしているのだと思い、一気に肩の力が抜けた。「やだ、あなたまだヤキモチを焼いてるの?鳥居 安忠とは何の関係もないと言ったでしょう?」「本当に?」「ええ、ええ、本当よ」些細な理由に安堵し、有美はいまだ笑みを戻さない暁春の首に額を擦り付ける。「親不孝ものだな。実の父親を関係ないと切り捨てるなんて」有美は再び固まった。「君は叔母の出生を知っている。外部には伏せられているはずのことを、なぜ知っている?」冷淡な声に体が小刻みに震え出す。否定しなければ。頭ではそうわかっていても、真っ白になった頭からは、意味のある言葉が何も浮かばない。そして暁春から放たれている重たい空気に、顔を上げることもできなかった。「桜はこのことを知らない。
last updateLast Updated : 2026-08-22
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177話 生まれ変わりは信じない。でも…

「どうして!?私を捨てるの!?嫌よ!!」咄嗟に暁春の腕を掴む。「お腹にはあなたの子供がいるのよ!?大事にするって言ったじゃない!!」「今となっては難しいだろう。子供が生まれれば、鳥居家は親戚だからと井竜家に擦り寄ってくる」「……子供を堕ろせというの…?」有美の声は、信じられないと震えた。それに対する暁春の答えは沈黙だった。この沈黙が肯定を意味していることは、有美にもわかった。(何なの…!?鳥居家の血筋だからって、こんなに態度が変わるもの…!?)鳥居家と絶縁するからと泣いても、おそらく暁春の気持ちは覆せないだろう。(あんなに私を愛していたのに、鳥居家というだけで憎まれて、憎まれていたはずのあの女は、死んでも暁春を離さない……!!)優希が憎くてしょうがないが、今はそれどころではない。なんとかして子供を残すことを認めさせなければいけないのだ。(考えろ……!ここで全てを失ってたまるか…!)-暁春は最後の煙草に火をつけた。膝にはまだ有美が座り、俯いている彼女は動く気配がない。それを無感情に流し見て、パソコンに目を向ける。無理やり退かさないのは、血縁者だとわかった今となっては、散々体を重ねてきた有美に、自分から触れるのも抵抗があったからだ。安忠との親子鑑定は、偽装でもはったりでもなく、本物の証明書だった。昨晩、有美と自分の関係を知り、急いで悟に追加の指示を出した。安忠に接触し、彼の髪なり皮膚片なりを入手して、病院まで送り届けるというものだった。幸運にも、その日に健志がSNSに投稿していたクラブでの豪遊の写真に、安忠も写っており、居場所は予想できた。そして悟がその店に客を装って入店し、安忠が飲み終えたグラスを店員が片付ける前に回収。その付着物を検体として病院へ届けた。大至急で鑑定を依頼して、結果が来たのが有美が来
last updateLast Updated : 2026-08-23
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178話 光さす側

その後の生活がどう変わったかといえば、甘い言葉をかけなくなった以外に大した変化は無かった。なんと言っても、「優希」の子供は有美のお腹の中にいる。以前、有美は情緒不安定になって薬を大量に飲んだことがあるため、目を離すこともできず、暁春は変わらず近くに控えていた。最初はしおらしくしていた有美も、徐々に元のお姫様に戻っていき、暁春は従者のようになっていった。それでも子供が生まれるまでの辛抱、と額に青筋を浮かべながら耐えていた。なぜここまでして、この子供の誕生を待ち望んでいるのか。その理由を深く考えようとすると、暁春はいまだに落ち着かない気持ちになる。しかし、子供が男の子でも女の子でも、そばに置いておきたいという思いは、有美のお腹が膨らんでいくにつれて強まっていった。-横殴りの雪が窓を叩く中、優希は新しい小さな命を胸に抱いている。その子はまだお腹の中にいると思っているのか、大人しく優希の胸に頬を寄せて、目を閉じている。2時間前、優希は女の子を出産した。3,500gを超える大きな赤ちゃんで、30時間以上にも及ぶ出産だった。そのため、優希の顔には濃い疲労が浮かんでいる。しかし我が子を見る目は慈愛に満ちており、とても優しいものだった。「ゆうちゃんお疲れ様。」そこに老夫人が看護師と一緒に病室に入ってきた。老夫人は眠る赤子を覗き込むと、「可愛いわねぇー」と、目尻を下げて笑った。その姿に自然と優希の口元にも笑みが広がる。子供の名前は凛(りん)。優希の支えとなってくれた女性たちは皆、強くて優しい人たちだった。だから彼女たちのように、凛とした強さと優しさを持った女性に育ってほしいと思い、お腹の子が女の子だとわかった時から、その名を考えていた。(強くて優しい女性になってね)優希は愛しい我が子にそっと頬擦りした。 「看護師さん
last updateLast Updated : 2026-08-24
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179話 もうひとつの誕生

「予定日は2週間後じゃなかった?」老夫人が横から画面を覗き込んで聞く。「急に産気づいたんだ。今隣の部屋で皆集まっているよ」「ならもう電話を切らないとね。聞かれたら大変だわ」慌てた老夫人の声に、優希も急いで電話を切ろうとした。しかし通話を切る直前、ふと思い直した。「お父さん、有美ちゃんの赤ちゃんの誕生を喜んであげてね」「優希?」「子供に罪はないわ。だから、私にしてくれたように、たくさんの愛情をあげて」有美が鳥居家と繋がっている話は聞いている。優希自身、有美にされたことを考えると怒りが湧いてくるが、それでも生まれてくる子供はまた別だった。今自分の腕の中で眠る、無垢で無力な存在を見ると、有美の子供にも安心できる場所があってほしい。どうしてもそう思ってしまう。願わくば。(私がそばで見守ってあげれたら…)失ったもう一人の子供の分まで、愛情を与えられるのに。「……大丈夫だよ。そこはきちんと理解している。生まれてきて良かったって思えるように、大切にするよ」隆一はしっかりと頷く。その後、有美の叫び声がいっそう大きくなったところで、隆一を呼ぶ声が聞こえた。そして焦った隆一の顔を最後に映して、通話は切られた。「……バレていないわよね…?」しん、と静まり返った病室に、老夫人の緊張した声が響く。最後に聞こえた声は、暁春のものだったからだ。「…大丈夫だと思いましょう…」隆一は壁を背にしてテレビ電話をしていたので、優希の顔が見られることはないだろう。声も、優希が話し終えてから扉が開いたようなので、聞こえていないはずだ。少し沈黙が流れると、状況を知らない看護師が戸惑いながら手を伸ばしてきた。「赤ちゃん、お預かりしますね」優希は考えを振り払い、凛を渡す。看護師が産着が汚れていること
last updateLast Updated : 2026-08-26
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180話 歪んだ2人

「心房中隔欠損ですね。心臓に小さな穴が開いています」「ただ、成長とともに自然に塞がっていくこともありますから、しばらくは様子を見ましょう」菊池先生の説明に、暁春の表情は険しくなる。原因ははっきりとはわからないと言うが、それでも暁春の頭には、有美の薬の大量摂取と自分たちの血縁関係が浮かんだ。もし自分たちの行いが、この小さな体に負担を負わせたのだとしたら。暁春は初めて、後悔という感情を覚えた。そんな状況なので、退院後は綾子が泊まりがけでサポートに来ることになった。-「私、なんか怠いから、おばあちゃんが陽にミルクをあげて」ベッドで携帯を弄る有美を、綾子は苦々しい顔で見てしまう。綾子は退院した有美たちと一緒に、暁春の家に泊まりがけでやってきていた。暁春が家にいる時は、彼が率先して陽の世話をしているものの、1ヶ月が経つ最近は会社に呼ばれることが増え、主に綾子が世話をしている。肝心の有美はといえば、基本的に自分の気が向いた時しか関わってこない。ミルクは綾子が用意したものを、ただ口元に当てるだけ。オムツは絶対に変えず、気まぐれで抱いても、陽が泣き出せばすぐに綾子に渡した。「おーよしよし、ひいばあがミルクをあげようね」よほどお腹が空いていたのか、真剣な表情で勢いよくミルクを飲む陽を見ながら、綾子の頭には優希が赤ん坊だった時のことが浮かぶ。「ねえ、陽の世話をもっとしたらどう?この時期にしかない可愛さもあるのよ」思わずため息が漏れた綾子は、何度言ったか分からない言葉をかける。しかし有美は「やってるじゃない」と、携帯から目を離さずに言った。「気が向いた時だけでしょう?それも、オムツは変えないし…」今度は有美からの返事はない。「……陽を育てる気がないなら、親権を完全に暁春さんに渡してしまったらいいんじゃない?」綾子の表情は険しくなり、声も厳し
last updateLast Updated : 2026-08-27
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