「今のところ、症状が出たのは1回だけだから、もう少し様子を見ると言っていたわ。」綾子は声をひそめて話す。時差の関係で綾子のところは夜なのか、テレビ電話に映る背後が暗い。優希が凛に母乳をあげている時、突然綾子から電話がかかってきた。もちろん優希は喜んでテレビ電話にして凛を見せたが、綾子の様子が少しおかしかったのだ。話を聞くと、綾子は有美と暁春に陽を任せておくことに、不安を感じているようだった。その内容は、有美と暁春の喧嘩や、暁春が陽に優希との繋がりを求めているなど、耳を疑うような話ばかり。しかしそれよりも気になるのは、陽のことだ。有美の出産前からどうにも気になっていた子供。どうか幸せに、と願っていた子供の家庭環境が良くないと聞き、優希の胸はざわつき、落ち着かない気持ちになった。「ただ、私はもう、あの二人の傍に陽を置いておくのは危険だと思うの。有美はそもそも陽にそれほど興味も愛情もないわ。暁春君は、父親としてはいいけれど、陽に優希との繋がりを求めているようだから、陽本人を愛している訳じゃないかもしれない。どちらにしても、有美が彼に執着しているから、暁春君の傍には置けないわ」「それなら三滝家で保護することも難しいわね…」綾子と老夫人の会話を聞いた瞬間、優希の口は反射的に動いた。「それなら、私が育てます」途端に静まる綾子たち。優希自身も驚いていた。しかし、撤回する気は起きない。もう一度「私が、陽君を育てます」と言った。「優希、あなたも凛ちゃんを産んだばかりでしょう?無茶よ!」綾子が慌てる声に、優希は頷く。「ええ。でも、陽君のことは、なんだかすごく気になるの。あの二人が大切にしないなら、私が凛と一緒に育てます」取り戻す。優希の胸には、なぜだかその思いが強く浮かんでいた。「…本気なの?」老夫人が険しい顔で聞いてきた。優希はゆっくり
Last Updated : 2026-08-28 Read more