綾は強い眼差しで言った。「今あきらめるよりは、ずっといいわ」達也もその通りだと思った。綾は、湊のために何度も手を尽くしていて、本当に大変そうだ。「あの件、本当に誠さんが関わっているのか?」「健吾がまだ調べてくれているわ」しかし、健吾がこれ以上調査を続けるわけがない。彼には関係のないことなのだから。綾のこの言葉は、凪に聞かせるためのものだった。綾は、凪が本当に湊を愛しているから戻ってきたとは思えなかった。たとえ好きという気持ちがあったとしても、それは本物ではないだろう。もし凪が湊に死ぬまで変わらない愛を誓っていたのなら、その性格からして、昔二宮家の言いなりになるはずがなかったのだ。湊は自分の魅力を買いかぶりすぎているし、凪の下心を見くびっている。湊が意識不明の間、綾は彼と親しい取締役たちを自ら訪ねて回った。しかし、会社の利益が何よりも優先される。たとえ彼らが湊の味方をしてくれたとしても、大多数の取締役たちには対抗できないだろう。綾は、和子からもらった指輪を指で回しながらしばらく考え込み、美羽に電話をかけた。「美羽さん、今お時間ありますか?よろしければ、お茶でもいかがですか」「綾ちゃんね。湊の容体はどうなの?」「うん、大丈夫ですよ」「そう、それならよかったわ」電話の向こうで少し間があった。しばらくして、美羽が再び口を開いた。「ごめんなさい、最近忙しくて。お茶はまた今度に。じゃあ、切るわね」綾はため息をつき、腕を組んで廊下を行ったり来たりした。綾にしてみれば、中野グループの社長の座なんてどうでもよかった。どのみち湊は株主だから、毎年かなりの配当金がもらえるのだ。でも、湊がその地位を大切にしていることを、綾はよく知っていた。この数年間、湊は休みなく働いてきた。すべてはグループ内での自分の立場を固めるためだった。明日の朝、取締役会が開かれれば、湊は経営陣から外されてしまう。なんとかして、別の方法を考えなければならない。綾はスマホの連絡先リストをスクロールした。すると、ある名前が目に飛び込んできた。この前のパーティーで、健吾が言っていたのを思い出した。中野グループが青菊グループとの提携に興味を示していると。青菊グループのほうが明らかに立場が上だから、協力の条件を提示することもでき
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