綾は小さく頷いた。誠は自分と湊の付き添いで来ただけだ。彼がつまらなそうにしていれば、自分が遊んでいても心から楽しめない。別荘に戻ると、綾は2階のテラスの手すりにもたれかかり、明里にビデオ通話をかけた。画面の向こうの明里は羨ましそうに溜息をつく。「明日から家族で帰省なんだよ。同世代の親戚が一人もいなくて、退屈で仕方ないんだよね」綾は笑って慰めた。「お土産を買ってきてあげるから。東都でいい子にして待ってて」口元は微笑んでいたが、綾の胸は少し切なく沈んだ。明里は綾が海辺のバカンスを楽しんでいることを羨んだ。だが、綾だって明里が親戚の元へ帰省できることが、たまらなく羨ましかった。綾にだって親戚はいる。でも、その人たちは家族と呼ぶにはあまりに他人行儀すぎたからだ。二人が楽しそうに会話している間、湊は自室のソファに身を沈め、テラスから漏れ聞こえてくる笑い声を聴きながら、眉間に深い皺を刻んでいた。昼間も一緒にいたのに、何故夜になってまた1時間も話すことがあるのか?湊には理解できなかった。1時間以上経って、ようやく綾が通話を終えた。湊はふぅと息をつくとドアを押し開け、偶然通りかかったかのような顔をしてテラスに出た。「まだ起きてたのか?」綾がスマホを揺らして答えた。「今、明里とビデオ通話してたの。聞こえなかった?」「ああ、ヘッドホンをしてたんだ」湊は自然な素振りで頭を掻いてみせた。綾が大きなあくびを漏らし、目尻に涙を浮かべる。「眠くなっちゃった。先に部屋に戻るね。湊も早く寝て」朝から慌ただしく動き、飛行機にも乗った。すでにクタクタに疲れ果てていた。湊は微笑んで、「おやすみ」と告げ、綾を見送った。綾の部屋の灯りが消えたのを見届け、湊はゆっくりと視線を戻すと、テラスの手すりに肘を乗せた。海面にきらめく銀色の月光を見つめながら、先ほど綾が言った「海辺で暮らしたい」という言葉を思い返した。二人とも親はいない。大人になったら、どこで生きても同じだ。もし本当に海辺に定住できたとしたら、それも悪くないかもしれない。だが一方で、そんなことはまだ早すぎると自制する自分もいた。綾はまだ中一だ。学校でクラスメイトから別の面白い話でも聞けば、心変わりする可能性だってある。中学生の頃の自分が、意気揚々と砂漠地域に定住す
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