湊は部屋のドアの前まで綾を見送り、優しくドアを閉めた。書斎に戻った湊は、乱れていたデスクの上を丁寧に片付け、綾が書き散らした計算用紙を一枚ずつ揃えて積み直した。ようやく綺麗になった机を眺めて、もうすぐお正月だな、と思った。そういえば、まだ綾への贈り物を何も用意していないことに気づいた。翌朝、綾が目を覚ますと、すでに湊は出かけていた。幸子から、友人と出かけたと聞いた。綾はふと、湊も一人の高校生なのだと気づかされた。湊には彼自身の生活や人間関係があるのだ。湊がいつも自分の側にいたせいで、そのことを忘れかけていた。一人で留守番をするのは退屈だったため、綾は明里を誘って、お正月の贈り物を買いに出かけた。和子には何でも揃っているので、綾は雅な雰囲気の植木を吟味して選んだ。大学生になった誠には、何が必要か分からず悩んだが、勇気を出して自分の貯金を使い、高級なスニーカーを贈ることに決めた。そして湊には、本を読むのが大好きな彼のために、手作りの陶磁器の栞を作ることにした。粘土をこねて、成形して、釉薬を塗って……納得のいくものができるまで何度もやり直した。大晦日の夜、綾は用意していたプレゼントをみんなに渡した。和子や誠は喜んでくれたが、湊だけは栞を手に持ち、くるくると回しながら毒づいた。「なんでおばあさんと兄さんにはちゃんとした物で、俺のはこんなダサい栞なの?」綾は納得できず、目を丸くして抗議した。「ダサくないでしょ!」自分の手先の器用さには自信があったのだが、陶磁器作りは初めてだった。縁は少し歪んでいるし、釉薬の色も濃淡ができてしまっている。湊は栞を真剣な面持ちで見つめて頷いた。「まるで失敗した二流品みたいだね」綾は不服そうに唇を尖らせた。「手作りなんだから仕方ないでしょ」その言葉を聞いた湊は、栞を見下ろして一度息をつくと、小さく微笑んだ。「実際、そんなに悪くないよ。よく見れば、かなり個性があっていいかもね」少し間を置いて、彼は言った。「わざわざ俺のためだけに作ってくれたの?」「そうよ!みんなの分も作ってたら、どれだけ時間があっても足りないからね」湊は目線を下げて静かに栞を読みかけの本に挟むと、代わりにずっしりと重そうな箱を取り出し、両手で綾に差し出した。「手作りじゃないけど、喜んでくれると嬉しい。
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