一方、その頃。御影山の邸宅へ向かう車中で、飛鳥のスマートフォンが震えた。電話に出ると、先ほど別れたばかりの都子からだった。「夏蓮はただでさえ心が弱っているのに、子供のことで酷くショックを受けて、さっきから何度も何度も発作を起こしているのよ!」電話越しの都子の声は、ひどくヒステリックに響いた。「いいこと、手段は問わないわ!今日中に、絶対にあの女から子供の居場所を吐かせなさい!」一方的にまくし立てる強い言葉。だが、今の飛鳥の脳裏に引っかかったのは、何度も発作を起こしているというその一点だった。同時に、昨夜、啓介から挑発的に投げつけられた言葉がフラッシュバックする。「夏蓮の鬱病の裏を取れ」頻繁に発作を起こす夏蓮。そして、あの鬱病はどこかおかしいという啓介の忠告。二つの事実が、飛鳥の脳内で不気味に交錯し始める。都子は病院へ急がなければならないらしく、言いたいことだけを言い捨てて一方的に通話を切った。やがて車は、御影山の邸宅の駐車場へと滑り込んだ。飛鳥は深く目を閉じた。すぐには車を降りず、シートに背を預けたまま、ゆっくりと煙草に火をつける。怒涛のように過ぎた長い夜が終わり、外はすでに白み始めていた。運転席から、一真が静かに飛鳥の様子を窺っている。「子供の行方は、まだ何も掴めないのか」「はい。申し訳ありません」一真が短く首を横に振る。飛鳥は細く紫煙を吐き出し、薄暗い朝もやの中に立つモクゲンジの木を見つめた。星歌は、あの木が好きだった。秋になると咲くモクゲンジの花が綺麗だと言って、よく眺めていた。ピンク色の花を咲かせるネムノキも好きだった。あの澄んだ香りがお気に入りだと言って、無邪気に笑っていた。それを知ってから、飛鳥は無意識のうちに、星歌が滞在しそうな場所には必ずモクゲンジとネムノキを植えさせるようになっていた。季節はすでに晩秋。モクゲンジの花はとっくに乾燥して殻になっているが、葉はまだ青々とした緑を保っている。子供の消息が未だに掴めないという一真の報告を聞き、飛鳥の瞳の奥が一段と暗く沈んだ。ふと、視線を煙草の火種に落とし、拉致騒動とは全く関係のない問いを口にする。「一真。お前は、夏蓮さんの鬱病についてどう思っている?」啓介が夏蓮の鬱病について忠告して
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