「痛っ……!」腕を捩じ上げたまま、男が強引に歩き出す。引きずられるようにして、あやめの体が前へと引かれた。関節にかかる負荷が一気に増し、鋭い痛みが腕を貫く。「やめて……っ!」咄嗟に足を踏ん張る。―――連れていかれるわけにはいかない。その一心で、あやめは床へと崩れ落ちるように座り込んだ。重心を落とし、抵抗する。男はそのまま引きずろうとするが、姿勢が変わったことで勢いが鈍る。廊下に敷かれた絨毯に膝が擦れ、じりじりとした痛みが走る。だが、そんなものはどうでもよかった。(ここで止まらなければ——―)だが、男たちは容赦しなかった。 「きゃああっ!」 次の瞬間、髪を鷲掴みにされる。頭皮が引き裂かれるような痛み。強引に引き上げられ、さらに強くなった痛みであやめの視界がぐらりと揺れる。「グズグズすんな!」「やめてっ!」必死に体を捻るが、すぐに背後から別の男の腕が回される。腰を拘束され、逃げ場が完全に塞がれた。知らない男の体温。触れられているという事実そのものが、生理的な嫌悪と恐怖を増幅させる。「いやあああっ! やめてっ、離してっ!」喉が震え、叫びが漏れる。だが、それはすぐに荒々しい怒声で遮られた。「くそっ、黙れっ!」直後。―――ゴッ。鈍い衝撃が頭部に走る。視界が大きく歪み、天地が反転したかのように揺れた。力が、一瞬で抜ける。膝が崩れ、体の感覚が遠のいていく。「おいおい……余計に運びにくくしてどうするんだよ」呆れたような声。ぼやけた意識の中で、それがスーツの男のものだと分かる。「すみません、暴れたもんで」殴った男の声。そのやり取りを聞きながら、あやめは理解する。この場の主導権は、あのスーツの男にある。他の男たちは従っているだけ。だから、命令に対して迷いがない。「暴れるったって、女だろ。こういうお姫様はな——―こうして運ぶのが一番だ」軽い口調。だがその言葉の裏にあるものに、ぞっとする。直後、あやめの体がふわりと浮いた。「っ……」朦朧とする意識の中で、抱え上げられたのだとあやめが理解するのに、数秒かかった。視界が揺れる。床が遠ざかる。「ほら、見ろよ。ぼんやりしてる。脳が揺れちまったなあ。お姫様にひどいことするなよ」まるで壊れかけた人形を扱うような声音。(……人形……)ぼんやりとした
Last Updated : 2026-01-31 Read more