「最近、襲撃が増えていますね」あやめの言葉に、早苗が頷いた。「系列施設に被害は?」「姐さんのご提案以降、大幅に減少しました」朱雀会が唆しているのか、最近龍神会の組員への”ちょっかい”が増えていた。一般人の被害が増えている上に、龍神会側の負傷者も増加。戦場を固定する。誘い込んで、最大戦力で叩きのめす。誘い込む先は、キングであるあやめのいる神崎邸。あやめが提案し、冬弥が実行している方針。「庭師には申しわけないですね」あやめは、庭を見ながら苦笑する。「しばらく頑張ってもらいましょう」「そうですね……しかし、特別手当が必要ではないかと」早苗に言葉に、あやめは負傷者を運ぶ車のほうを見る。「彼らは、法律上は“被雇用者”ですよね」「ええ。まあ。朱雀会傘下の企業の社員ではあります」早苗の答えに、あやめは頷く。「怪我させてしまった人、神崎の系列の病院に運びましょう。徹底的に検査し、できるだけ医療費をふんだくって、庭師の特別手当としましょう」早苗が笑う。「姐さんは、ちゃっかりしていらっしゃる」. * .夜。廊下を歩いていたあやめは、ふと足を止めた。 開け放たれた扉の向こう。「……あいつ、まだ口割らねえのか?」「歯は全部折れてる。でも、拠点を吐きやしねえ」「じゃあ、もう一発いくか」休憩中なのか、火がついた煙草を持つ彼の手には真っ赤な血がついていた。あやめは、その場を離れた。 心臓が早鐘のように打っている。だが―――怖いとは、前ほどには思わなくなっていた。それは。(私は、わがままなのだろう)これまでは、みんなのために正しくあろうとした。正しく、それは法律上なこと。法に背く者はもちろん、自分勝手な人間も社会に適合しないと軽蔑してきた。だが、そんな自分も、冬弥への思いだけで“法律”を捻じ曲げて解釈している。仕方がない。必要悪。それらの言葉は、これまでのあやめの価値観にそぐわないもの。あやめの価値観が揺れていた。暴力とは理不尽で、あやめの価値観にそぐわない、悪いもの。しかし、いまはそれを必要悪だと感じていた。力は悪いことではないと。問題は、誰がそれに向くのかと思っている。彼らの血に濡れた手も、それがあやめに向けられることはない。その確信があった。(だから……怖くない)「姐さん?」声をかけられ、顔をあげる。「どうしま
Terakhir Diperbarui : 2026-04-14 Baca selengkapnya