Todos los capítulos de 私の夫は義妹のために99回離婚を切り出した: Capítulo 371 - Capítulo 380

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371話

髙野辺と話をした、翌日。 もみじの祖父母の家に挨拶に行く事になった。 行くのは、仕事が休みの週末。 週末までの間、もみじは念のため会社を休む事に。 「じゃあ、行ってきますもみじさん」 「ええ、気をつけてくださいね。徳居さんが捕まったとはいえ……胡桃は暇を持て余していますから。何をやるか分かりません」 自分を心配するもみじに、髙野辺は頬を緩めて微笑む。 「分かりました。警戒しておきます」 「お願いします」 髙野辺の返事に安心したように微笑むもみじ。 もみじに挨拶をした髙野辺は、玄関の扉を潜り外に出た。 リビングに戻ったもみじは、自分の祖父母に週末、家に向かう事。 そして、今お付き合いをしている男性がいる事。 その彼と一緒に家に遊びに行くと連絡をした。 ◇ 週末。 もみじの祖父母の家に行く日。 祖父母の家は郊外にある。 以前は電車で向かったが、今回は髙野辺が車を運転してくれるそうだ。 手土産を持った髙野辺と一緒に車に乗り込み、もみじと髙野辺は高速に乗った。 高速を使い、都心から車で1時間半。 隣県との県境。 祖父母の家がある街は、自然豊かで空気が美味しい。 近くには大きな商業施設もあり、観光名所もある。 そのため、休日の今日は道も混んでいた。 「思ったより道が混んでいるな……」 運転席にいた髙野辺が、ぽつりと呟く。 もみじも道の混雑を見て眉を下げつつ答えた。 「そうですね……。到着予定の時間から遅れてしまうかもしれない、と伝えておきますね」 「──ええ、その方がいいかもしれません。お願いしてもいいですか?」 「もちろんです!連絡しておきますね」 頷いたもみじは、自分のスマホを取り出してメッセージを打つ。 ハンドルに手を置いたまま、髙野辺は前を見据え眉を下げた。 (途中のサービスエリア……確か最近テレビで紹介されて、ここに来る人が増えたって言ってたか……) 時間には十分余裕を持って家を出たつもりだったのだが、読みが甘かった、と髙野辺は反省した。 高速だと言うのに、速度を出せずのろのろと進む。 この場所には似つかわしくないベントレーがゆっくり進む様はとても目立っていた。 それを、サービスエリアから見ていた男が1人。 その男は、仕事の休憩にサービスエリアに立ち寄ったようだった。 男──新島 誠司
last updateÚltima actualización : 2026-08-11
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372話

◇ それから。 もみじと髙野辺は到着予定時間を少しだけ遅れて、もみじの祖父母の家に着いた。 2人が乗った車が曲がり角を曲がると、祖父母は既に外で待っていてくれた。 「──おじいちゃんに、おばあちゃん!?」 「えっ、あちらに待っていらっしゃるのが……!?」 もみじの声に、髙野辺は驚き声を上げる。 頷くもみじの顔を見た髙野辺は、急いで車を祖父母の家の前まで向かわせる。 「もみじちゃん!」 祖母が嬉しそうに車内にいるもみじに手を振り、声をかける。 祖父も嬉しそうに目元を綻ばせ、もみじに軽く頷き、そうしてから運転席の髙野辺に視線を向けた。 「──っ」 髙野辺は祖父の鋭い視線に背筋を伸ばし、目礼する。 エンジンを切り、もみじと共に髙野辺は急いで車から降りた。 「おばあちゃん、おじいちゃん!」 「久しぶりね、もみじちゃん。良く来てくれたわ!」 もみじは車から降りると一目散に祖母のもとに向かい、抱き合う。 嬉しそうにもみじと抱き合う祖母の隣に立っていた祖父も、もみじに優しい視線を向けていた。 そこに、車から降りてきた髙野辺が近づいた。 髙野辺の足音に気がついた祖父は、柔らかい笑みを消し、髙野辺に目を向けた。 「初めまして。もみじさんとお付き合いをさせていただいております。髙野辺 聖と申します」 軽く腰を折り、頭を下げる髙野辺にもみじの祖父は小さく頷いた。 「──ああ。もみじから聞いているよ。……入りなさい」 「失礼します……!」 祖父が家へ振り向き、歩き出す。 もみじと挨拶を終えた祖母が髙野辺に向き直り、にこやかに声をかけた。 「髙野辺さん、どうぞ。もみじちゃん、髙野辺さんを案内してあげて」 「はい、失礼します」 「分かったわ、おばあちゃん」 礼儀正しく挨拶をする髙野辺に、祖母は嬉しそうに目を細めて笑う。 家に入りましょう、と髙野辺に声をかけているもみじの嬉しそうな表情。 そして、もみじを愛おしそうに見つめる髙野辺。 2人の表情を見て、祖母は安心したように、嬉しそうに笑みを零した。 もみじの案内のもと、祖父母の家に入った髙野辺は、リビングに向かおうとするもみじに声をかけた。 「もみじさん。……お母様にお線香を差し上げてもいいですか?」 髙野辺の言葉に、もみじは嬉しそうに頷き「こっちです」と髙野辺の手を引いて
last updateÚltima actualización : 2026-08-12
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373話

もみじの祖父は、厳格で、寡黙で。昔ながらの「お父さん」といったイメージ。 祖母はとても明るい人で、愛情に溢れた女性。 そして、そんな2人から産まれたのがもみじの母親である。 祖父母に会って、もみじの事を知って。 髙野辺は、もみじの母親が亡くなってしまってはいるが、玖渡川 舞奈という女性がどんな性格か想像できた。 (温かい家庭だな……。きっと、もみじさんのお母様が生きていらっしゃったら……おばあ様と一緒に笑って、もみじさんを揶揄っていたかもしれない) 髙野辺は、そんな事を思う。 (──うち、とは大違いだ) 愛情のない、冷たく暗い家庭。 ふ、とそんな事を思い出した髙野辺は暗い気持ちになりかけて慌てて頭を横に振る。 せっかくもみじの祖父母の家にお邪魔しているのだ。 つまらない事を思い出して、嫌な気持ちになりたくない。 それ以降、髙野辺は祖父母との会話やもみじとの会話を楽しむ事に集中した──。 祖父母の家に着いて、どれくらいかかっただろうか。 既に2時間程は経過している。 「あら、もうこんな時間ねぇ」 時計を見て、祖母が残念そうに呟く。 1時間もすれば、日も沈む。 今日は挨拶のためにやって来たのだ。 あまり長居するのは迷惑になってしまう。 「──本日は、お時間を取っていただきありがとうございました」 髙野辺がそう言葉を発すると、祖父母も居住まいを正す。 「いえいえ、こちらこそなんのもてなしもできず。……また今度、2人で泊まりにいらっしゃい。ねえ、お父さん?」 「……ああ。髙野辺さんは、酒は飲めるのか?」 祖母から話を振られた祖父が、ふい、と目を逸らしつつ髙野辺に話しかける。 髙野辺は嬉しそうに表情を明るくすると答えた。 「──はい!」 「なら……。今度は一緒に酒でも飲もう。今度は泊まっていけばいい」 「ありがとうございます。ぜひ!」 髙野辺の返事に祖父は満足そうに頷く。 そして「そうだった」と呟くとその場を離れた。 祖父の行動に、もみじも髙野辺も不思議そうに首を捻っていると、祖母が笑いながら教えてくれた。 「ふふ、あの人ね、先日舞奈の遺品を整理していた時に、スケッチブックを見つけたらしいの。それをもみじに持って帰って欲しいみたい」 「──えっ、お母さんの!?」 「ええ、そうよ。もう全て渡していたと思った
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374話

「──うわっ!?」 誠司は驚きの声を上げ、すぐにブレーキを踏み込んだ。 ガクン、と車が大きく揺れてから停止する。 「石か何かに乗り上げたか?……勘弁しろよ、傷がついていないだろうな……?」 ぶつくさと文句を言いつつ、傷の確認のため誠司は車のドアを開け、降りた。 「何がぶつかって──……」 屈んでいた体勢を元に戻し、前方を確認する。 車に「ぶつかったもの」を確認した誠司は、ヒュッと息を呑んだ。 見る見るうちに血の気を失い、顔は真っ白になる。 ガタガタと体が震え、誠司は狼狽えたまま周囲を見回した。 ここは、都心から離れた田舎。 周辺には車もおらず、人も歩いていない。 誠司は上の方を確認した。 「──〜っ、田舎だ……この辺りに監視カメラはまだついていない……」 ごくり、と喉を鳴らした誠司は地面に倒れている「2人」に目を向けた。 その2人は、誠司も見覚えのある人達だ。 見覚え、どころか──。 「……もみじの祖父母が、どうして……っ」 祖父は、近付いて来る車から祖母を守ろうとしたのだろう。 祖母を庇い、抱きしめた体勢のまま地面に倒れている。 「お、俺は悪くない……っ、違う、俺は……轢いてなんかいない……っ」 誠司は慌てて車に乗り込むと、震える手でエンジンをかけた。 ガタガタと震えながらハンドルを握り、そのまま車を発進させる。 「違う……っ、違う……っ、俺のせいじゃない……!俺は何もやってない……!」 まるで自分に言い聞かせるように呟き続け、誠司は一目散にその場を離れた──。 ◇ 帰宅途中、車内。 もみじと髙野辺は楽しげに会話をしていた。 「もみじさん、途中サービスエリアに寄りますか?」 「ええ、そうしましょう?ずっと運転をお任せしちゃってるから……休憩しましょう」 「ありがとうございます。じゃあ、次のサービスエリアで少し休憩しましょう」 そんな話をして、少し。 車は目的のサービスエリアに到着した。 広い駐車場に車を停め、エンジンを切る。 「降りましょう、もみじさん」 髙野辺がそう声をかけてくれて、もみじは頷いた。 少し体も伸ばしたい。 もみじが車のドアに手をかけた瞬間、もみじのバッグに入っていたスマホが鳴った。 「──電話?」 電話の着信音だ。 週末に電話なんて珍しい。 そう考えつつ、もみじ
last updateÚltima actualización : 2026-08-13
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375話

◇ バタバタバタ、と忙しなく駆ける足音が聞こえる。 長い廊下をもみじと共に走る髙野辺。 2人がやって来た先は、廊下の突き当たり。 「手術中」のランプがついている部屋の前、だ。 「──おじいちゃん……っ」 もみじは悲壮感に濡れた声を上げる。 声は震え、ともすれば聴き逃してしまいそうな程小さく、掠れた声だ。 「もみじさん」 髙野辺は今にも倒れてしまいそうなもみじの肩を抱き、支えている。 もみじの顔を見た後、手術中のランプが灯る部屋を真っ直ぐ見つめる。 どうして、こんな事に──。 つい、数十分前に笑顔で。 笑って「また」と別れたのに。 「……もみじさん、おばあ様の所にも、行かないと……」 「ええ、ええ……」 こくり、と頷くもみじを支えつつ、髙野辺は何度か手術室を振り返る。 手術室にいるのは、もみじの祖父だ。 突っ込んで来た車から祖母を守るため、自分の体を盾にしたらしい。 車に轢かれ、地面に倒れてしまった際に頭を強く打った、との事だった。 祖父に庇われた祖母は、奇跡的に軽傷で済んだ。 だが、頭を打っているのは同じで、轢かれた後気を失ってしまったらしい。 祖母は別室で処置を受け、今は病室に移動しているらしい。 「歩けますか?大丈夫ですか?」 自分の事を心配してくれている髙野辺に、もみじは何度も頷く。 「す、すみません……、大丈夫、です……」 「──無理はしないでください」 「ありがとう、ございます……、すみません、急に……足に力が入らなくて……」 「当然です……お身内の方が事故に遭ったんですから」 そう話しをしつつ、髙野辺に支えられながらゆっくり廊下を歩く。 ゆっくり、時間をかけて病室に移動したからか。 もみじの動揺も、先程よりは大分ましになっていた。 「──玖渡川 ルリさん、ここですね」 髙野辺の言う通り、病室の前にはもみじの祖母の名前があった。 髙野辺は、もみじを支えているのとは逆の手で病室の扉をノックした。 扉の奥から、人の近づく足音が聞こえ、扉が開く。 「──お身内の方ですか?」 扉を開けてくれたのは、病院の看護師。 看護師の女性は、髙野辺ともみじを見るとほっと安心したような顔をした。 「お待ちしておりました。どうぞお入りください」 「ありがとうございます」 髙野辺に支えられながら、
last updateÚltima actualización : 2026-08-13
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376話

「どうして、こんな事に……」 つい数時間前まで祖父母と楽しく会話をしていたというのに。 それなのに、どうしてこんな痛々しい姿でベッドに横たわっているのか。 ぽろぽろと涙を流すもみじを、髙野辺が支えている。 その姿を見ていた看護師は、気遣うように声をかけた。 「おばあ様がお目覚めになりましたら、お呼びいたしますので、ご安心ください。どうぞおじい様の方へ……」 「そう、そう……ですね。手術中のおじいちゃんの所に行ってきます……。どうか祖母をお願いします」 涙を拭いつつそう答えるもみじに、看護師は「お任せください」と頷く。 祖母の傍には、看護師がついていてくれている。 目が覚めたら、呼んでくれる。 一先ず祖母の状態を確認できて安心したもみじは、祖父のところへ戻ろうと髙野辺に顔を向けた。 もみじの視線を受け、髙野辺も頷いてくれる。 髙野辺は看護師に顔を向け、口を開いた。 「目覚めたら、呼んでください。手術室の前にいます」 「はい、分かりました」 頷いてくれた看護師に、2人はもう一度頭を下げてからルリの病室をあとにした。 手術室に戻る道すがら、もみじは滲んだ涙を拭いつつ、やるせない感情を吐露する。 「どうして2人が……。2人はただ道路にいただけだと、そう聞きました。それなのに……どうしてこんな事になっているの……っ」 「もみじさん……」 髙野辺と、帰路についていた車の中。 サービスエリアで休憩をしようとしていたもみじのスマホに、病院から連絡があったのだ。 祖父母が、交通事故に遭った。 2人とも病院に運ばれ、処置をしている、と。 どうやら祖父母は車に轢かれたらしく、たまたま散歩をしていた近所の人に発見され、その人が通報してくれたらしい。 祖父はお財布を持っていたらしく、その中にあった身分証のお陰でどこの誰かが分かった。 そして祖父はもみじの連絡先と、孫であるもみじの写真をお財布に入れていたらしく、それでもみじに連絡をくれたらしい。 助けてくれたのは、犬の散歩をしていた近所の人。 連絡をくれたのは、病院の人。 先程警察からも連絡があり、事故の事について説明をされた。 それを思い出し、もみじは怒りで自分の体がふるふると震えた。 「──人を轢いたっていうのに、救助もせず、運転手が逃げたなんて……!絶対にその運転手を許さな
last updateÚltima actualización : 2026-08-15
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377話

コツン、と自分の靴音が静かな廊下に響く。 髙野辺は、手術室の前から少し離れた場所にある通話エリアまでやって来ていた。 通話エリアから手術室の前は良く見える。 椅子に座り、合わせた両手を祈るように額に添えているもみじを見つつ、髙野辺は電話をしていた。 呼び出し音は数コールで途切れ、すぐに相手が電話口に出た。 〈社長?どうなさいましたか?〉 聞こえてきたのは、髙野辺の秘書・蒔田の声だ。 髙野辺は硬い声で告げた。 「休みの日に、すまない。……至急、調べて欲しい事がある。頼めるか?」 〈──承知しました。どのような事を調べれば?〉 「ある場所の、監視カメラに関する情報だ。恐らく、周辺に監視カメラは無い。だが、どうしてもその周辺の映像が欲しいんだ」 〈なるほど……。道路には設置されていないのですね。それでしたら、一般家庭にはあるかもしれません。そちらをあたります。住所を教えていただいても?〉 「ああ、分かった。この後メッセージで送る。……頼む」 〈承知しました〉 通話が終わり、髙野辺は急いでメッセージで住所を送った。 通話エリアからもみじのもとに髙野辺が戻ったその時。 丁度手術室の扉が開き、そこからストレッチャーに乗せられた祖父と医師が出て来た。 医者はもみじと髙野辺に気づき「お身内の方ですか?」と声をかける。 もみじも、髙野辺も頷くと説明をするため別室に案内してくれた。 個室に移動したもみじと髙野辺に、医者が説明をしてくれた。 手術室は無事終わった事。 命に別状はないこと。 ただ、頭を強く打ち出血が多く大量に輸血を行った事。 腕と足の骨折があるため、退院はひと月以上先になる事。 それらの説明を聞いたもみじと髙野辺は、命に別状がない事を知り、胸を撫で下ろした。 「──ありがとうございます、本当に、ありがとうございます……!」 「とんでもない。今後、抜糸やリハビリなどについては、おじい様の体力が戻られてから計画しましょう」 どうぞ、病室にお戻りください。 そう優しく声をかけられ、もみじは何度も頭を下げた。 もみじの祖父は、祖母ルリと同室となった。 2人ともまだ目覚めてはいないが、危険な状態ではないことが分かり、もみじも髙野辺も安心し、2人が眠るベッドの近くにあるソファに並んで腰を下ろしていた。 その時だった。
last updateÚltima actualización : 2026-08-15
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378話

警察は髙野辺の名刺を確認し、僅かに目を見開く。 髙野辺の名刺には社名と役職──つまり、彼がTK株式会社の代表取締役だと記載されている。 髙野辺は警察に向かって話す。 「彼女の祖父母が交通事故に遭った、と聞きました。通報者は近所に住んでいる方だった、とも。……交通事故を起こした当人は……?」 状況を考えれば、大体の事は察せれる。 祖父母は轢き逃げに遭ったのだ。 髙野辺の言葉に、警察官2人は眉を下げつつ答えた。 「事故を起こした運転手は、現場から逃走しております。……我々警察も今、周辺への聞き込みや防犯カメラ映像の取得に動いております」 「ですが、現場付近はほとんど防犯カメラが設置されておらず……捜査には相当な時間がかかると思います」 警察官の言葉に、もみじは自分の胸の前で握っていた手にぎゅっと力を込め、顔を上げた。 警察官達と真っ直ぐ視線を合わせ、はっきりと告げる。 「時間がいくら掛かっても構いません。……絶対に轢き逃げ犯を捕まえてください」 「──我が社も、協力いたします。ぜひ、犯人を見つけてください」 もみじの肩を抱き寄せ、髙野辺も続けて告げる。 すると警察官は頷いた。 その後、警察官から祖父母の目が覚めたら連絡をして欲しい事。 もみじや髙野辺の連絡先を聞き、事故の手続きなどの説明をしてから帰っていった。 警察を見送り、病室内には再びもみじと髙野辺。 そして未だ眠り続ける祖父母の4人だけが残る。 もみじは髙野辺に向き直り、口を開いた。 「髙野辺さん、色々ありがとうございます。おじいちゃんとおばあちゃんが目覚めるまで、私は病院に残りますね。……髙野辺さんは、週明けから会社、ですよね?だから……」 もう、戻った方がいい。 もみじはそう言いたかったが、最後まで言葉にする事はできなかった。 正直、1人で残るのはとても寂しいし、不安だ。 だけど髙野辺はTK株式会社の社長だ。 自分とは違い、沢山の社員を抱えている大企業の社長。仕事内容も、もみじには想像も出来ないほど忙しいだろう。 心細くとも、髙野辺を家に帰さないといけない。 だが、髙野辺はここにもみじを1人残すつもりはないようだった。 「いえ、もみじさんを1人残すつもりはないです。それに……おじい様とおばあ様のご自宅近くに、防犯カメラが無いかどうか、探らせています。
last updateÚltima actualización : 2026-08-16
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379話

◇ 「違う違う違う……俺は何もやっていない……!」 ぶつぶつと呟きながら、誠司は真っ青なまま自分の家に帰ってきた。 駐車場に車を停め、急いで車から降りる。 フロント部分に回りこみ、車体を確認した。 「──ああ、くそっ!!」 フロント部分は、何かがぶつかったように大きくへこみ、血痕のような物がこびり付いているのが確認出来た。 「ちくしょうっ!!」 誠司は叫び、車を蹴ろうとしたが已の所でそれを抑える。 何度も深呼吸をし、気持ちを落ち着かせると誠司は閉じていた目を開けた。 「──まずは、証拠隠滅だ。車を処分しなくては」 誠司は震える手でスマホを取り出すと、知り合いの廃車業者の名前を呼び出す。 そして、躊躇なく電話をかけた。 数コールののち、電話が繋がった。 「──もしもしっ!俺だ、新島だ……!車を1台処分したいんだ。頼めるか?……ああ、ああ。そうだ。いくら掛かっても構わない。……出来れば引き取りにきてもらいたい。ああ。……そうか、できるか!急ぎで頼む!……わかった、明日だな?待っている。頼む」 誠司は通話を終え、スマホを耳から離した。 ほっと安堵したように息を吐き出し、誠司は歩き出した。 「──車の処分は明日。車さえ処分してしまえば、あの付近に防犯カメラは無い……。俺が轢いたとは分からないはずだ。……よし、よし、これでもう大丈夫だ……っ」 俺は捕まる事はない、とぶつぶつ自分に言い聞かせながら玄関までの階段を上がる。 そして、玄関の鍵を開けて家の中に入った誠司の耳に、パタパタと駆け足でやってくる音が聞こえた。 「誠司、お帰りなさい」 「──こ、胡桃?実家に行っていたんじゃなかったのか……!?」 ぽっこりと膨らんできたお腹を片手で押さえ、にこやかに胡桃が誠司を出迎える。 休日である今日、誠司は仕事に出ていた。 その間、胡桃は暇だからと実家に帰ると行っていたはずなのに。 誠司がそんな風に戸惑っていると、胡桃の後からもう1人──胡桃の母親、桔梗が姿を現した。 「胡桃を1人には出来ないでしょう?」 「お、お義母さん!?」 桔梗の登場に誠司がぎょっとしていると、桔梗は誠司の態度など微塵も気にせず、話し続ける。 「それに、誠司さんは仕事仕事ばかりで胡桃の体調を気にしてあげる事も出来ないでしょう?だから、胡桃が出産するまで、私
last updateÚltima actualización : 2026-08-16
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380話

気まずそうに視線を逸らす誠司を見た桔梗は、胡桃と目を合わせた後ふん、と鼻を鳴らした。 桔梗は胡桃に聞いて知っているのだ。 誠司が秘書の女と体の関係を持っている事。 そして、今まで胡桃を可愛がっていたと言うのに、胡桃が妊娠した途端、胡桃以外の女に目を向け、あまつさえ──。 (もみじなんかにも、未練があるそうじゃない!?) そもそも、桔梗にはそれが1番気に食わなかったのだ。 せっかく舞奈の娘、もみじを痛めつける事が出来たのに。 (それなのに、誠司さんがもみじに未練があるなんて……!冗談じゃないわ!あの女の娘を苦しめてやろうとしたのに……!立ち直れないくらい痛めつけてやりたいのに……!それなのに、誠司さんがもみじに未練があると分かったら……、もみじは調子に乗るわ!誠司さんはもう胡桃の男よ!舞奈と同じように、今度は私の娘が夫を手に入れたのよ!) それなのに!と桔梗は誠司を睨みつける。 (もみじだけじゃ飽き足らず、他の女にも手を出したなんて……!許せる訳がないわ。誠司さんは私がしっかり監視する) これも、全ては胡桃のためだ。 胡桃の幸せのためだ、と桔梗は狼狽える誠司をその場に残し、胡桃と一緒にリビングに戻っていった。 翌朝。 誠司が寝室から出てくると、リビングには食欲を誘う良い匂いが漂っていた。 「──もみじ?」 寝起きでまだ上手く働いていない頭で、誠司はぼそりと呟いた。 こんな風に、朝食の香りがリビングに漂っているなんて、もみじが出て行ったあと、1度も無かった。 もしかしたら、もみじが戻ってきてくれたのでは──。 そんな考えが頭に過り、誠司はキッチンに顔を向けた。 そこで、視界に入った光景に「しまった」と自分の失言を自覚した。 「あら、誠司さんおはよう。今、なんて言ったのかしら?」 「──いえ、お義母さん。何も……」 キッチンに立っていたのは、義母の桔梗だ。 桔梗は昨夜、この家に泊まったのだ。 誠司は気まずさから桔梗から目を逸らし、テーブルに腰を下ろした。 桔梗はふん、と鼻を鳴らしてからキッチンに振り返る。 テーブルに座っている誠司は、桔梗が食事の支度をしていると言うのに手伝いにくる気配も見えない。 それどころか、桔梗に向かって「コーヒーをお願いします」と偉そうな態度でふんぞり返っているのだ。 誠司はタブレットで新
last updateÚltima actualización : 2026-08-17
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