Todos los capítulos de 私の夫は義妹のために99回離婚を切り出した: Capítulo 391 - Capítulo 400

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391話

もみじがルリの荷物を静かに片付けていると、ルリの部屋からそーっと出て来た髙野辺がもみじに気が付き、近付いてくる。 そして、声を潜めてもみじに告げた。 「おばあ様、疲れていたようで今眠りました」 「本当ですか?朝ごはんを作ろうかと思っていたけど……それじゃあおばあちゃんの分は大丈夫そうですね」 声を潜めた髙野辺に合わせ、もみじもひそひそと話す。 そのため、必然的に2人の距離は近くなっており、髙野辺は身をかがめてもみじの顔のすぐ近くに自分の顔を寄せていた。 普段、身長の高い髙野辺とこんなに顔が近づく事は殆どない。 そのため、ぱちり、と目が合ったもみじと髙野辺はあまりの距離の近さにお互いぶわっと顔を赤くした。 ぱっ、と髙野辺がすぐにもみじから離れ、もみじも半歩髙野辺から距離を取ると、誤魔化すように続ける。 「そ、それじゃあ私と髙野辺さんのご飯を軽く作りましょうか……っ、おばあちゃんが起きた時に食べられるように、軽食も作っておきます……っ」 「そ、そうですね、俺も手伝います……!」 もみじと髙野辺、2人は多少ぎくしゃくしながらキッチンに向かった。 食事を作り始めた最初の頃は、どこか気恥しさが2人の間に漂っていた。 だが、2人で料理をしているうちにそんな空気はどこかに行き、今は2人で世間話をしつつ料理をしていた。 ふと会話が途切れた瞬間、思い出したように髙野辺がもみじに告げる。 「──そうだ、もみじさん。病院に着いた時、蒔田秘書から電話があったんです」 「あっ、あの時のですか?」 ええ、と髙野辺は頷く。 ルリを迎えに行った時。髙野辺は電話の対応をするから、ともみじが先に病室に行ったのだ。 その時、蒔田秘書から何を報告されたのだろう、ともみじが首を傾げると、髙野辺が教えてくれた。 「──都内で1件、車の引き取りがあったそうです」 「え……っ」 「引き取りをした車は、恐らくこのまま廃車にされるでしょう。……このタイミングで車を引き取らせるなんて、どうにも怪しい」 「……まさか、その車の持ち主が轢き逃げ犯ですか……?」 「まだ、確実にそうだとは言えませんが……恐らくそうだと思います」 その業者を調べるのに妨害があった事も、恐らく轢き逃げ犯がある程度地位のある人間だと言う事も、髙野辺はもみじに伝えなかった。 「──この件は、俺に
last updateÚltima actualización : 2026-08-24
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392話

「では、俺は蒔田秘書と少し外に行ってきます。必要な物があれば、俺に連絡をください。帰りに買ってきます」 「わかりました、気をつけてくださいね」 「はい。また、後で」 朝食を食べた後。 髙野辺は、蒔田と連絡を取り、この周辺を一緒に回ってくると言った。 もみじも一緒に動こうとしたが、ルリの傍にいてあげてください、と言われてしまえば頷く他ない。 玄関先で髙野辺を見送ったもみじは、家の中に戻ってこれからどうしようかな、と虚空を見上げた。 朝食の片付けは、髙野辺も一緒にやってくれたから洗い物は残っていない。 ルリも、今はまだ疲れて眠ったまま。 仕事をしよう、という気持ちにもなれずもみじは広間に戻り、座椅子に腰を落ち着けた。 テレビのリモコンを手に取り、操作する。 情報番組をつけて、何も考えずぼうっと見ているとある事を思い出した。 「──あっ!」 そうだった、ともみじは急いで立ち上がり、自分の鞄の方へ駆け寄る。 ずっとバタバタしていてすっかり頭から抜けてしまっていたのだ。 「そう言えば、帰る前におじいちゃんが……!」 自分の母・舞奈のスケッチブックを何冊か渡してくれたのをもみじは思い出したのだ。 鞄を開け、中から数冊のスケッチブックを見つけたもみじは、それを取り出した。 「あったわ……!お母さん、の……」 母のスケッチブック。 もみじはそれをぎゅっと胸に抱きしめると、再び元の場所に戻る。 スケッチブックの表紙は色褪せてしまっているが、大切に保管、手入れをしてくれていたのだろう。 中を確認しても、色褪せや紙の焼けはあれど、破れていたり汚れているような場所は一箇所も無かった。 そして、もみじはスケッチブックに書かれている母・舞奈のデザインを見て目を見開いた。 「──凄い」 ただただ、その一言しか言葉に出来ない。 Seaと呼ばれる、世界的なデザイナーになったもみじからしても、舞奈のデザインはとても素晴らしいものだ。 流行り廃りがある昨今でも、舞奈がデザインしたものはその流行り廃りに左右されず、とても素晴らしいものだった。 「こんな風に、デザインするのね……。これは……お母さんはどう着想を得たの……?」 もみじはスケッチブックを手でなぞり、夢中になって舞奈のデザインを見つめる。 決して、自分では思いつかないような大胆なデザ
last updateÚltima actualización : 2026-08-24
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393話

ざらり、としたスケッチブックをなぞるもみじの手は震えていた。 もみじが撫でたその下には、1人の男性と1人の赤ちゃんが描かれている。 赤ちゃんを抱っこして、幸せそうに微笑んでいる男性。 その男性は今より若く見えるが、間違いなく父親の忠だ、ともみじには分かった。 「お父さんって、こんな風に優しく笑うんだ……」 ぽつり、ともみじの声が落ちる。 もみじが物心ついた頃。 その時には既に母親は亡くなっていて、父親の忠はもみじに冷たく当たるようになっていた。 笑顔は見た事あるが、忠の笑顔は自分に向けられたものではない。 いつも胡桃に向けられていた忠の笑顔の横顔を、もみじは見ていた。 いつか自分にもあの笑顔を見せてくれるのではないか。 いつか自分にも笑顔を向けてくれるのではないか、と期待しては、何度もその期待を砕かれてきた。 だからもみじはいつからか父親に期待しなくなった。 笑顔を向けられる事も。 会話をする事も。 自分を娘だ、と思ってもらう事も。 何もかも。 だからこそ、赤ちゃんだった自分をこんなに愛おしそうに抱き、幸せそうに微笑んでいるなど、想像も出来なかった。 「……お母さんと、お父さんの間に何があったんだろう……」 スケッチブックの表紙には「宝物」と書かれている。 もみじは、そのスケッチブックをゆっくり捲って行く。 静かな部屋に、パラパラと紙が捲られる音だけが響く。 赤ちゃんの自分が笑っている絵。 父親の楽しそうな姿。 もみじを抱き、海に立っている父親の後ろ姿──。 そのスケッチブックには、確かに幸せな「家族」の思い出が残っていた。 最後まで目を通したもみじは、静かにスケッチブックを閉じる。 「──幸せな家族、だったんだ……」 そんな記憶、もみじには一切残っていない。 忠から向けられる視線はいつも冷たく、まるで自分なんてそこにはいないような「無」を見つめるような目だった。 話す機会があるとしても、それはいつも胡桃のためを思い、もみじを叱責する時だけ。 胡桃の「姉」なのだから、といつも我慢を強いられていたのだ。 なんで──。 どうして──。 もみじの頭の中がそんな言葉でいっぱいになった時。 「──もみじさん?」 障子を開け、髙野辺の低い声が耳に届く。 長い時間スケッチブックを見ていて、大分時間が経っ
last updateÚltima actualización : 2026-08-25
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394話

「ど、どうしたんですか!?何が……っ」 ドッドッド、と髙野辺の心臓が物凄い速さで脈打っているのが伝わってくる。 もみじは抱きしめてくれる髙野辺の背に自分の腕を回し、ぎゅうと抱きついた。 「一体何が……ああ、くそっ。傍を離れてすみません。おじい様とおばあ様が事故に遭って、辛い時にもみじさんの傍にいないなんて……っ」 自分を責める髙野辺に、もみじは彼の胸に顔を埋めながら首をぶんぶんと横に振った。 声を出してしまえば、しゃくり上げてしまいそうで。 もみじは必死に落ち着こうと、感情を鎮めようとしたが上手くいかない。 このままでは、優しい髙野辺が気にしてしまう。 そう思ったもみじは、自分が持っていたスケッチブックを、髙野辺に見えるように持ち上げた。 「──ちがっ、違う、んです……っ、ごめんなさ……っ、これを見て……っ、思い出して……っ、泣いてっ」 辛そうに、苦しそうに言葉を紡ぐもみじ。 そんなもみじの背を手で撫でながら、髙野辺はもみじが手に持っているスケッチブックに目を向けた。 「──スケッチブック?」 「……母の、遺品……っ、です……っ」 「お母様の……!?」 もみじの言葉に、髙野辺が目を見開く。 そして言葉を続けた。 「そうか……確か、帰る前におじい様がもみじさんに渡していましたね。……俺が中を見ても大丈夫ですか?」 優しくもみじに話しかける髙野辺に、もみじはこくりと頷いた。 もみじからスケッチブックを受け取った髙野辺は、片手でもみじを抱きしめたまま、そしてもう片方の手でスケッチブックを開き、中を確認した。 「──これは……」 髙野辺の目が、驚きで見開かれた。 「この男性……もしかして……」 髙野辺にも、見覚えがあったのだろう。 スケッチブックに描かれている男性は今より若い。 だが、確かに面影が残っている。 もみじはこくり、と頷き口を開いた。 「──はい。お父さん、です……」 もみじの言葉に、髙野辺は信じられないというようにスケッチブックに描かれている男性を見つめる。 今のもみじの父親とは似ても似つかないほど優しい表情で、腕の中にいる赤ん坊を抱いていた。 恐らく、もみじの母親がそんな2人の姿を離れた場所から描いていたのだろう。 背景は海。 晴れた青空に、青い海が背景。 その前に立つ父親の優しく、幸せそう
last updateÚltima actualización : 2026-08-25
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395話

◇ 会社内の廊下に、靴音が響く。 「──社長、社長!」 後ろから話しかけられ、社長と呼ばれた男──胡桃の父親、嶋久志 忠は振り向いた。 「何だ、そんなに慌てて。何があった?」 忠が振り向いた先には、自分の秘書がいる。 その秘書は戸惑うように瞳を揺らし、忠に向き直った。 「──その、奥様がいらっしゃっています」 「妻が……?」 秘書の言葉に、忠の眉間に皺が寄る。 「妻はどこに?」 「社長室にお通ししております」 「分かった。暫く誰も近づけるな」 「承知いたしました」 頭を下げる秘書をそのままに、忠は足早に廊下を歩く。 目指すは桔梗が待っていると言う、社長室だ。 社長室に着くなり、忠は扉を開けて中に入る。 そこには秘書に説明された通り、桔梗の姿があった。 桔梗は座っていたソファーから立ち上がり「あなた!」と叫ぶ。 「どうしてここに来た?暫く胡桃の家に居ると言っただろう?娘の世話はどうしたんだ?胡桃は今1人なのか?」 矢継ぎ早に忠が質問すると、桔梗は青白い顔で忠に駆け寄った。 その様子に、忠の眉間に更に皺が寄る。 「あなた……!胡桃がメールを送ったけど、まだ見ていないの?」 「会議があってまだ確認していない。……まさか胡桃に何かあったのか!?」 途端に、心配そうな顔に変わる忠。 桔梗は首を横に振り、忠の腕に自分の手をそっと添えた。 「胡桃は大丈夫よ、体調も問題無い。……だけど、ちょっと厄介な問題が発生したのよ……」 「厄介な……?どう言う事だ?」 「……胡桃からの連絡を見てちょうだい。話はそれからよ」 桔梗の言葉に、忠は訝しげにしながらスマホを取り出し、胡桃からの連絡を確認したのだった──。 --- 「あの、馬鹿男……!!」 胡桃のメールを確認した忠が開口一番、口にしたのは誠司への怒りだ。 忠は乱雑に自分の髪の毛をぐしゃぐしゃと掻き乱し、舌を打つ。 「胡桃も、腹の子もいると言うのに、あの馬鹿……!何をしている!?」 「あ、あなた……落ち着いて……っ」 「これが落ち着いていられるか!娘婿が……!娘の夫が、交通事故を起こしたんだぞ!?」 「ま、まだ確定した訳じゃあ……!」 「確実に人を轢いている!そうでなければ、自分の車を廃車になどしない……!証拠隠滅をしようとしていると言う事は、人を轢いて逃げた
last updateÚltima actualización : 2026-08-26
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396話

◇ 一方、祖父母の家──。 とんとん、と自分の背中を叩いてくれていた髙野辺の腕の中から、もみじはもぞり、と体を動かした。 「すみません……、もう大丈夫です、髙野辺さん」 「本当ですか?もう大丈夫?」 心配そうに顔を覗き込んでくる髙野辺に、もみじは微笑みつつ頷いた。 「恥ずかしい所をお見せして、すみません……」 「そんな事──」 ないですよ。 髙野辺がそう言おうとした時。 祖母ルリが寝ている部屋の方向から「もみじちゃん?」ともみじを呼ぶ不安そうなルリの声が聞こえた。 もみじはすぐに涙を拭うと、髙野辺の腕の中から抜け出し、立ち上がった。 「今からそっちに行くね、おばあちゃん」 少し大きな声でもみじは答える。 「すみません、髙野辺さん。おばあちゃんの所に行きますね」 そう告げるもみじに、髙野辺もその場に立ち上がる。 「俺も一緒に行きます」 「──ありがとうございます、髙野辺さん」 髙野辺はもみじの手を取り、2人でルリの部屋に向かって歩き出した。 「おばあちゃん、起きた?」 「体調はどうですか?」 ルリの部屋にやって来たもみじと髙野辺。 2人の姿を見たルリはほっと安心したように表情を和らげた。 「ああ、2人とも。良かった、居たのね……」 「うん。おばあちゃんの家に居るから、安心して。傍に居るよ」 あんな事があった直後だ。 気丈に振舞っていても、やはり不安や恐怖は拭えなかったのだろう。 もみじはすぐにルリの傍に膝を着くと、冷たいルリの手を自分の両手で優しく握った。 その時、もみじが自分の体の横に置いたスケッチブックにルリは気がついた。 「もみじちゃん、舞奈のスケッチブックを見ていたの?」 ルリがそう口にすると、もみじはスケッチブックを手にし、パラパラとスケッチブックを開く。 「うん。帰る時におじいちゃんから渡してもらったでしょう?お母さんが昔デザインした物が、沢山あったわ」 「そうだったのね……舞奈のデザイン……」 「もしかしておばあちゃん……スケッチブックの中身を見ていないの?」 「ええ……。舞奈の遺品だし、1番最初にもみじちゃんに見てもらおうって、あの人とも話していたのよ。……そうだったのね、あの子のデザインが」 ルリが寂しそうに目を細める。 そんな祖母を見て、胸が切なく痛んだもみじは、1冊を手に
last updateÚltima actualización : 2026-08-27
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397話

ルリの言葉に、もみじは驚きに目を見開いた。 「家族、旅行……?そんな事、したの……?」 「もみじちゃんはまだ赤ちゃんだったからね……覚えていないのも無理は無いわ。……だけど、この後も確か舞奈と忠さん、もみじちゃんの3人で何度か旅行に行っていると聞いた事はあるわ」 ルリはそこまで言うと、そうだ、少し待ってて。と言い、部屋の棚をガサゴソと探す。 「──あったあった。これ、旅先から出してくれた葉書とか、手紙よ」 そう言ったルリが手にしていたのは、何通もの手紙と、何枚もの葉書。 大事に保管していたのだろう。 お菓子の缶の中に保管していたそれを取り出して、もみじに渡してくれた。 唖然としつつ、もみじはそれを受け取る。 ルリの言う通り、確かに手紙や葉書は沢山あった。 「──赤ちゃんのもみじさんもいれば……幼少期のもみじさんもいますね」 横で一緒に見ていた髙野辺が愛おしそうに目を細めつつ優しい声音で呟く。 髙野辺の言う通り、葉書には家族3人で撮った写真が印刷されていた。 そこに映る3人は、どこからどう見ても幸せそうな家族で。 2歳か3歳ほどだろうか。 それくらいの年齢のもみじも、楽しそうに小さな手でピースをして写真に写っている。 「……私、全然覚えていなかった……」 母、舞奈が病に倒れた幼少期。 あの頃の記憶は、はっきり言って曖昧だ。 写真に写っている自分達も、どこか他人のようで。 だが、そこに写っている舞奈も、忠も、そして忠に抱かれている小さなもみじも、満面の笑みで写真に写っている。 渡された手紙を開けて、中を確認してみれば。 それは、母親が書いた手紙だった。 舞奈の直筆で、旅行の事。忠やもみじの事。 そして、自分の両親である祖父母へのお土産やいつ帰宅するなど、舞奈の言葉で、沢山文章が綴られていた。 「……こんな、幸せそうな家族だったんだ……」 「もみじちゃん……」 もみじは、掠れた声で呟く。 表情もどこか暗く、切ない。 こんな幸せな記憶、もみじには残っていない。 もみじが覚えているのは、母舞奈が亡くなった時。 冷たい態度と目で、自分を見下ろす父親の表情。 そして、自分を祖父母に預け、どこかに行ってしまう父親の後ろ姿。 もみじがどれだけ泣き叫ぼうとも、決してあの背中は振り返らなかった。 「──どうして、お父
last updateÚltima actualización : 2026-08-28
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398話

◇ あれから。 時間はあっという間に過ぎ、夜になってしまった。 ルリと一緒に夕食を摂り、食休みをした後、ルリはお風呂に入って自分の部屋に下がった。 もみじが先にお風呂に入り、今は広間でまったりと過ごしていた。 そうしていると、廊下を歩いてくる髙野辺の足音が聞こえてきた。 「もみじさん、お風呂お借りしました」 「髙野辺さん……!いえ、とんでもないです。しっかり温まりました?」 「ええ」 こくりと頷く髙野辺の髪の毛からは、まだ雫が垂れてきている。 もみじは座布団から立ち上がり、笑いながら髙野辺に近づいた。 「髪の毛、まだ濡れています。ちゃんと乾かさないと、風邪をひいちゃいますよ」 「──っ、ありがとうございます」 髙野辺が肩に掛けていたタオルを手に取り、髙野辺の髪の毛を軽く拭う。 もみじの行動を察してくれたのだろう。 髙野辺は少し身を屈めて、もみじが拭きやすくしてくれる。 シャカシャカ、と髙野辺の髪の毛を拭き、ある程度水分を取った後、2人はどちらからともなく手を繋ぎ、座った。 座布団に腰を落ち着けた髙野辺は、肩からタオルを下ろし、もみじに話しかける。 「……今日は、色々な事が分かりましたね」 髙野辺の低く、落ち着いた声。 その声に、もみじはこくりと頷いた。 「──ええ、そうですね。……母と、父の関係も新しく分かりました。あの二人の間に、何があったのか……それが凄く気になります」 「そうですね。もみじさんが調べたいと言うなら……俺も協力します」 「ありがとうございます、髙野辺さん。……髙野辺さんには、いつも助けていただいて……」 「それは当然です。その……もみじさんは、俺の大切な人ですから……」 照れたように頬を赤くし、もみじから顔を逸らす髙野辺。 そんな髙野辺を見て、もみじは自分の胸が高鳴るのを感じた。 隣に座っている髙野辺に、もみじはそっと自分の体を寄せた。 「ありがとうございます。……おじいちゃんとおばあちゃんの事故の事も……髙野辺さんには凄く助けていただいて……」 どうお礼をしたら──。 もみじがそう口にしようとした時。 髙野辺がハッとしたように目を見開き、慌ててもみじを自分の体から離した。 「──そうだ!そうだった、もみじさん!交通事故の件で、もみじさんに話したい事があったんです!」 自分の肩
last updateÚltima actualización : 2026-08-28
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399話

パソコンにUSBを差し込む。 髙野辺がパソコンを操作すると、画面にパッと映像が映った。 映ったのは、その家の庭だろう。 だが、庭の向こうにちらりと道路が映っている。 その場所を指差し、髙野辺が告げた。 「映っている範囲は少ないため、もしかしたら有力情報は無いかもしれませんが……」 「じゅ、十分です……!ありがとうございます髙野辺さん!」 もみじが嬉しそうに笑うと、髙野辺もほっとしたように表情を綻ばせた。 そして、画面を見るために2人は自然と寄り添った。 「確か……俺たちが帰ったのは夕方……」 「ええ、この時間帯、ですね」 映像を早送りし、真剣に画面を凝視する。 すると、もみじと髙野辺が祖父母宅を後にした後、数十分後。 映像にある車が猛スピードで通過するのが確認出来た。 「──今っ!」 「車が通り過ぎました!!」 もみじと髙野辺、同時に声を上げる。 2人は顔を見合わせると、髙野辺はすぐにパソコンを操作した。 「スローで再生します……!」 「分かりました!」 例の車が通り過ぎる少し前に戻し、再度映像を再生する。 少しして、先程よりゆっくり車が通り過ぎた。 だが、車は画面の左上に僅かに映っているだけ。 あまりにも小さく、どんな車が通り過ぎたのか確認出来ない。 「……この部分を拡大します」 髙野辺ももみじと同じ事を思ったのだろう。 再度パソコンを操作し、左上の部分を拡大表示して再度再生を押した。 そして、固唾を飲んで見守る2人の目の前で、例の車が通る。 「──白っぽい?いえ、シルバー……?」 「どっちかと言えば、シルバーっぽい、ですね……?」 「速度をもう少し落として再生しますね」 髙野辺が再びパソコンを操作してくれる。 先程よりもゆっくりと車が道路を通過する。 車の色は、恐らくシルバー。 何度も、何度もその車が走り去る映像を見ていると、ふともみじの頭に引っかかる物があった。 「──何だか……」 ぽつり、ともみじが呟く。 もみじの声を拾った髙野辺は、1度再生を止めてもみじに向き直った。 「どうしましたか?何か気づいた事でもありましたか?」 髙野辺の優しい声。 その声に引き寄せられるように、もみじは髙野辺の顔を見た。 「……あの、何だか」 そこで言葉を切り、もみじはちらりと画面を見やる。
last updateÚltima actualización : 2026-08-30
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400話

「──それは本当ですか!?」 もみじの言葉に、今度は髙野辺が大きな声を上げる。 髙野辺の問いにもみじはこくこくと頷いた。 「間違いありません。あの特徴的なフォルム……それに、この場所に……」 そう話しながら、もみじは再び映像を再生し、車が現れた瞬間に停止した。 そして、車の後部──トランク部分をひたり、と指差す。 「黒っぽく何かが映っているでしょう?新島社長が乗っていた車にも同じ場所にステッカーが貼ってあったんです」 「──!そのステッカーがどんな物だったか、覚えていますか?」 「ええ、もちろんです」 髙野辺の言葉に、もみじは力強く頷いた。 「あのステッカーは、世界に1つだけしかありません。……あれは、新島社長がSeaとの契約を初めて締結した際にSeaが特別に書き下ろしたデザインです」 「──!」 「以前、新島社長がSeaに許可取りを。貰ったデザインをステッカーにして愛車に貼りたい、と言われたんです。……その当時はまだ新島社長に愛情がありましたし、その内自分がSeaだと告げようと思っていたから、快く許可しました。……新島社長は、その後本当にSeaのデザインをステッカーにして、車のトランク部分に貼りました」 そして、そのステッカーは複製しておらず、本当に1枚だけしか作っていないともみじは続けた。 「あのステッカーを、新島社長は本気で大事にしていました。……だから、この車にSeaのステッカーが貼ってあれば……」 そこまで話したもみじは、髙野辺に顔を向ける。 髙野辺はこくりと頷き、もみじの言葉に続けるように口を開いた。 「ええ。……彼が犯人だと言う確かな証拠になります」 その言葉に、もみじの瞳に期待の光が宿る。 だが、すぐにはっとして自分の口を手で覆った。 「──だけど!車の引き取りがあったんですよね……!?」 「──そうだ、そうだった……!急いで業者を特定し、車を確認しないと……」 「廃車にされてしまいます……っ!そうしたら……」 「証拠が無くなる……!」 2人は真っ青になって顔を見合わせた──。 ◇ 一方その頃、誠司と言えば。 「──しまった……!あの車にはSeaから貰った大事な……っ!」 会社の社長室で、誠司はハッとしたように叫ぶ。 「社長……?どうされましたか?」 近くにいた秘書の中野がびっくりしたよ
last updateÚltima actualización : 2026-09-03
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