Todos os capítulos de 間違い人生のトリガーを破壊して新しい人生を謳歌します!: Capítulo 31 - Capítulo 40

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第31話

「そうです。カリン・フカサワとの二人展ですね。この画家のことご存じなんですか。」「もちろん知っているよ。僕はファンなんだ。1枚でいいから本物が欲しいんだけど中々売りに出ないんだよね。」「それなら今回の作品展の後、数点売りに出すそうなのでよろしければご検討ください。」「マジで?どの作品が出るの?」「そこまではわかりません。」「そっかぁ。もっと詳しいことがわかったら教えて。父にも伝えておくよ。病院に飾れるようなのが欲しいって言っていたからね。」「そうなんですね。では、何かわかったらお伝えしますね。」「ああ、よろしく頼む。」凛華は勇真と約束して二人と別れた。颯生達と食事をした日の翌日、凛華はもう一つの実習先の画廊を訪ねた。「おはようございます。今日から実習でお世話になります。若桜凛華です。」「おはよう。ごめんなさいね、受け入れが遅くなってしまって。ようやく落ち着いたからもう大丈夫よ。私はこの画廊のオーナーのカーリンよ。よろしくね。」学園の近くの、商業施設が並ぶ大通りを一つ奥に入ったやや落ち着いた通りに面してその店はあった。店と言うより、ドアの上にお洒落な看板が飾られた事務所のような構えの入り口だった。しかし、中に入って見ると広々とした縦長のホールになっていて、その壁面に沿って充分な間隔をおいて作品が飾られている。ホールの中央は簡易なベンチが配置され、さながら小さな美術館である。出迎えてくれた女性は40代くらいで、ややふっくらとした体型の穏やかで上品な人だった。「作品は後でゆっくり鑑賞させてあげるから、まずは奥でこれからの話をしましょう。」「はい、お願いします。」ホールを奥の方に歩いて行くと、一段高い所に応接セットがあった。そこだけはアンティークな家具と落ち着いた照明、ベージュを基調としたお洒落な壁紙…、と邸宅の居間のような穏やかな空間になっていた。思わずキョロキョロしてしまった凛華を微笑みながら見ていた女性は、「気に入っていただけたかしら。ここはお客様に寛いでいただいたり簡単な商談をする為の場所よ。」「はい、とても素敵です。こんな所に飾っていただけたら作品も幸せですね。」「あなたの作品で合いそうなのはあるかしら。」「そうですねぇ、去年描いた花の絵か、この間仕上がった森の絵とかいいかもしれません。…あっ…。」つい、つられて答え
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第32話

芙美華は、「ボディーガードって何か仰々しいじゃない?あまり目立つのは良くないと思ったのよ。かと言って運転手さんだと移動のお世話だけになってしまうでしょ。それはそれで心配だから、ね?」と言って譲らなかった。仕方ないので凛華も従うことにした。その日の朝も、凛華はシッターさんと待ち合わせ場所である門の方に向かって歩いていた。すると、後ろから追いかけてきた女生徒に呼び止められた。「凛華、待って!」聞き覚えのない声だったが名前を呼ばれたので振り返ると、いつだったか颯生達と一緒にいた女生徒が急ぎ足で追いかけてきた。なぜ自分が呼び止められたのか分からず、ただ立ち止まっていると、追いついた彼女が話しかけてきた。「おはよう、凛華。今日の実習はどこ?」なぜそれを知っているのか。それを聞いてどうすると言うのか。戸惑いで返事も出来ずに突っ立っていると、「 私のこと忘れちゃった?この間颯生と勇真と一緒にいた フレイヤよ。私の叔父はね、颯生のお父様と友人だったの。あなたのお母様も知り合いなのよ。だから一度会いたいって。今日の実習が終わる頃に迎えに行くわ。一緒に夕食を食べに行きましょう。」「颯生さん達も一緒ですか?」「ええ、叔父と私と颯生と勇真とあなた。」「は……。いえ、急に言われても困ります。後日ではダメですか。」凛華は母は、と言いかけてやめた。まだ相手を信用してもいいのかわからない。「叔父は忙しい人なの。しょっちゅうあちこちに出張で出かけてしまうのよ。今日時間があるから誘って来てくれって頼まれたのよ。」「そうなんですね。でも、私は今日は予定もありますし、次の機会に……。」「そんなこと言わないで、ただ一緒に食事をするだけよ。帰りはちゃんと寮まで送ってあげるから。ねっ、いいでしょ。今日は美術館?画廊?」「美術館です。」凛華は勢いに負けてつい、答えてしまった。「わかったわ。じゃ、終わる頃に美術館の門の辺りに迎えに行くわ。引き留めてごめんなさい。行ってらっしゃい。」彼女はほぼ一方的に約束を取り付けて去って行った。どうしよう。今更断るにも連絡先を知らない。颯生さんたちは本当に行くのだろうか。困惑しながら門まで行くと、シッターさんの姿が見えてきた。今日はエリックらしい。「おはよう、凛華。何かあったの?」不安そうな凛華の様子を見た彼が尋ねた。「うん
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第33話

実習時間が終わり凛華は二つメールを送ると、スタッフ用の出口から出て通用門に向かった。門の外にはごく普通のセダンタイプの車が止まっていた。運転手の男が凛華の姿を見て降りてくると、面倒そうに声をかけた。「君が若桜凛華か?」「はい、そうです。」「ロックスマン家の人から迎えに行くように頼まれた者だ。送って行くから車に乗って。」履き古したズボンによれよれのポロシャツというだらしない服装で、気怠げに話す男に不安を感じた凛華は、「あの、行き先はどこですか。」と聞いてみると、「着いたらわかるよ。さっさと乗りな。」としか言わない。ますます不安になって一歩後ずさると、「さっさと乗れよ。相手が待ってるんだよ!」と言って強引に後部座席に乗せて、すぐに自分も乗りドアにロックを掛けて走り出した。ますます不安になってきた凛華は、更に尋ねてみた。「さっきロックスマン家の人に頼まれたって言ってましたけど、その人の名前って、なんですか。」「自分を呼んだ相手も知らないのか。子供は不用心だねぇ。知らなきゃ会って自分で聞けばいいだろう。黙って乗ってろ。」それきり男は黙って運転に集中していた。外の景色を見ていると、学園のある街へ向かうのとは違う道を進んで行く。『やっぱりダメなやつだったか。』凛華は自分の好奇心を反省した。朝の慌ただしい招待や、迎えの男の不審さを見たあたりで怪しいとは思った。でも、もしかしたら父に会えるかもしれないと思うと断ることができなかった。ロックスマンは父の家の名だ。何が目的かは分からないが、子供相手にそんなに手荒なことはしないだろうと楽観的に思っていた自分を、更に反省する事態となっていった。その日、颯生と勇真は午前中の講義を終えて食堂で昼食を摂っていた。いつものことだが大柄の男二人で二人用のテーブルは窮屈だ。かと言って四人用のテーブルに座ると必ずと言っていい程女子学生が同席を申し込んでくる。今日は二人だけでの話があるので仕方なく2人用の席についていた。「今夜本当に行くのか?」勇真の問いかけに、「凛ちゃんも誘われているらしい。一人では行かせられない。」「相変わらず過保護だな。」「彼女はまだ幼い。周りの見守りが必要だ。俺は兄として当然の事をしているだけだ。お前は気が進まないなら俺だけでも行く。」「行かないとは言っていない。僕だって君の
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第34話

「いらっしゃいませ。ロックスマン様がお待ちです。ご案内致します。」彼らは既に着いているらしい。案内人に付いて個室に向かった。案内人は奥の方の部屋の扉の前に着くとノックをした。その音にフレイヤの声が答えた。「はい、どうぞ。」凛華を乗せた車は街の外れのホテルの前に止まった。運転手の男が降りてきて、凛華に声をかけた。「さっさと降りてくれ。中で案内の者が持っている。」まだ微かな期待が捨てきれずに凛華は車から降りて中に入って行った。 エントランスを入るとすぐに狭いロビーとフロントがあった。ロビーのソファーに座っていた男が凛華たちに気づいてすぐに立ち上がった。その男は運転手の男と違いきちんとしたスーツを身に付けた40代位の男で、にこにこと愛想よくしながら近づいてきた。「やあ、お待ちしていましたよ。若桜凛華さんですね。主が上の部屋で待っています。ご案内します。」と言って凛華をエレベーターの方に促した。運転手の男は、待っていた男から報酬を受け取るとお役御免とばかりにさっさと帰って行った。凛華は、不安になり一応聞いてみた。「あの、東雲さんと来栖さんはもう到着していますか。」男は表情を崩すことなく、「行けばわかりますよ。」と澄まして言うと、更に先に進んで行った。男はホテルの最上階にあるレストランに入ると、受付に軽く頷きそのまま奥へと入って行く。凛華は、『一応、レストランなんだ。個室に連れて行かれなくて助かった?』などと考えながら後を付いて行った。幾つかの部屋を通り過ぎ、一番奥の部屋のドアの前で止まった男は、軽くノックをした後声をかけた。「失礼いたします。若桜様がお着きになられました。」「入れ。」中からやや年配の男性の声がした。フレイヤの声を聞いて扉を開けた案内人は颯生と勇真を中に誘導すると一礼をして扉を閉めて去って行った。中にいたのはフレイヤだけだった。颯生が挨拶をした「こんばんは。今日はご招待ありがとう。叔父様はまだご到着ではないのか。」「ええ、忙しい人だから。約束の時間までには間に合うと思うのだけど。先に飲み物だけでもいかが?」「いや、若桜さんもまだのようだし待っていよう。」颯生とフレイヤの話を聞いていた勇真は、「こんばんは。今日はありがとう。ところで、君の叔父さんと若桜さんのお母さんてどういう知り合い?」と尋ねた。「
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第35話

勇真が、「そうですねぇ。」と思案顔で時間を稼いでいる間に颯生は素早く凛華にメッセージを送ったが、既読が付かない。ますますおかしい。颯生はすぐに立ち上がり、「急用ができた。悪いが失礼する。」と扉に向かうと、それより早く黒服の男達が中に入って来た。「何の真似だ。」これ以上ないほどの冷たい表情と声に一瞬怯んだフレイヤだったが、「私はロックスマン家の娘よ。私に恥をかかせるなんて許さない。」と言って、入って来たボディーガードたちに扉を守らせた。「たかが食事くらいで大げさじゃない?余計に何かあるんじゃないかと勘ぐりたくなるね。」勇真は相変わらずのんびりした口調で言った。しかし、彼の目もまた冷たく細められていた。少しの間睨み合っていると、外から扉がノックされた。そして返事を待たずに強引に扉が押し開けられた。開けさせまいと扉を抑えていた二人は勢いに負けて後ろに倒れてしまった。扉を開けた方の黒服の男達の後ろから、30代後半くらいに見える、背の高い端正な顔立ちの、尋常ではないオーラを放つ男性が入って来た。「お取り込み中失礼するよ。私の娘のフレイヤがホテルのレストランのVIPルー厶を予約して男友達と会食中と聞いてね。心配で来てみたのだが。娘はどこだ?」颯生と勇真はフレイヤと名乗っていた女の方を見た。男性はその女の方を見るとわざとらしく驚いて見せた。「おや、サーラじゃないか。君も一緒だったのかい?」「「!?」」颯生と勇真は驚いて男性と女を交互に見た。堂々とした男性と真っ赤な顔でオロオロしている女の様子でどちらが正しいのかは一目瞭然だった。颯生は男性に向かって説明を始めた。「僕は東雲颯生と申します。こちらは来栖勇真です。僕たちはフレイヤと名乗ったこの女性から、僕の父の友人である彼女の叔父が会いたいと言っていると招待されて来たのです。しかし、先ほど叔父様は仕事で街を出たと聞いて帰ろうとしていた所、この男たちに扉を塞がれていたのです。」「なるほど。おそらく、君のお父上の友人である叔父というのは私の弟のことだと思う。弟は足を悪くしてからは別の街でほとんど外出することなく過ごしているよ。申し訳ないが、君たちは騙されたんだ。」「やはり……。それでは、僕たちと一緒に招待されていた女の子が来る途中で帰ってしまったと聞いたのですが、僕たちに何も言わずに帰
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第36話

凛華がドアの方に振り返ると、「帰れる訳がないだろう。おい、誰か!」男の声と共に黒服の男が二人入って来て左右から凛華の肩と腕を掴んで男の方に向かせた。「大人しく質問に答えればいいだけだと言っているだろう。まぁ、座れ。」凛華は男達に強引に座らされ、かなり腹が立ったがどう考えても今は逆らえそうにない。仕方なく、「さっきも言いましたが、あなたが誰なのか分からないうちは答えるつもりはありません。」凛華の態度に不満そうにしながらも、男は仕方なく凛華の表情を見つめながら言った。「俺はロックスマン家の者だ。」凛華は表情を変えることなく、「東雲の叔父様のご友人ですか?」と聞き返した。「お前はロックスマンという名を知らないのか。」「東雲の叔父様のご友人の名前など知っている訳がないでしょう。」「お前の母親から聞いたことはないのか。」「母がなぜ叔父様のご友人の話を私にするのですか?」「お前の父親は誰だ。」「はぁ?父が何の関係があるのですか。」「質問に答えろ。」「父はいません。私が生まれる前に母と別れてそれっきりです。興味もありません。」男は終始凛華の表情の変化を観察しながら話をしていた 。そして凛華の最後の答えの後、更にじっと凛華の顔を見て、ふっと息を吐いてつまらなそうな顔になった。「やっぱり人違いか。わかった。その件はもういい。それでは質問をする。」「まだあるのですか。」「これからが本題だ。」凛華はうんざりしながら言った。「後でご馳走してくださいね。」「本当に生意気なやつだな。ちゃんと答えたら好きなものを食べさせてやる。まず1つ目はお前と東雲颯生の関係だ。お前たちは婚約者か何かなのか?」「大兄様と私が?なにをバカな事を。大兄様は祖父母の友人のお孫さんです。小さい頃から時々お会いして遊んでもらったことがあるだけです。今は同じ学園に留学したので気にかけてくれています。」「では、東雲颯生には他に相手がいるのか?」「そんな事を私が知るはずないでしょう。六歳も年下の知り合いに恋バナをする十七歳の男性なんてあまりいないと思いますよ。」「恋バナ?なんだそれは。取り敢えず、表立って付き合っている相手はいないのだな。」「私が知らないだけかもしれませんけど。」「わかった。それはもういい。これからが一番の本題だ。お前は マキ・フカサワの絵を扱って
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第37話

「意味がよくわかりません。質問は終わりですか?そろそろお腹が空いてきたんですけど。」「ふむ。子供だから仕方ないか。では、我々が交渉している間、ここで食事をしていろ。ただし、親や知り合いに連絡したりするな。」男はそう言うと、黒服の男に命じて凛華の携帯を奪い、大きな体の贅肉を揺らしながら部屋から出て行った。間もなく店の給仕が入ってきて食事をテーブルに並べていった。内容はコース料理だが、勝手に決めた上に一気に全部並べるという手の抜きようにムッとした。しかし今の自分は交渉の為の人質なのだと言うことを思い出し、仕方なく食べることにした。まずは水を1口。暫く待って体の反応を待っ。水、大丈夫。パンを1口。パンも大丈夫。サラダ、肉料理……、と1口ずつ試していき、異常がないことを確かめて自分の考えすぎだったかと思い普通に食べることにした。思ったより美味しかったのでしっかり食べて満足し、デザートの前にジュースを飲んだ時、異変が起きた。頭の中がぼぉっとして、眠くて仕方ない。『しまった。ジュースの確認をするのを忘れていた。』そう思ったのを最後に意識を失った。凛華が目覚めたのはその日の夜の10時過ぎ、病室のベッドの上だった。ゆっくり意識が覚醒し、目を開けると心配そうな母の顔が見えた。「凛華。良かった。どこか痛いところはない?気分はどう?」凛華は母の問いかけに小さく首を縦に振って答えた。「大丈夫。私どうしちゃったの?」「お医者様のお話ではあなたは睡眠薬で眠らされていたそうよ。他には特に異常は見られないって。一体何があったの?」「私はどうやってここに運んでもらえたの?」「エリックと颯生君たちのおかげよ。」母の説明によると、凛華が美術館を出る前にエリックと颯生にメッセージを送ったのがきっかけだったらしい。それを見たエリックはこっそり凛華の車を追って行った。そして、聞いていたのとは違うホテルに入って行ったのを確認し、おかしいと思い応援を頼んだ。レストランで客のふりをして待機していたが一向に個室から出てこない。危険を感じたエリックは仲間と共に凛華の入った部屋へ突入すると凛華が眠っていたと言うことだ。「ん?突入?」物騒な言葉が気にかかり母に聞き返すと、「凛華のいた部屋にはボディーガードが見張っていて入れなかったからちょっと…ね。凛華には言わなかったけどエリ
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第38話

「どういう事?」母の話によると、あの男は凛華を残して部屋を出た後本当に母に絵を譲れと連絡してきたそうだ。譲らないと娘がどうなっても知らないぞと脅迫もしてきたらしい。母も最初は慌てたが、すぐにエリックや颯生さんから連絡が入り私の無事が確認できたのできっぱり断ったそうだ。その後少ししてから父の兄にあたる人から連絡がきて、彼が迷惑をかけたことへの謝罪と彼への対応は任せて欲しいという話をしたそうだ。もともと自分たちでどうこうできる相手ではない。被害も深刻では無かったので任せることにした。「それでね。近日中に改めて訪ねて来て謝罪と説明をしたいっておっしゃっているの。ぜひ、あなたにも会いたいって。どうする?」「………。」突然の事で凛華は答えられなかった。父には会ってみたいとは思っていたが、叔父に会ってもなぁ…。今回の事の事後処理に付いても興味はない。だったら…。少し考えてから凛華が答えた。「私はいい。別に会いたいとは思わない。お母さんだけで話して。」「そう……。わかったわ。そう伝える。」その日の夜は念の為病院で一泊して、翌朝朝食後に退院準備をしていると、ノックの音がした。「はい。」芙美華の返事を聞いて、静かにドアが開くと、「凛ちゃん、具合はどう?」颯生が心配そうな顔で入ってきた。「大兄様、ありがとございます。あれ?講義は大丈夫ですか?」「ああ、今日は午後からだから大丈夫。もしかして、もう退院?」「はい。睡眠薬だけだったようで、すっかり元気です。昨日は本当にありがとうございました。」「いや、無事で良かった。やはり一緒に行くべきだったと反省している。すまなかった。」「とんでもありません。何か怪しいと思った地点で帰るべきでした。好奇心に負けて付いて行った私が悪かったんです。相手の目的はマキさんの絵だったようです。」「そうらしいね。ロックスマンさんの秘書が昨日のうちにおよその事は電話で知らせてくれたよ。僕たちは寮の門限があって途中で帰ったからね。」二人の話を聞いていた芙美華が、「颯生君、昨日は本当にありがとう。中途半端に情報を流した私が軽率だったわ。迷惑かけてごめんなさい。」「いえ、大丈夫です。僕もフレイヤの情報不足でした。本物のフレイヤは13歳で、外見的には凛ちゃんに近い子だそうです。どう見ても彼女は僕より年上でしたからね。」「そうだ
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第39話

ふと我に返った凛華は自分の状況を確認して、『ああ、今は夢を見ているんだ、』と思った。 今、自分は前生の小学5年生の姿で当時住んでいた家の裏口の前に立っていた。その日は三日ぶりに登校を許されて一日学校で過ごし、三時半頃自宅に戻ったような記憶がある。裏口から中に入ると、それに気づいた家政婦の中澤さんが言った。「凛華さん。帰ったらすぐに書斎に来るようにって旦那様からの言いつけよ。」 そうだった。と、やや曖昧になった記憶を辿りながら凛華は思った。このあとはおそらく…。「失礼します。凛華です。今帰りました。」軽くノックをした後、元父の書斎の前で声をかけた。「入れ。」当時は父の不機嫌そうな声に怯えながら中に入ったのだった。中では、何かの書類を見ながら厳しい表情の元父が座っていた。凛華は恐る恐る彼が座る事務机の近くに歩いて行った。すると元父が、何の感情もない冷たい声で言った。「先月行方不明になったお前の母親が、S国で死んだそうだ。強盗に襲われて撃たれたらしい。母親の知人と言う人物がお前を引き取ると言ってきた。断っておくぞ。」「なぜ?」「なぜだと?養女とはいえお前は若桜家の娘だろう。それこそなぜ、見ず知らずの人間に渡さねばならない。」「若桜家の娘?使用人の間違いでは?」「なんだと?最近少し大人しくなったと思っていたが、やはり性根は変わらないのだな。おい、誰か!こいつを暫く部屋に閉じ込めておけ。今夜の食事はなしだ。」凛華は、すぐにやってきた男性の使用人に襟首を掴み上げられ、つま先立ちになりながら書斎から連れ出されて行った。当時の自分はまだ 元父が実父だと思っていた。だからこの時、家を追い出されないことにほっとした。父にもまだ親としての情が残っているのだと勝手に解釈していたからだ。しかし今思うと、私を引き取ると言ってくれたのは叔父か父だろう。母は何とか父のもとに逃げ出したものの、不運にも命を落としてしまった。そこで、父が引き取ろうとしてくれた。が、元父は若桜家の本家からと同じように私の養育費を請求し、多額の金銭を受け取る為に私を手元に置いた、ということだったのだろう。その金のほとんどは元両親と楓香の為に使われていて、凛華には最低限の物しか与えられなかった。その上、「厄介者を養ってやっている。」と言う名目で使用人と同じように働かされてさ
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第40話

いつもはおっとりして物静かな母が、こんなに大きな声で感情を露わにするのは初めてだった。それだけ自分を大切に思ってくれているのだと実感できた凛華はそっと心の中で答えた。『お母さんも最高のお母さんだよ。』凛華は母を宥めようと左腕を上げようとした。が、激痛が襲い思わず顔を顰めた。『何!?この痛み!痛すぎる。』僅かな動きを感じた芙美華は慌てて起き上がり、「まだ動いちゃだめよ!」と凛華の左肘下辺りと右肩を押さえた。「幸い神経には深刻な影響は出なかったけど、骨にヒビが入ってしまったの。その他にも傷が深いことには違いないわ。暫くは安静が必要よ。」「そう。どれくらい入院が必要の?」「感染症の心配がなくなって傷がある程度塞がるまで…となると、最低でも10日から2週間かしらね。」「じゃあ、実習はどうしよう。」「残念だけど今季は休学して、来季改めて挑戦した方がいいわ。」「そっか…。仕方ないね。わかった。」「大丈夫よ。美術館も画廊も来季また改めて受け入れてくれるようにお願いするから。お母さんに任せて。」「はい。お願いします。」芙美華は凛華がもっとがっかりするかと心配していたが、意外とあっさり受け入れたのが気になった。「凛ちゃん、ごめんね。大変な目に合わせてしまって。実習、楽しみにしていたのに残念よね。我慢しなくていいのよ。」「大丈夫。今までずっと頑張ってきたからこれくらい全然平気よ。久しぶりにお母さんとずっと一緒にいられて嬉しいくらいよ。」芙美華は凛華の明るい表情にほっとした。「凛ちゃん、ありがとう。」凛華は事件の日、すぐに病院に運ばれて長時間の手術を受けた。そして術後も丸二日眠り続けていた。その間、芙美華はずっと泣きながら付き添っていた。そのために体力はもう限界に来ていた。芙美華はようやく安心すると、上体がふらついてそのままベッドに向かって倒れ込んでしまった。驚いた凛華は慌てて右腕でナースコールを押した。すぐに看護師が駆けつけてくれて状況を確認すると、「お母さん、ずっとあなたを心配してそばから離れなかったのよ。やっと安心出来たのね。ゆっくり休ませてあげましょう。」と言って応援の看護師と共に芙美華を付き添い用のベッドに移動させてくれた。そして、さらりと驚くべき事を言った。「もうすぐお父さんが交代に来られると思うけど、お母さんはこのまま休ま
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