颯生は、逃げて行く彼女たちを厳しい目で一瞥した後、ロルフに向かって言った。「妹を助けてくれてありがとう。後は僕達が面倒を見るから大丈夫だ。凛ちゃん、おいで。」そして両腕を軽く伸ばして凛華を呼び寄せた。凛華は颯生を見て、何事もなかったかのように微笑んで言った。「大兄様、私は大丈夫ですよ。心配かけてすみません。ロルフさん、ありがとうございました。」凛華はロルフにきちんと頭を下げてお礼を言うと、急いで颯生の方へ向かって行った。颯生も数歩凛華に歩み寄ると、右手で凛華の腕を掴んで自分の方へ引き寄せた。無防備だった凛華は、颯生に引かれるがままに彼の胸元に顔をうずめて抱きつく格好になってしまった。慌てて身体を起こして颯生から離れた凛華は、流石に少し動揺して「ごめんなさい。」と照れながら謝罪をした。颯生もちょっと驚いたような顔をしたが、「僕こそ強く引きすぎた。ごめんね。」柔らかな表情で、改めて凛華の背中に手を当てて席へと戻って行った。ロルフは、そんな二人を黙って見送った。彼女もあんなふうに甘えるような顔をするんだな。よほどあの男を信用しているからなのだろう。彼は凛華を妹と言っていたが、彼女は一人っ子で兄弟はいなかったはずだ。だとすると、それくらい特別な存在だと言うことか。また少し、彼女が遠くなっていく気がして寂しさを感じた。席で待っていた勇真は、「相変わらず過保護だなぁ。クリスがヤキモチを妬くのも仕方ないんじゃないか。」「妹を守って何が悪い。そもそも僕は彼女と一緒に留学するなんて言ってない。修士は今の教授の元で学ぶつもりだ。それを勝手に思い込んで、違っていたからって凛華に友人たちをけしかけるなんて馬鹿げてる。」「でも、彼女さんだったらちゃんと説明して欲しかったんじゃないですか?」「「彼女?」」「えっ?違うんですか?」「違うよ。誰がそんな事を?」「さっきの人達です。」「全く……。僕は今だに女性との距離感が分からないよ。」「確かに。何度か一緒に食事をしたとか、親しく話したことがあったら、知らない間に恋人認定されていたりする。一体どこが友人と恋人の境目なんだ。誰か教えて欲しいものだ。」「そうなんですか?」「ああ、僕だって知らない間に同時期に三人もの彼女がいることになってた。そんな酷い男じゃないよ、僕は。」「来栖さんは優しいですものね。
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