「あら、凛華もう来たの?今日はエリック?エマ?」「エマよ。気になったから少し早く迎えに来てもらったの。」「じゃあ、お昼は?」「簡単に済ませてきたわ。何だか入り口辺りがとても混雑してるようだったのだけど。」「そうらしいのよ。案内スタッフやガードマンが足りないとか、図録が最終日までもたないとか、あちこちで大変そうなの。ここまで大規模な作品展は初めてだったし、終了後販売するって告知したせいで混雑しちゃったみたい。」呑気に話す二人の元に画廊の副社長である佐藤がやってきた。「芙美華さん、こんな所にいたんですか!会場であなたへの面会希望が後を絶たないんですよ!」佐藤は、細身で四十代手前の男性である。細めの銀縁眼鏡のせいか、一見冷徹に見えるが実は温和な人物である。そんな彼が、今はかなり苛立ちながら駆け寄ってきた。「私に?どうして?」「当然、作品の販売についてでしょう。それにマキさんへの伝手を持ちたいとかもあるようですよ。頑張って対応お願いします。」「そういうのは佐藤さんの方が適任じゃないかしら。」「僕も目一杯頑張っていますよ!でも、とても対応しきれないんです。芙美華さんも頑張ってください!」佐藤の勢いに押されて芙美華は渋々立ち上がり、会場に戻りかけてあっと気づいて、振り返りながら凛華に言った。「颯生君と勇真君のご両親が来てくださっているの。夕食をご一緒させていただくことになったから、凛華もそのつもりでね。」「えっ、二人のご両親が?お忙しいでしょうに……。」「それだけ関心を持ってくださったってことよ。素直に喜びましょう。」「そうね。分かった。お母さん、頑張ってね。」その日は四時半までの入館時間を30分早めに切り上げたが、来館者全員が退館したのは5時半を過ぎていた。スタッフはヘトヘトになりながらも活気に満ちていて、明日の体制の見直しを議論していた。芙美華はそんな様子に申し訳なさを感じながらも、約束の時間には会場を後にした。芙美華たちが約束のレストランに着くと、既にみんな揃っていた。「お待たせしてすみません。」芙美華が申し訳なさそうに謝罪すると、来栖夫妻は笑顔で、「大丈夫ですよ。私達が早めに来ただけです。今日の作品展の感想を話し合いたくてね。」「そうなんですよ。私は本物を初めて拝見しました。ネットで見るのとは全く印象が変わるものなんですね
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