Todos los capítulos de 間違い人生のトリガーを破壊して新しい人生を謳歌します!: Capítulo 51 - Capítulo 60

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第51話

「あら、凛華もう来たの?今日はエリック?エマ?」「エマよ。気になったから少し早く迎えに来てもらったの。」「じゃあ、お昼は?」「簡単に済ませてきたわ。何だか入り口辺りがとても混雑してるようだったのだけど。」「そうらしいのよ。案内スタッフやガードマンが足りないとか、図録が最終日までもたないとか、あちこちで大変そうなの。ここまで大規模な作品展は初めてだったし、終了後販売するって告知したせいで混雑しちゃったみたい。」呑気に話す二人の元に画廊の副社長である佐藤がやってきた。「芙美華さん、こんな所にいたんですか!会場であなたへの面会希望が後を絶たないんですよ!」佐藤は、細身で四十代手前の男性である。細めの銀縁眼鏡のせいか、一見冷徹に見えるが実は温和な人物である。そんな彼が、今はかなり苛立ちながら駆け寄ってきた。「私に?どうして?」「当然、作品の販売についてでしょう。それにマキさんへの伝手を持ちたいとかもあるようですよ。頑張って対応お願いします。」「そういうのは佐藤さんの方が適任じゃないかしら。」「僕も目一杯頑張っていますよ!でも、とても対応しきれないんです。芙美華さんも頑張ってください!」佐藤の勢いに押されて芙美華は渋々立ち上がり、会場に戻りかけてあっと気づいて、振り返りながら凛華に言った。「颯生君と勇真君のご両親が来てくださっているの。夕食をご一緒させていただくことになったから、凛華もそのつもりでね。」「えっ、二人のご両親が?お忙しいでしょうに……。」「それだけ関心を持ってくださったってことよ。素直に喜びましょう。」「そうね。分かった。お母さん、頑張ってね。」その日は四時半までの入館時間を30分早めに切り上げたが、来館者全員が退館したのは5時半を過ぎていた。スタッフはヘトヘトになりながらも活気に満ちていて、明日の体制の見直しを議論していた。芙美華はそんな様子に申し訳なさを感じながらも、約束の時間には会場を後にした。芙美華たちが約束のレストランに着くと、既にみんな揃っていた。「お待たせしてすみません。」芙美華が申し訳なさそうに謝罪すると、来栖夫妻は笑顔で、「大丈夫ですよ。私達が早めに来ただけです。今日の作品展の感想を話し合いたくてね。」「そうなんですよ。私は本物を初めて拝見しました。ネットで見るのとは全く印象が変わるものなんですね
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第52話

しかし、流石に2点も優先は難しいので、「それはちょっと…。」と芙美華が言うと、雅哉が、「そうだよ、美亜。そっちはちゃんと実力で手に入れよう。」と言った。来栖家と東雲家には近日中に希望作品と金額を決めて連絡を貰うことにした。作品展は連日盛況で、10日程で図録が足りなくなってしまった。仕方ないので、国内に限り予約を受け付け後日送付することにした。また、絵の購入希望者が後を絶たず販売方法の再検討を余儀なくされた。更に、海外の富豪たちが市長に交渉し2日間の特別鑑賞日を設けさせた。美術館は市の管轄下にある為、これには館長のアディナも従わざるを得なかった。アディナは、2日間の延長に伴う莫大な費用は彼らが負担すると聞き、まあいいか、と承諾した。芙美華の滞在期間は、凛華が怪我をした時に当初の予定から2週間延長していたので、問題はなかった。しかし、海外の富豪相手に絵の販売交渉をするのは正直荷が重い。佐藤とも相談の結果、オーロフに有能な弁護士を紹介して貰うことにした。オーロフからはすぐにロックスマン家の法務チームと顧問弁護士を派遣してくれるとの返事があった。芙美華は翌日に、佐藤と共にオーロフのオフィスを訪れた。大きくは無いものの伝統を感じさせる5階建ての建物の4階部分にある応接室で待っていると、間もなくオーロフと彼と同年代の男性が入って来た。芙美華たちが立ち上がって挨拶をしようとすると、オーロフは軽く手で制して、「気楽にしてくれ。」と言って芙美華たちの向かいの席に座った。「芙美華、僕たちに声を掛けてくれて嬉しいよ。確かに彼らは手強い。うかうかしているとあっと言う間に殆どの作品を持って行かれてしまう。君たちの作品は僕達がしっかり守るつもりだ。紹介しよう。彼は顧問弁護士のエイナルだ。国際弁護士の資格も持っているから海外の相手でも引けは取らない。」「ありがとうございます。お世話になります。若桜芙美華です。こちらは副社長の佐藤です。この度はよろしくお願いします。」「はい、全力を尽くします。早速ですが、詳しいお話を聞かせてください。」佐藤が、当初の販売計画と販売予定数、そして特に厄介そうな購入希望者のリストを示した。彼は、「およその事は理解しました。今から持ち帰って法務チームで調査と対策を検討します。一般の開催期間はあと7日で間違いないですね。」「は
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第53話

「ええ、さっき言った3点が予想より遥かに高額で売れたの。それに、交渉次第では数点の追加を余儀なくされそうなのよ。だから控えめに出すことにしたの。」「分かった。お母さんたちに任せます。私は【午後のひととき】をオーロフ叔父様が引き取ってくださっただけで満足よ。」凛華の返事を聞いて、芙美華は自分の判断が間違っていなかったとほっとした。一般の観覧日の最終日を翌日に控えた日の朝、アディナから連絡が入った。「芙美華、特別観覧日の日程が決まったわ。1グループ2時間ずつで、一日3グループの合計6グループに別れて入館するそうよ。それぞれに代表者がいて、その人物の招待客のみ入館できるらしいわ。彼らはそれぞれ既に招待状の手配を済ませたようよ。お金持ちってやることが早いわね。入館者リストも届いたわ。どのグループもだいたい20人前後ね。大変だけど、芙美華とカーリンと佐藤さんも対応をお願いね。」「わかったわ。ロックスマン家の法務チームにも報告したいのですぐに日程とリストを送ってね。それと、一つお願いがあるの。」「なあに?」「明日の閉館後に1時間でいいから会場を開けて欲しいの。法務チームの方たちに作品を観て貰おうと思って。」「分かったわ。相手が相手ですものね。事前確認は必要だわ。1時間で大丈夫?」「ええ、皆さん図録には目を通してくださっているし、今回の展示数は40点だから大丈夫だと思うわ。」「そう。じゃあ、六時半から七時半でどう?」「ええ。連絡をしておくわね。」芙美華はすぐにオーロフに確認の連絡をした。オーロフは、「分かった。それから、明日は凛華も一緒に連れて来て欲しい。」「凛華も?なぜ?」「作品についての確認があるかもしれない。」「そうなんですか?わかりました。では、明日よろしくお願いします。」翌日の最終日も開館と同時に大勢が訪れた。そして、初日同様閉館時間を三十分以上過ぎてようやく全員が退場した。芙美華も来客たちへの対応ですっかり疲れてしまい、暫く休憩した後凛華と共に約束の七時を少し過ぎて会場に戻った。二人の姿を見ると、入り口付近にいた四人の法務チームのメンバーらしき人たちが、静かに黙礼をして出て行った。二人は訳が分からず奥を見ると更に四人が出て行った。ただ、最後の一人だけが一言、「奥でお待ちです。」と言って去って行った。芙美華たちは、オーロフが待
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第54話

「……お父さん。」凛華は、今まで数え切れないくらい“この瞬間”を思い描いて来た。周囲の話から、冷たくあしらわれる事は無いとは思っていた。もしかしたら、戸惑うくらい感動的なものになるかも……と言う期待?もあるにはあった。しかし、オーロフの時のように淡々としたものになるのでは……、と言う推測が自分の中では一番強かった。それぞれの場合の対応も準備してきたつもりだった。しかし今、突然訪れた“この瞬間”に頭の中が真っ白になってしまってどうしていいのか分からない。無反応な自分を見て、辛そうに俯くグドムンドと戸惑うような芙美華の様子が視覚情報としては入ってくるのに、心が反応できない。堪りかねて、芙美華が気遣うように凛華の肩を抱いて声を掛けた。「凛華、突然で驚いたわね。彼があなたのお父さんよ。出来たら、何か声を掛けてあげて。」「本当に、お父さん…なの?…会いに……来てくれたの?私の事、本当に覚えていてくれたの?」「忘れるなんてあり得ない!ずっと遠くから見てきた。ずっとずっと会いたかった。愛しているよ、凛華。」グドムンドの最後の一言を聞いた瞬間、ようやく凛華の感情が動き出した。目元が熱くなり視界が霞んでくる。戸惑いながらゆっくり彼に近づいて行くと、彼は芙美華にしたのと同じように大きく両手を広げて優しく微笑みながら言った。「おいで、凛華。もっとよく顔を見せてくれないか。」凛華は涙が溢れ出て前がよく見えない状態だったが、それでもグドムンドの胸元に倒れ込むようにしがみついた。彼は全く動じることなく、しっかりと受け止めて包み込むように抱きしめてくれた。凛華にとって、大人の男性にこんなふうに温かく抱きしめてもらったのは前生今生を通じて初めての事だった。柑橘系の香水の爽やかな香りがする胸元に顔をうずめていると、少し早い彼の心臓の鼓動が聴こえる。温かくて力強くて何者からも守ってくれそうな、大きな安心感が全身を包んでくれているようだ。『これが、お父さんなんだ。』ずっとずっと知りたかったものを得た感動で、自分でも訳が分からないまま声を挙げて泣き出した。「おとうさん。会いたかった。」凛華は暫く小さな子供のように泣き続けた。ようやく気持ちが落ち着いてくると、何だか気恥ずかしくなって慌ててグドムンドから離れた。そして、「ごめんなさい。」とほんのり頬を赤く染めて
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第55話

「さっきまであんなに心配してたのは誰だよ。」 フローデが小声で呟いた。 「余計なこと言わないの。」 フレイヤは少しバツが悪そうな顔でフローデの頭に軽くゲンコツを落とした。 「何で僕が怒られるんだ。」 そんな姉弟二人のやり取りが場を和ませてくれた。 オーロフの呼びかけで一同はリビングに移動して楽しく話していたが、そのうちにフローデと凛華が眠くなってしまった。その為、子供たちは部屋に戻り休む事になった。 オーロフとグドムンドと芙美華はその後夜遅くまで翌日からの対策を話し合ったのだった。 その成果もあり、特別観覧の2日間、エイナルとグドムンドは富豪達や彼らと懇意の画商達につけ入る隙を全く与える事なく、無事に予定していた作品の販売を完了させた。 絵画展も何とか無事に終わり、芙美華は一度帰国して改めてこちらに移住する準備をすることになった。 凛華も寮に戻り、1週間後の実習再受講に向けて手続きや準備で忙しくなった。 グドムンドは寂しがったが、凛華の学園のある街に三人で暮らす家を準備する事に労力を注ぐ事にした。 三人は、家族として一緒に暮らす為に動き始めた。 その日、凛華とグドムンドはショッピングモールに買い物に来ていた。 最初に凛華が電話でグドムンドを買い物に誘った時、グドムンドは欲しい物があるのなら専門店に注文すればいいと言った。しかし、凛華は父とショッピングを愉しむと言う体験がしてみたかったのでやや強引に頼み込んでみた。 凛華にとっては、”父“にこんな”わがまま“を言うのも初めてのことだった。やはり聞き入れて貰えないかと諦めかけた時、グドムンドが介護人のヨハンに指示する声が聞こえた。 「明日、凛華と買い物に出かけたい。僕でも行けそうな場所を調べて手配してくれ。………。ちょっと待ってくれ。」 「凛華、どんな物が欲しいんだ?時間は何時がいい?」 「……、一緒に、行ってくれるの?」 「勿論だよ。ただ、僕のせいで行ける所は限られてしまうのだが……、許してくれるかい?」 「はい!嬉しいです。手芸の材料と雑貨が見たいです。時間は、お父さんの都合に合わせます。」 「……、そうか。では、時間と場所が決まったら改めて連絡するよ。」 こうして今日、二人はここで凛華の趣味の手芸用生地や糸を買ったり、新居用の雑
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第56話

「そうだ。私はグドムンドペールソン=ロックスマン。凛華の父親だ。私も名乗ったのだ。君たちも名前を言いなさい。すぐにでも学園に強く抗議する。」 ロックスマンの名を聞いて少年たちは更に恐怖の表情を浮かべた。ロックスマンと言えば国内でも有数の名家だ。事業も多方面に手広く展開し、成功を納めている。そんな家から抗議を受けたら自分たちではひとたまりもない。かなり厳しい処分を受けかねない。 少年たちは慌てて深く頭を下げて、 「すみませんでした。二度としません。今回だけは許してください!」 と言うと、名乗りもせずに一目散に逃げ去った。 追おうとした護衛に、また凛華が小さく首を横に振って言った。 「いいです。放っておいてください。」 護衛たちが確認のためにグドムンドの方を見ると、やはり険しい表情のまま、 「いい、追うな。」 と言った。 二人は暫く無言のまま昼食の店に向かって歩いて行った。レストランの個室に入って、二人だけになって初めてグドムンドが重い口を開いた。 「凛華、君は、いや、君と芙美華はいつもこんな目に遭ってきたのか?」 「そんなことはないです。日本ではお祖父さんや叔父さんが守ってくれていました。こちらでも颯生さんや来栖さんがよく一緒にいてくれたので、殆ど大丈夫でした。たまに、成績で私に敵わなかった人が僻んで絡んで来た程度です。相手にする価値はないって分かっているので平気です。」 まだ11歳なのに、冷めた表情で淡々と答える凛華を痛々しい想いで見つめながら、 「想像はしていたが、目の当たりにすると…更に悔しいものだな。凛華、本当に済まなかった。僕は、自分が情けない。」 「お父さん、やめて。私達はお父さんが私達を裏切ったり見捨てたんじゃないって分かってる。だから、大丈夫。時間はたくさん残ってる。これからは沢山守ってね。」 最後は、凛華にしては精一杯の甘えの言葉だった。 グドムンドは娘の不器用な甘えに申し訳なく思いながらも、決意を込めた眼差しで答えた。 「任せてくれ。もう誰にも凛華を傷つけさせないよ。」 この日から間もなくしてクリスマスが目前となった。 今年はオーロフの家でグドムンドも一緒に過ごすことになった。 これまで凛華はクリスマスには、寮で実家に帰らない友人達とパーティーをして過ごして来た。な
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第57話

オーロフ邸のエントランスホールには大きなツリーが飾られていた。ツリーには妖精の人形や木の実など自然にちなんだ飾り付けがしてあり、落ち着いた温かい気持ちになるようなものに仕上がっていた。パーティー会場も、華やかに飾り付けが施されていて、テーブルには既に沢山のご馳走が並べられていた。『フレイヤは家族で食事をするだけ、って言ってたけど、こんなに豪勢だとは…。』と驚いていた凛華に対して、グドムンドは懐かしそうに部屋の様子を眺めながら、「家族でクリスマスを祝うのは久しぶりだな。来年は芙美華と三人で祝おうな。」と凛華に言った。オーロフ一家に迎えられた二人はとても楽しいクリスマスディナーを楽しんだ。食事の後、オーロフ夫妻とグドムンドから子供たち三人にプレゼントが渡された。オーロフ夫妻から凛華とフレイヤには髪飾りを、フローデには蝶ネクタイが贈られた。そしてグドムンドからのプレゼントは三人のために特別に創られたガラスペンだった。どちらも精巧で美しくて、三人はとても喜んだ。子供たちからもオーロフ夫妻とグドムンドにマフラーがプレゼントされた。それぞれに合うようなデザインを選んでいて、どれも暖かそうで三人ともとても気に入ったようだった。最後に、凛華から三人にプレゼントを渡す時が来た。オーロフ夫妻は、少し驚いて、「私達の分も用意してくれたのかい?」「凛華、気を遣わなくても良かったのよ。」と言ったが、凛華は笑顔で「大したものじゃないんです。感謝の気持ちを伝えたくて私が手作りしたものですから。」と言ったのでそれなら、と気軽に包みを開いて中をみた途端固まってしまった。二人の様子を不思議に思いながらも自分へのプレゼントを見てグドムンドも固まってしまった。そこには、先日大盛況だった絵画展の作者の一人、カリン・フカサワのイラストを精巧な技術で刺繍したハンカチとネクタイが入っていたのだから。三人が反応してくれないので、やはり手作りでは気に入ってもらえなかったのかとちょっとがっかりした凛華は、「ごめんなさい。心を込めて作ったんですけど、やっぱり子供っぽかったですか?」と申し訳なさそうに言った。そこでやっと気を取り直したアンナが、「違うわ、凛華。逆よ。素晴らしすぎてびっくりしたのよ。この刺繍もあなたがしたの?」「はい。小さい頃からの趣味なんです。」「………。」何
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第58話

凛華は、”お守り袋“を作る為に母と一緒に香水を選びに行ってから、香水に興味を持ち始めた。 こちらに来てからも、機会があればお店を訪れたり工房の見学に行ったりもした。そして、いつか自分だけの香りを作りたいと思うようになっていった。 しかし本格的な香水作りは奥が深く、とても片手間に手を出してどうにかなるものではないことも分かった。なので、できるだけ自分のイメージに近いものを選んで買うことにしている。 今回はとてもいい機会なので、この実習中に是非一つでもいいから思い通りの香りを作ってみようと思っている。 今回の実習は凛華を含めて三人で、学園のある街の東の端の方にある工房でお世話になることになった。 メンバーは、14歳のマリアと13歳のアルフと凛華だった。 香水についての基礎知識を学んだ後、様々な香りを体験したり、植物からの香りの抽出を見学したり、予想以上に充実した実習だった。 実習も半ばを過ぎた頃、実際に調香をさせて貰えることになった。最初はレシピに従い、見本の香りと同じ物を作ってみることからだ。 ここで、三人の個性が出てきた。 レシピを厳格に守り作り出すマリアと、レシピは参考程度で自分の嗅覚を頼りに作ろうとするアルフ。レシピを守った上で嗅覚を頼りに微調整をする凛華。 指導員は愉しげにその過程を見守っていた。 数日かけてようやく創り上げた3つのパルファムの出来を確認する日が来た。 三人ともトップノートには自信があった。 マリアが選んだのはフローラルブーケの華やかな香り。 まず見本の香りを確かめてから、マリアの作品を確かめる。 「マリア凄い!いくつかの花が混ざっているはずなのに見本と全く同じ香りになってる。」 思わずアルフが感嘆のを声を挙げた。 「本当。いい香り。」 凛華もうっとりしながら二つの香りを堪能した。 次にアルフの作品を試してみた。 彼が選んだのはウッディ系の香りだった。 トップノートはグリーン系の爽やかな香りが強かったが落ち着いた木々の香りもしっかり感じることができた。これもまた見本の香りとほぼ同じに出来ていた。 「大人の男性に似合いそうな素敵な香りね。」 マリアが言うと、凛華も頷いた。 「確かに。叔父様に似合いそう。」 「お父さんじゃなくて?」 「私の父はグ
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第59話

翌日から凛華たち三人は、それぞれ自分の作品の準備に取りかかった。実習終了まで一ヶ月足らず。作成に1週間はかかるとして最後の発表とかを考えると2週間位でレシピを完成する必要がある。凛華がどんな香りを創ろうかと考えた時、まず颯生の顔が浮かんだ。おそらく自分が香りに興味を持ったきっかけとなったのが彼だったからだろう。しかし、彼は最近更に大人っぽくなり、ますます女子学生達からの注目度が高くなっている。昔のように気軽に手作り小物を渡してもいい存在ではなくなってきた。では母は……とも考えたが、母は香水をあまり好まない。パーティーなどでやむを得ず付ける位で、オードパルファムどころか、オードトワレがせいぜいだ。それでは練習にならない。あとは…、父?しかし父と会ってまだ半年程だ。自分の勝手なイメージが抜け切らず、本当に“父らしい”香りを想像するのは情報不足だ。やはり颯生がいい。本人に渡さなければいいだけだ。そう決めて、早速情報収集の為に颯生に会うことにした。メッセージで、『凛華です。お時間があれば、久しぶりにお昼をご一緒させていただけませんか。』と送ってみた。少しして返事が返ってきた。『いいよ。明日の11:30頃に学園の食堂でどうだい?』『ありがとうございます。明日、よろしくお願いします。』凛華は思ったより早く会ってもらえそうでホッとした。そうと決まれば、今日のうちにいろいろな香りとその特徴を勉強しようと資料室へ向かった。そこには既にマリアとアルフもいて、午後の時間ずっと三人で勉強に励んだ。約束の時間より少し早く食堂に着いた凛華は、窓辺の景色のいい四人掛けの席を選んで座った。約束通りの時間に颯生がやって来た。今日は隣に勇真ではなく、薄茶色の長い髪の女子学生がいた。彼女は颯生の腕に抱きつくように絡みつき、凛華を興味深そうに見つめていた。「凛ちゃん、お待たせ。珍しいね、君からお誘いがかかるなんて。」「はい。今実習中で、課題が出まして。ちょっとご協力をお願いしようかと。」「いいよ。何をすればいい?」二人で本題に入ろうとすると、颯生の隣にいた女子学生が口を挟んだ。「ちょっと、颯生。私の事は無視なの?紹介くらいしてよ。」颯生は一瞬眉間に皺を寄せたがすぐに元に戻して、「ああ。凛華、彼女はクリスティーナ。同じ研究室の友人だ。同席しても構わないかい
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第60話

「やあ、ここにいたのか。遅くなってごめん。もう注文は済ませたのか?」声の主は勇真だった。彼は自然な動作で颯生の横に座り、そこで初めて二人の微妙な雰囲気を感じたようだった。「もしかして、何かあった?」「いや、何もない。注文は今からだ。凛ちゃん、何がいい?勇真と買って来るよ。」「私も行きます!」「いいよ。凛ちゃんはここで場所取りをしてて。」勇真にもそう言われて、仕方なく凛華も従うことにした。「じゃあ、サンドセットで。ドリンクはホットのレモンティーがいいです。」「わかった。ちょっと待ってて。」凛華は二人が注文カウンターに向かって行くのを複雑な気持ちで見ていた。『颯生さんがA国の大学院進学を見送った?それが私のせい?そんなことあるはずがない。きっと別の理由があるのだろう。それを周りの人が勘違いして……。』気にはなるが、かと言って自分が颯生の事情に口を出すのは違うと思う。しかし、今までの経験から想像すると、きっとこのままでは済まない。そのうちに、誰かから呼び出されたり、知らない人たちに取り囲まれたりしそうだ。それは、もう嫌だ。だったら、どうすればいい?凛華は考えることに集中してしまい、周囲の状況を察するのが遅れてしまった。「ちょっと、あなたが若桜凛華?」低く冷たい声に無意識に反応してしまった。「はい、なんでしょうか。」顔を上げるとテーブルの横には五人ほどの女子学生が立っていた。『もう来たの?早くない?』うんざりしながら彼女たちを見ていると、さっき声を掛けてきた人が続けて言った。「少し前にクリスが泣きながら戻って来たのよ。あなた、彼女に何をしたの?」『何もしてない。』と言っても信じてもらえないだろう。黙っていると、周りの女子学生たちが口々に言い始めた。「何とか言いなさいよ。」「ちょっと颯生に目を掛けて貰ってるからって調子に乗ってるんじゃない?」「クリスは颯生の彼女なのよ。二人で一緒にA国の大学院に進学する予定だったのに、颯生が申請を出さなかったのよ。きっとあなたが引き留めたんでしよう?」『ああ、そういうことか。』少し事情が分かったが、本当に凛華は何もしていない。留学の話なんてさっき初めて聞いたのだ。「ちが……。」凛華が違うと言うより先に腕を掴まれ無理矢理に立たされた。「クリスに謝りなさい!」「そうよ、それで颯生に留
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