「あの、伏見様──」 「ん……?どうしました、飯野さん」 おずおず、と近づいて来た飯野に伏見はきょとんと目を瞬かせて答える。 飯野は音羽と恭を優しく見つめる伏見に、何かを言おうと暫く悩んだあと、意を決したように口を開いた。 「……恭坊っちゃまのご両親は、お仕事がとてもお忙しい方々で……」 「──ああ、……ええ、分かります」 飯野の言葉に、伏見はこくりと頷く。 音羽と伏見が何度か恭の相手をしているにも関わらず、樹も裕衣も今まで1度も音羽や伏見にコンタクトを取ろうとした事が無い。 普通、自分の子供がどんな人物と接しているのか。 見知らぬ人間に、例え数十分でも預ける事になれば心配になるのは普通だ。 それなのに、今まで樹も裕衣も。恭には興味がないというように無反応だった。 それだけで、大体の事情を察してしまう。 だからこそ、飯野はバツが悪そうに切り出したのだろう。 自分の雇用主を、子供に愛情がない人達だ、なんて口が裂けても言えないだろうから。 だが、伏見は敢えて「全て察していますよ」というように悲しげに答えたのだ。 伏見の返答にほっとした飯野は、言葉を続けた。 「中々、坊っちゃまと接する時間がないのです……。保育園のイベントにも、ご両親が来た事はなく、いつも私が……」 「そうだったんですね……。それじゃあ、恭くんは寂しい思いをしているでしょうね」 「ええ……坊っちゃまは聡いお方です。まだ4歳にも満たないご年齢にも関わらず、ご両親がお忙しい事……それ以外の事情も全て受け入れて……。あまり笑わないお方だったんです」 それ以外の事情、とは。 産みの母親が既に亡くなっている事情だろうか、と伏見は考える。 思わず嘲笑うような笑みが浮かんでしまうが、幸いにも飯野からは伏見の表情は見えていない。 「子供が笑わない、なんて……。それだけ恭くんは自分の感情を押し殺していたんじゃないですか?」 「ええ……ご指摘の通り、です」 項垂れるように答える飯野。 飯野本人も、樹と裕衣。あの2人の恭への関わり方に思うところがあったのだろう。 伏見の言葉に肯定したあと、悔しそうに項垂れる。 「だけど、最近は伏見様と奥様にお会いするのをとても楽しみにされておりまして……。朝や夕方、園から帰って来る時は、お2人のお姿を探されているんです」 「そうなんで
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