Semua Bab 夫と愛人に地獄に突き落とされた私を救ってくれたのは「若」と呼ばれる裏の世界の人でした: Bab 91 - Bab 100

179 Bab

91話

「んぅ……ッ!?」 突然の事に、音羽は驚き口を薄っすらと開けてしまった。 すると、僅かに開いた唇の隙間から冷たい水が流れ込み、無意識の内にそれを嚥下した。 こくこく、と音羽が水を飲むのが分かり伏見はほっとする。 音羽が全て水を飲みきった事を確認した伏見が唇を離すと、音羽は追いかけるように伏見に顔を寄せた。 「──っ、」 「もう少し……ください……」 とろんとした音羽の瞳。 伏見は先程までの熱が再びぶり返すような感覚に陥ったが、必死に理性を総動員して「抱いてしまいたい」という衝動を何とか抑える。 「分かった」 こくり、と頷いた伏見は再びペットボトルの水を自分の口に含むと、音羽に顔を近付ける。 伏見の顔が近付き、音羽はとろんと落ちそうになっていた瞼を伏せ、口を開いた。 (──ああ、くそっ) 伏見は胸中で嘆き、音羽の後頭部に自分の手を回して引き寄せた。 ◇ ペットボトルの中身が半分程になるまで、口移しで水を飲ませてもらった音羽。 キスがこんなに心地良いものだとは思わなくて。 音羽がぼうっとする頭のままされるがままになっていると、水を飲み干した音羽の口内にするり、と伏見の舌が入り込んだ。 ぴくり、と音羽の肩が震えたが、伏見の舌が入り込んでも音羽は嫌な感情など微塵も湧かず、目を閉じて受け入れる。 先程までの暴力的な快楽ではなく、優しい口付けが音羽はとても心地よかった。 舌を絡め合っていても、いやらしさや艶めかしい雰囲気にはならず、ただただ優しくキスが落とされる。 「──音羽」 「……ふっ、……蓮夜?」 唇を離した伏見が、何とも言えない表情で音羽の名前を呟く。 ぽやぽやとした頭のまま、音羽はただ伏見をじっと見つめ返す。 その音羽の表情に、伏見は何かに耐えるようにぐっと眉を寄せると咎めるように声を低くした。 「少しは、抵抗してくれ……。簡単に体を許してくれるな……」 「抵抗……」 「ああ。こんな風に……望まぬ行為をされてるのに無抵抗でいたら駄目だ。しっかりと拒絶しろ」 「望まぬ行為……」 音羽は、ぼんやりとした目で伏見に言われた言葉を復唱する。 そんな音羽の様子を見て、伏見はやり過ぎた、と頭を抱えたくなる。 確かに我慢出来なくなって、音羽に色々してしまった自覚はある。 だが、もっと本気で拒絶してくれないと──。
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92話

「ちっ、違──、無理とか、我慢とか……っ!」 音羽は慌てて伏見を見上げ、そう言葉を紡ぐ。 だが、そこまで言葉を紡いだ音羽はハッとしたように目を見開くと、突然口を両手で塞いだ。 「音、羽……?どうした……?」 突然狼狽えだした音羽に、伏見は心配するように彼女の顔を覗き込んだ。 音羽の目は驚いたように見開かれていて。 瞳が動揺したように揺れていた。 そんな音羽の様子を見た伏見の瞳が翳る。 黒い瞳が仄暗く沈んで行く。 「すまない、俺は部屋を出るから……」 これ以上音羽のそんな様子を見続けるのが嫌で。 伏見は掴んでいた音羽の肩をぱっと離し、体も離した。 (こんな事を言って……いざ音羽から拒絶されたらと思うと……) 辛すぎる。 だから、音羽から拒絶される前に伏見は逃げてしまう事を選んだ。 本当は少しだけ期待していた。 音羽が「嫌じゃない」ともしかしたら言ってくれるのでは、と浅ましい期待をしていたのだ。 実際、音羽は伏見の前で良く笑顔を見せてくれるし、頼ってくれているように見えた。 体に触れても、嫌がる素振りは見えなかった。 だから、もしかしたら──。 元夫にかけていた愛情の、ほんの一欠片くらいは自分に心を許してくれているのでは。 そんな風に浅ましい希望を抱いて──。 だが、黙り込んでしまった音羽の態度が、答えだ。 伏見がベッドから降りた瞬間、音羽は弾かれたように伏見を振り返る。 「仕事に行ってくる。……今日は遅くなるから夕飯はいらない」 それだけを口にすると、伏見は音羽の返事を聞かずにそのまま扉を開けて寝室を出て行ってしまった。 「れ、蓮夜──!」 音羽は慌てて伏見の名前を呼び、彼を呼び止めようとした。 だが、扉が閉まってしまい、音羽の声は扉に阻まれ伏見には届かなかった。 「れ、蓮夜……っ、違うっ、嫌じゃなかった事を説明しなきゃ……っ」 音羽は慌ててベッドから立とうとしたが、先程散々伏見に快楽を与えられた足はぷるぷると震え、力が入らない。 音羽の声も掠れたままで、何度か咳き込む。 「わっ、私がすぐに返事をしなかったから……っ、蓮夜に勘違いさせてしまった……っ」 傷付いたような、顔をしていた。 「あんなに助けてもらったのに……っ」 ぷるぷると震える足に必死に力を入れ、ようやく音羽は立ち上がる。 何とか壁
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93話

薄っすらと明かりのついたリビング。 音羽は、壁掛け時計に視線を向けた後、悲しそうに溜息を吐き出した。 時計の針が示す時刻は深夜23:50。 もうすぐで日付が変わってしまう時間帯。 こんな時間になっても、伏見が家に帰ってくる気配は無い。 「どうしよう……蓮夜が怒って、もう二度と帰って来てくれなかったら……」 音羽は座って座っていたソファから立ち上がり、落ち着きなくうろうろとリビングを動き回る。 「私は、どうしてあの時すぐに嫌じゃなかったって答えなかったの……っ」 朝の自分の行動に、後悔してもしきれない。 「……夫がいたのに、蓮夜に触れられるのが嫌じゃないって事が知られたら……だらしのない女だって……快楽に弱い女だって、蓮夜に思われたら嫌だったんだもの……」 実際、音羽は伏見に触れられるのは嫌じゃなかった。 だけど、誰でもいい訳じゃない。 触られるのが伏見だから、嫌じゃなかったのだ。 「あの刑務所で……出会って……、助けてくれたのは蓮夜だもの……」 沢山話をした。 「蓮夜は、挫けそうになっていた私を沢山励ましてくれたもの……」 ずっと励ましてくれていたのだ。 「それに、私が馬鹿な事をしようとしても……蓮夜は止めてくれた……。そればかりか、家に住んでいいって、働く事まで助けてくれたのに……っ」 これだけ沢山助けてくれて、優しくしてくれて。 ドン底に居る時にあんな風に優しくしてくれて、助けてくれて。 惹かれない訳がない──。 そうだ、伏見に惹かれるのは、当然だ。 人生のドン底にいる時に優しく手を差し伸べてくれて、その時だけじゃなくて今だってずっと助けてくれている。 それで、好きにならない人なんているのだろうか。 「──私は、蓮夜が好き……、なのね……」 だから、あんな風に体に触れられても。 キスをされても。 ちっとも嫌じゃなかった。 「……蓮夜が好き、だからこそ……」 音羽は自分の口で、自分の気持ちを言葉にして改めて自覚する。 自覚すると同時に、じわじわと頬が熱くなってきた。 「蓮夜……っ、蓮夜にちゃんと言わなきゃ……っ」 音羽はぱっとリビングの窓から外を見る。 だが、暗い外に、車のライトの光は未だ見えない。 音羽は上着を羽織り、外に出てみる事にした。 もしかしたら、伏見がもうすぐ帰ってくるかもしれな
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94話

深夜0時──。 夜中になっても、伏見は帰らない。 音羽はそれでもじっと待ち続けた。 深夜1:00──。 じとり、とした空気がじっとりと汗を滲ませる。 音羽は額にかいた汗をハンカチで拭いつつ、伏見を待ち続けた。 「蓮夜……何かあったの……?」 夜遅くなる、と言っていた。 帰ってこない、とは言っていなかった。 「どうしよう……電話、しても大丈夫かな……」 音羽はスマホの電源をつけ、伏見の番号を呼び出す。 電話をかけてもいいだろうか。 だけど、仕事をしていたら──。邪魔をしてしまうだろうか──。 「蓮夜の仕事の邪魔になったら、嫌だ……」 音羽はそう呟くと、伏見の名前を呼び出していたスマホの画面を消す。 「もうちょっと……、もうちょっとだけ待ってみよう……」 ふう、と息をつきつつ音羽は汗を拭う。 だがそうして音羽が待っていても、伏見の車が戻ってくる事はない。 深夜、2:00。 「……流石にこの時間まで戻って来ないのは変だわ……」 もしかして、伏見の身に何かあったのではないか──。 今度は、そんな不安さえ込み上げてくる。 伏見の身に何かあったらどうしよう。 音羽は顔色を悪くさせると、誰か──、と必死に頭を働かせた。 そこで、ふとある人物を思い出す。 「──そうだ、律子さん……!」 そう言えば律子は伏見と連絡を取り合っていた事を思い出したのだ。 もしかしたら顔見知りだったのかも、と音羽は律子と伏見の様子を見てそう思った事がある。 「りっ、律子さんならもしかしたら蓮夜の事を知っているかも……っ」 音羽は慌てて自分のスマホの電源をつけ、律子の名前を呼び出そうとした。 だが、音羽が律子に電話をかけるより早く──。 音羽のスマホが着信音を鳴らした。 スマホの画面には、今音羽が電話をかけようとした人物──律子の名前が表示されていた。 ◇ 都内にある高級ラウンジ。 そこに、とても機嫌の悪い男がソファに深く座り込み項垂れていた。 「──若」 「うるさい、俺に話しかけるな」 若、と呼ばれた男──伏見の隣で恐る恐る話しかけた黒服の男は、眼光鋭く伏見に睨みつけられ、低い声でそう言われすぐに口を噤んだ。 高級ラウンジには、複数の男女が伏見を遠巻きにして気まずそうに揃っていた。 綺麗なドレスを身にまとっている女性達も、
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95話

◇ 「──律子さん!!」 「音羽かい?すまないね、こんな時間に」 深夜3:00。 都内の高級ラウンジに、タクシーから降りた音羽は、外で待っていた律子に慌てた様子で駆け寄った。 「れ、蓮夜は……っ!蓮夜は大丈夫なんですか!?」 「ああ。若──いや、彼は……酒に酔っていて……私らじゃあもうどうにも出来なかったんだよ。あんたじゃないと彼を連れ帰れない……。悪いが、頼んでもいいかい?」 「も、勿論です!蓮夜は今、どこに……!」 「こっちだよ。部屋まで案内する」 そう言って歩き始める律子。 音羽は慌てて律子の後に続いたが、そこでこの場所がどう言う場所なのか──。 遅ればせながらようやく気付いた。 都内高級ラウンジ。 完全個室の富裕層が利用する店だ。 そんな場所に、伏見が──。 (蓮夜は、どんなお仕事をしているの……?) カウンセラーをしていた事は、知っている。 だが、元々伏見はあの刑務所を支援するために見学をしに来ていた。 ある程度裕福な家の出なのだろう、と思っていたが、都内一等地にあるこの高級ラウンジは、会員制だと聞いた事がある事を、音羽は思い出した。 (樹──私の元夫も、まだこのラウンジの会員になれていない、って言ってた……。審査が厳しくて、樹程の会社の社長でもこのラウンジの会員にはなれていないって……それなのに、蓮夜って一体何者なの……?) ふかり、と分厚い真っ赤な絨毯が敷かれている廊下を歩きながらそんな事を考える。 そうしていると、部屋に到着したのだろう。 律子がある部屋の前でぴたり、と足を止めた。 「律子さん……?」 「音羽、彼はこの部屋にいるよ」 「──ありがとうございます!」 扉を開けて中に入るよう促してくれる律子。 音羽はぱっと表情を輝かせ、迷いなく部屋の中に足を踏み入れた。 「律子さん、蓮夜を連れて行くのを──」 手伝ってもらってもいいですか? そう、続くはずだった音羽の言葉は、ゆっくり閉められていく扉に阻まれて、律子の元には届かない。 「──えっ」 どうして、扉を閉めるのか──。 音羽が驚きに目を見開いた所で、律子の申し訳無さそうな声が音羽の耳に届いた。 「すまないね、音羽。彼──若を、頼むよ」 その言葉を最後に、扉は完全に閉められてしまう。 「──えっ、え……?」 音羽は戸惑い
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96話

「──?」 部屋に入って来た人間の気配が動かない。 その事に眉を顰めた伏見は、腕を退かして軽く体を起こした。 「おい、いい加減出ていけ──」 冷たく、他者を拒絶する声。 その言葉を発しつつ、伏見はその人物を強く睨み付けてやろう、として。 「──音羽っ!?」 部屋に入って来た人物が音羽だと分かった瞬間、伏見は慌ててソファに起き上がった。 どうしてここに音羽が。 一体誰が音羽をここに呼んだのか──。 だが、そんなのは考えなくても分かる。 きっと律子だろう。 その考えに至った伏見は、舌打ちをした。 「律子、か──!余計な事を……っ」 「──っ」 伏見の舌打ちと、冷たい声に言葉。 それらにびくりと震えた音羽は、まるで伏見から拒絶されたような気持ちになった。 「ご、ごめんなさい蓮夜……か、帰り、ます……」 「──っ、違うっ!音羽に言った訳じゃない!」 涙に濡れた音羽の声にびくりと反応した伏見は、慌ててソファから立ち上がると、音羽に駆け寄った。 アルコールをしこたま飲んだせいで頭がぐらり、と揺れた。 だが、それでも伏見はそれを気にせず音羽に駆け寄ると、俯く音羽の頬を優しく両手で包み、上向かせた。 「──っ、悪い、音羽に言ったんじゃない……」 恐怖、だろうか。 音羽の瞳には今にも零れ落ちそうなほど涙が溜まっていて。 伏見は無意識に音羽の目尻に唇を寄せ、涙を舌先で拭った。 「──んっ」 「──っ、悪い……っ」 (朝、あれだけ音羽に嫌な思いをさせてしまったのに。俺はまた何をしているんだ) そう考えた伏見は、慌てて音羽から離れた。 良く良く音羽の格好を見てみれば、薄着のワンピース1枚に、軽くカーディガンを羽織っているだけ。 しっとりと汗をかいた音羽の肌が、まるで伏見の肌に吸い付くように気持ち良く、このままではまた音羽に酷い事をしでかしてしまいそうだ、と考えた伏見は、音羽を先に返す事にした。 「音羽、俺は大丈夫だから……先に帰れ」 このまま一緒にいたら。 アルコールで理性のタガが外れかけている今、これ以上音羽と一緒に居る訳にはいかない。 (きっと、音羽がどれだけ嫌がっても……今日は我慢出来ない。最後まで抱いてしまう……) 嫌がる音羽に、そんな事はしたくなかった。 だから、今日は家に帰らない。 そう決めていた伏
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97話

「──んぅっ!?」 突然唇を塞がれた音羽は、びっくりして目を見開いた。 だが、嫌ではない──。 音羽は、それを証明するように伏見の首に両手を回し、キスに応えた。 音羽がキスに応えた。 それに気付いた伏見の頭の中が、歓喜でいっぱいになる。 何度も角度を変え、音羽の髪の毛に指を差し込み引き寄せる。 舌を差し入れ、音羽の舌と絡め合わせつつ、伏見は音羽の体をひょいと持ち上げて歩き出した。 その間も音羽は嫌がる事なく、必死になってキスに応えてくれている。 そんな音羽が可愛くて、愛おしくて──。 堪らなくなった伏見は、さっきまで自分が休んでいたソファに音羽を押し倒すと、そのまま馬乗りになった。 性急に音羽のワンピースの裾から手のひらを入れ、胸を覆う下着のホックを片手で外す。 ずれた下着をそのままワンピースの裾と一緒に捲し上げると、音羽の胸の先に口を寄せた。 薄っすらと開いた口で、そのまま胸の先をかぷりと噛み、執拗に舌先で舐る。 「──あっ、やっ、蓮夜っ」 音羽の口から、ぐずぐずと蕩けるような甘い嬌声が上がる。 音羽の甘い声が、伏見の脳をじりじりと焼いていくような感覚。 伏見は音羽の足首を掴むとがばり、と開き自分の体を捩じ込んだ。 急くように自分のベルトを外し、音羽の下着を膝まで一気に下げると、そのまま指を中に突き入れた。 快感に乱れ、喘ぐ音羽の腰を押さえ付け、音羽の下着を奪った伏見はそのまま床に投げ捨てた。 「──やだっ、蓮夜……待って……っ」 「嫌だ、待てない……っ、抱きたい。挿れたい──っ」 顕になった伏見自身。 それを、音羽のそこに何度も擦り付ける。 音羽の中から溢れたもので、室内には卑猥な水音が響いていた。 伏見のモノで音羽の敏感な部分が擦られ、快楽が膨れ上がる。 擦り上げられる度に音羽の体がまるで陸に打ち上げられた魚のようにビクビクと跳ね、その体を伏見はいとも容易く抑え込むと、くぷり、と先端を音羽の中に差し込んだ。 「まっ、待って!蓮夜っ、ここじゃ嫌っ」 「──音羽?」 このまま音羽の中に根元まで捩じ込み、思い切り腰を打ち付けたい──。 暴走しそうで、焼け切れそうな思考を必死に推し留め、伏見は音羽を見下ろす。 服が乱れ、全て晒け出された音羽
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98話

それからの伏見の行動は、早かった。 音羽の衣服を最低限直し、音羽を抱き上げると伏見自身のスーツを音羽にかけ、顔が見えないようにする。 ラウンジの部屋を出ると退出させられていた伏見組の面々が廊下で待機していた。 スーツを被せられていた音羽は、廊下に人の気配は感じたが、それらが全員伏見に頭を下げているのを見る事はない。 だから、その中にいる律子の存在にももちろん音羽は気が付かなかった。 伏見は急くように長い足で廊下を歩くと、自分の車に音羽を押し込みシートベルトも締めないままアクセルを踏み込み、自ら車を運転する。 まるで、音羽の乱れた姿を誰にも見せなくない、と言うような伏見の態度。 伏見の思考を正しく読み取った部下達は、誰も声を発さず、音羽を視界に入れる事もせず、ただただ伏見の車が視界から消え去るまで頭を下げ続けていた。 ◇ 「れ、れん、や……っ、待って、落ち着いて……っ」 「無理だ。早く抱きたい」 車をガレージに停めるなり、伏見は音羽を再び抱え、玄関を開けて中に入った。 寝室に向かう廊下を歩きつつ、伏見は音羽の顔中にキスの雨を降らせる。 音羽が息も絶え絶えになりつつ応えていると、寝室に到着したのだろう。 伏見が自分の足で勢いよく寝室の扉を蹴破った。 「──きゃあっ!」 どさっ!とベッドに2人して雪崩込む。 悲鳴を上げた音羽の口は、すぐさま伏見が塞ぎ、舌を絡め合う深い口付けに一瞬で変わる。 音羽の体を這い回る伏見の手のひらに音羽が翻弄されていると、ぼうっとしていた音羽の耳に、衣服が千切れる大きな音と、ボタンが弾ける音が聞こえ、音羽はぎょっとして目を見開いた。 「れ、蓮夜……っ!?」 「服を脱ぐ時間も惜しい。安心しろ、音羽。音羽の服は破っていない」 「そ、そういう問題じゃ──」 衣服が破れる音と、ボタンが弾け飛ぶ音。 それはどうやら伏見が自分が着ていたワイシャツを力任せに引きちぎり、無理矢理脱いだ音だったようだ。 伏見の瞳はギラギラと欲に濡れ、音羽を熱い視線で射抜いている。 伏見の視線に充てられ、音羽の背筋にぞわりと快感が走った。 まるで視線を向けられるだけで音羽の「奥」が疼くような、何とも言えない感覚が彼女を襲う。 自分のお腹がきゅん、と戦慄き、音羽は無意識に
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99話

あまりの衝撃に、音羽の口がはくはくと動く。 だが、何の声も出せずにいると音羽の頭を抱え込んでいた伏見がそっと体を起こし、苦しげな声で音羽に囁く。 「息をしろ、音羽。……そう、吸って……吐いて。大丈夫、だ……体から力を抜け……」 「──うっ、うう……っ、苦し……っ」 「大丈夫だから、……泣くなっ」 伏見は苦しげに喘ぐ音羽に唇を落とす。 顔中に口付けを落とされている間、伏見は無理に動き出す事もせずにじっと待っていてくれた。 段々と苦しさに慣れてきた音羽は、ようやく息が整い始め、小さく息を吐き出す。 「ご、ごめんなさい蓮夜……。もう大丈夫、です……。動いて大丈夫……」 音羽が涙に滲む瞳で真っ直ぐ伏見を見つめる。 すると、伏見はどこか決まり悪そうにそっと音羽から視線を逸らしつつ、腰を押し進めた。 「──えっ!?」 全部、入っていたのではないか──。 ぎょっと目を見開く音羽に、何が言いたいのか悟ったのだろう。 伏見は申し訳なさそうに音羽に真実を教えてやる。 「……まだ半分も入ってない」 「う、嘘でしょう!?」 ぎょっとして音羽はついつい下半身──自分と伏見が繋がっている箇所に目を向けてしまう。 普段なら、恥ずかしくてそんな事出来ない。 だが、物凄い圧迫感と苦しさに嘘だと思いたかった。 これで半分も入っていないと言う事は、全部入った時の衝撃はきっと耐えられない──。 音羽は我に返ったように一瞬で顔色を真っ青にすると、伏見から逃れるようにじたばたと暴れだした。 「むっ、無理です……!絶対にこれ以上は無理ですっ!」 「無理じゃない。ゆっくりすれば慣れる」 暴れる音羽を慈悲もなくベッドに縫い付けた伏見は、止まっていた腰をぐっと進めた。 「──ひっ!」 伏見の全てを受け入れたら。 入ってはいけない場所まで伏見が入り込んでしまうのでは──。 そんな恐怖がむくむくと膨れ上がり、音羽は伏見の胸に手を当て、必死で押し返した。 「しっ、死んじゃいます!無理っ!入らないっ!」 「──そんなに褒めるな。気持ちよくて死んじゃうなんて、男冥利に尽きるな」 「そ、そんな事を言ってな──」 どこか見当違いな言葉を発し、何故か照れているように見える伏見。 堪らず音羽が言い返
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100話

伏見の寝室には、音羽の嬌声と肌と肌がぶつかり合う衝突音がひっきりなしに響いていた。 もう無理、やだ、と泣き声を上げ、逃げる音羽を何度も掴まえ、ベッドに縫い付け腰を突き上げる伏見。 伏見の獰猛な瞳は、もう目の前の音羽しか映していない。 自分の下で乱れ、喘ぐ音羽の美しさに、何度欲望を放っても熱が収まる事はなく、執拗に何度も音羽を求めた。 キスをして呼吸を奪い。 何度も突き上げ、絶頂させて音羽から冷静な思考を奪う。 伏見は腰をぐりぐり押し付けつつ、繋いだ音羽の手に唇を落とすとまるで懇願するように囁いた。 「音羽、好きだ──。お前が好き過ぎて、どうにかなりそうなほど……」 「れ、蓮、夜……っ?」 息も絶え絶えな様子で、音羽が瞑っていた目を開け、伏見を見つめる。 焦点の合わない目で、どろりと快楽に濡れた音羽の瞳。 そんな瞳に見つめられ、伏見の背筋にぞくぞくと快感が走る。 音羽が自分を見てくれている。 真っ直ぐ自分を見て、そして体を許してくれている──。 次は、心も欲しい。 音羽の心も、体も全部欲しい。 渇望していた音羽の全てが、今目の前にある。 伏見は音羽の頬を両手で優しく包み込むと口を開いた。 「音羽……っ、俺には、お前だけ……っ。お前だけだ。話せない事も多いが……、絶対にいずれ全て話す。だから、俺を──見捨てないでくれ……。捨てないでくれ……っ」 「蓮夜……?」 「──〜っ」 音羽が伏見の手に自分の手を重ねる。 音羽自ら、触れてくれる。 その嬉しさに耐えきれず、伏見は奥に埋めていた自分自身を思い切り引き抜き、そして間髪入れずに音羽の最奥に叩き付けた。 「──っ!」 喉を反らし嬌声すら上げられずに絶頂に至った音羽の痙攣に、伏見も声を我慢し切れず小さく喘ぎ声を漏らす。 そして、2人はほぼ同時に果てたのだった──。 ◇ (体が、痛い……ダルいし……喉も乾いた……) 音羽は、自分の体が動かせないほどの疲労感に襲われている事に呆然としていた。 (こ、こんな風に……抱き合う事なんて……今までなかった……) むしろ、最後のあたりは意識すら保てていなかったような気がする。 気持ち良すぎて意識が飛ぶ、と言う経験も音羽は初めてだった。 (ど、どうしよう……
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