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111話

Penulis: 籘裏美馬
last update Tanggal publikasi: 2026-03-29 16:23:43

「あの、伏見様──」

「ん……?どうしました、飯野さん」

おずおず、と近づいて来た飯野に伏見はきょとんと目を瞬かせて答える。

飯野は音羽と恭を優しく見つめる伏見に、何かを言おうと暫く悩んだあと、意を決したように口を開いた。

「……恭坊っちゃまのご両親は、お仕事がとてもお忙しい方々で……」

「──ああ、……ええ、分かります」

飯野の言葉に、伏見はこくりと頷く。

音羽と伏見が何度か恭の相手をしているにも関わらず、樹も裕衣も今まで1度も音羽や伏見にコンタクトを取ろうとした事が無い。

普通、自分の子供がどんな人物と接しているのか。

見知らぬ人間に、例え数十分でも預ける事になれば心配になるのは普通だ。

それなのに、今まで樹も裕衣も。恭には興味がないというように無反応だった。

それだけで、大体の事情を察してしまう。

だからこそ、飯野はバツが悪そうに切り出したのだろう。

自分の雇用主を、子供に愛情がない人達だ、なんて口が裂けても言えないだろうから。

だが、伏見は敢えて「全て察していますよ」というように悲しげに答えたのだ。

伏見の返答にほっとした飯野は、言葉を続けた。
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