一葉は泣き顔をパッと笑顔に変えて景介の胸に寄り添ったが、その瞳の奥には、目論見通りに事が運んだことを確信する狡猾な光が宿っていた。新たな門出を世間に、そして自分自身に言い聞かせるかのように、景介は一葉を連れて華やかな場へ頻繁に顔を出すようになった。最高級のジュエリーを買い与え、一流のオークションに同行させ、彼女のためだけにレストランを貸し切る――一葉もそれに見事に応え、人前では愛くるしく従順な恋人を完璧に演じてみせた。しかし、その「甘い生活」の裏側で、景介の心には言いようのない疲弊が蓄積していた。一葉のわがままは、日に日にエスカレートしていったのだ。「プライベートジェットが狭い」と毒づき、シャンパンのヴィンテージが指定と違うと騒ぎ立てる。果ては、社運を賭けた重要な国際会議を放り出してオーロラを見に行こうと、物を投げつけて泣き喚く始末だ。そのたびに景介は、彼女がかつて自分を救ってくれたという「恩義」を思い出し、自分を納得させては妥協し、彼女を甘やかし続けた。だが、胸の奥で雪だるま式に膨れ上がる苛立ちと虚無感は、もう隠しようのないほどに大きくなっていた。ふとした瞬間に、意識が遠のくような感覚とともに思い出す。奈緒は、この五年間で自分に何かをねだったことなど、ただの一度もなかったのではないか。彼女はいつも、静かな凪のようだった。帰宅すればそっと温かい白湯を差し出し、夜なべをすれば、何も言わずに心のこもった夜食を整えてくれていた。そんな情景が脳裏をかすめるたび、景介は言いようのない苛立ちに襲われ、その思考を強引に振り払った。月日は瞬く間に流れ、三年の歳月が過ぎた。共に過ごす時間が、彼女が被っていた仮面を一枚ずつ剥ぎ取っていった。そこに残ったのは、虚飾にまみれ、湯水のように金を使い、激しい感情の起伏で景介を振り回す、ただの浅ましい女の正体だった。彼女は景介の家族カードを湯水のように使い、世界中で買い物に明け暮れた。クローゼットには一度袖を通したきり、あるいはタグすら付いたままの高級ブランド品が山のように積み上げられている。さらに彼女は、景介に対し「即レス」を絶対のルールとして強いた。返信がわずかでも遅れれば、数十億の資金が動く極めて重要な会議の最中であろうと、執拗に会社の代表電話を鳴らし続けた。そして、事あるごと
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