ぼんやりと物思いに耽っていると、手元のスマホが短く震えた。陽咲はロックを解除した。蒼空から一枚の画像が送られてきている。それは彼女に制作を依頼したい陶器のデザイン画だった。陽咲は画像を長押しして保存し、画面を軽くタップして返信を打った。【周防さん、一週間お時間をいただけますか。一週間後には完成させてお渡しします】相手からはすぐに返事が来た。【急ぎではありませんよ、清水さん。お時間のある時に作っていただければ結構です】陽咲は【分かりました】と返し、あずまやでもう少しだけ夜風に吹かれてから、部屋へと戻った。翌日。陽咲は起きて身支度を整え、朝食を済ませると、海棠陶房へと向かい、蒼空から依頼された陶器の制作に取り掛かった。それから3日が経ち、陶器作りは完成に近づいていたが、病室のほうは依然として何の動きも見せなかった。前日の夜に志保から受けた報告によれば、怜央が悠里と話をしているか、大輔夫婦が悠里と雑談しているかのどちらかだという。どれも取るに足らない世間話ばかりだった。陽咲はひとまず、引き続き監視を続けるよう志保に命じた。4日目の夜。陽咲はいつものように、志保と一緒に自室で盗聴器から流れてくる音に耳を澄ませていた。盗聴器越しに、怜央の声が聞こえた。「会社で急なトラブルがあったから、戻って対応してくる」と言う。悠里は「わかったわ、気をつけてね」と返した。その後、パタンとドアが閉まる音が響いた。陽咲は小さくため息をついた。やはり今夜も、何一つ収穫もないまま終わってしまうのかしら……そう諦めかけた、その時だった。盗聴器の向こうで、しばらく沈黙が続いた後。病室のドアが、そっと押し開けられる音がした。陽咲と志保は同時にその音を捉え、ただならぬ気配に思わず顔を見合わせた。ズシン、ズシンと、重々しい足音が響く。陽咲と志保は息を潜めた。悠里がおずおずと、怯えたような声で呼んだ。「……お父さん」続いて、低くしわがれた男の声が聞こえてきた。「体の具合はどうだ?」悠里は恭しく答えた。「ええ、もうだいぶ良いです。お父さんが腕の立つ運転手を手配してくれたおかげで、私は大した怪我をせずに済みましたから」陽咲はカッと目を見開き、全身の毛が逆立つのを感じた。病室にいるその男――間違いない、須藤智琉だ。
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