その時が来れば、堂々と怜央と離婚できる。陽咲は以前まとめた陶芸の理論をもう一度見直した。明日の仕事終わりに、どこか土練りができる場所を探し、鈍った勘を取り戻そうと決めた。怜央へペアのカップを作ったのを除けば、もう二年近く陶芸から離れている。栞奈から与えられた一ヶ月という期限を思い出し、時間を見つけては土を練り、感覚を取り戻すことを決意した。祖父から教わった技術を埋もれさせるわけにはいかない。正雄の技が、再び世に出る時が来たのだ。翌朝、陽咲は少し遅く起きた。身支度を整えて一階へ朝食に向かうと、怜央と悠里はすでに家を出て出社した。陽咲が朝食を口にしていると、幸子が報告を兼ねて話しかけてきた。「奥様、悠里様の目つきといったらありませんわ。旦那様をそれはもう、露骨なほど熱っぽく見つめて……見ていてこちらが当てられるような、あざとい媚びの売りようでしたよ」幸子は身震いし、嫌悪感を露わにした。「……山田さん、今後はそういった不快な描写は省いて」幸子によれば、二人は一緒に朝食をとっただけではない。悠里が甘えて怜央に会社まで送ってくれるようねだり、怜央もそれを拒まなかったという。陽咲は頷き、特に気にする素振りも見せなかった。まるで、自分には全く無関係な出来事であるかのように。幸子はたまらず口を挟んだ。「奥様、お辛くないのですか?」陽咲は答えず、ただ今月分の百万円はすでに振り込んだとだけ伝えた。それが、彼女が幸子に支払っている報酬だった。会社に着いてから、陽咲と仲の良い同僚がこっそり耳打ちしてきた。「ねえ、知ってる?さっき社長と悠里さんが同じ車から降りてくるのを見た人がいるのよ!それって、悠里さんこそが社長の極秘結婚の相手だってことでしょ!」同僚は好奇心の塊といった様子でまくしたてた。社内の人間が皆、悠里こそが怜央の秘密の妻だと信じ込んでいるのを目の当たりにしても、陽咲は弁解するどころか、適当に相槌を打って話を合わせた。あの二人が何をしていようが、自分には関係のないことだ。自分に火の粉が降りかからなければそれでいい。陽咲が席についた直後。陽咲と怜央の結婚を知る社内でわずか二人しかいない事情を知る者の一人である琉生に呼ばれ、陽咲は社長室へと向かった。部屋に入ると、怜央と悠里が
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