陽向が先ほどまでのように取り乱していないのを見て、千雪はようやく少しだけ胸を撫で下ろした。そうして、彼女は再び口を開いた。「まずは、傷口を縫い直してもらってきてください。心配な気持ちは分かりますが、焦れば焦るほど冷静な判断ができなくなって、かえって余計なトラブルを招きやすくなりますから」千雪は陽向をちらりと見た。「ほら、早く行ってください!」陽向もさすがに、千雪の懸命な説得を聞き入れたようだった。真っ赤に充血した目には、まだどこか虚ろな色が残っていた。心配そうに自分を見つめる咲夜と目が合い、陽向は先ほどの自分の無鉄砲な行動を思い出し、途端に申し訳なさそうな表情を浮かべた。「咲夜さん、ごめんなさい。さっきは焦りすぎて、我を忘れていました。今は咲夜さんのほうが僕よりずっと重傷だというのに、あんな勢いで押しかけて邪魔をしてしまって……本当にごめんなさい。わざとじゃなかったんです」陽向は咲夜に謝った。それを聞いた咲夜はぱちぱちと目を瞬かせ、眼差しで伝えた。――大丈夫、分かってる。陽向でなくても、もし咲夜やほかの誰かが、理由も分からないままこんな宙ぶらりんの状態に置かれたなら、すぐにでも相手のところへ駆けつけて、どういうことなのか問いただしたくなるだろう。何も分からないまま宙ぶらりんにされた状態は、息が詰まりそうなほど苦しいものだった。咲夜の優しい眼差しを受け、陽向は自分の傷口に目を落とすと、しばらくして口を開いた。「ありがとうございます。でも、一つだけお願いしてもいいですか?もし瞳さんが咲夜さんのところに来たら、僕に知らせてもらえませんか?どうか、お願いします。では、もう邪魔はしません。僕は先に傷口を……」本当は、先に傷の手当てをしてもらってくる、と言うつもりだった。しかし、傷口を押さえている自分の両手を目にした瞬間、陽向はまるで全身から一気に力が抜けてしまったかのように言葉を失った。あまりにも大量の血が流れている。いくら体の大きな陽向でも、さすがに耐えきれそうになかった。陽向の顔は恐ろしいほど青ざめ、その体も今にも崩れ落ちそうにふらついていた。そんな彼を見て、咲夜は軽く頷き、「あまり考えすぎないで」とでも言うような眼差しを向けた。ただ、この一件はどうしても咲夜の胸に引っかかったままだった。
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