その夜、智哉は残されたわずかな理性を振り絞るようにして、屋敷を出ていった。その後、彼がどうやって薬の作用を乗り切ったのか、星奈は知らない。尋ねる機会もなかった。なぜなら、それから間もなくして、智哉のそばには華やかな美貌を持つ女性が現れたからだ。その女性は自由に屋敷へ出入りし、夜になると三階に泊まっていた。星奈も何度か、彼女の体に残った痕跡を目にしている。それ以来、星奈は智哉への想いを断ち切った。気を引こうとあれこれ手を尽くすことはできても、あれほどはっきり拒まれ、別の女まで家に連れてこられた以上、恥も外聞もなくまとわりつくような真似はできなかった。星奈は、そんな人間ではない。やがて彼女はこの屋敷を出ていった。しかし、それからもその女性は何度となく星奈のもとを訪れては挑発を繰り返し、あるとき感情を抑えきれず、星奈を階段から突き落とした。星奈は咄嗟に相手を掴み、二人とも階段を転げ落ちた。その結果、女性は流産した。そして星奈が退院すると、智哉は再び彼女をこの屋敷へ連れ戻した。一方、あの女性はその日を境に、ぱったりと消息を絶った。星奈はそのことで智哉と何度も揉めた。もう彼と一緒に暮らしたくないと訴えたものの、智哉はあの女性が流産したことを理由に、星奈をここに留め続けた。星奈も、自分が招いたことなのだから、その責任は自分で負うしかないと思った。それからというもの、彼女は自分の立場をわきまえ、智哉との間にきちんと一線を引くようになった。咲夜は二人のこれまでを聞きながら、どこか腑に落ちないものを感じていた。気になって尋ねた。「でも、どうして今泉さんは星奈さんをここへ連れ戻したの?その女性のために星奈さんへ復讐しようとしてるようにも見えないし……本当にその人を愛してたの?星奈さんに諦めさせるために、今泉さんがわざと誰かを連れてきて芝居をさせたってことはない?」「ちゃんと調べたわよ。あの人、智哉さんの初恋の相手なの。ずっと忘れられなかった相手で、別れたあとに復縁したの。でも、あの事故があってから、またどこかへ行っちゃった」星奈は嫌そうに唇を尖らせた。だからこそ、星奈も仕方なくここに残っているのだ。そもそも星奈自身、智哉が本気で自分を連れ戻そうと思えば、どれほど遠くへ逃げたところで意
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