耀は笑みを浮かべた。「私は、彼女を妻に迎えたいのです」その言葉が落ちた瞬間、琉生は鼻で笑った。「お前、ずいぶんと野心家だな」もし楓がニックファミリーの次期トップに座れば、彼女の夫となる耀の権力も、天井知らずに跳ね上がることになる。耀は椅子を引き、琉生の向かいに優雅に腰を下ろした。「琉生様。もし私と彼女が婚約し、彼女がファミリーへ帰還すれば、私は婚約者という大義名分のもと、公然と彼女を支援できるようになります。そうは思いませんか?それに、私にはそこまで途方もない野心などありませんよ。私が望むのは、MKグループの全権だけです。彼女が無事にファミリーのトップに立った暁には、婚約などいつでも破棄していただいて構いません。この取引、琉生様にとっても損がないはずですが?」琉生は目を伏せ、長い指先で茶器の縁をリズミカルに叩きながら、耀の提案の真贋を値踏みした。長い沈黙の後、彼は顔を上げ、耀の目を見据えた。「MKの全権はくれてやる。だが、俺はお前を信用できない」「琉生様。もし私を信用できないと仰るなら、事前に強固な契約書を交わしても構いません。そうしておけば、万が一私が後で反故にしようとした時でも、その契約書が私を縛る絶対的な枷になるでしょう?」琉生はそれに直接答えることはせず、淡々と告げた。「今日は帰れ。この件は俺も少し考える」何より重要なのは、まだ楓自身の意志を全く確認していないということだ。彼女が自分がニックファミリーの血を引く正当な後継者だと知らされた時、一体どんな反応を示すのか予測もつかない。まずは彼女と直接接触し、海外の内情をすべて説明する機会を設けなければならない。琉生が即座に拒絶しなかったことで、自分の提案が半分受け入れられたと悟り、耀は満足げに笑った。「承知いたしました。では、本日はこれで失礼します。何かご入用でしたら、いつでも私にお申し付けください。私は琉生様の味方です。私も、彼女以外の人間がニックファミリーを乗っ取るような事態は望んでおりませんので」「ああ」耀が退室した後、琉生も茶器を置き、その場を後にした。翌朝。湊を幼稚園へ送り届け、邸宅へ戻ろうとしていた楓の前に、不意に琉生が立ちはだかった。「望月さん。少しお時間をいただきたい。お話ししたいことがあるのだが」彼が先日湊を
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