間もなく、楓がレストランのフロアに姿を現した。琉生は慌てて立ち上がり、彼女の元へ歩み寄って席へと案内した。「楓。お母さんは、この何年もファミリーのトップとして命令を下す立場に慣れきっている。だから、無意識のうちに人を見下したような物言いになるかもしれない。そのつもりで聞いてやってくれ」「ええ、分かってるわ」琉生に案内され、二人はテーブルに到着した。琉生は沙弓を見た。「叔母さん、こちらが楓だよ……どうだ?若い頃のあんたにそっくりだろう?楓。こちらが、君のお母さんだ」楓と沙弓は互いを見つめ合い、しばらくの間、深い沈黙が流れた。十数秒が過ぎた頃、沙弓は小さく顎をしゃくった。「座れ」その声は冷淡そのもので、微塵の温度も感じられなかった。目の前のこの威圧的な女を、楓は自分の記憶の中にある「優しくて愛に溢れた母親」の姿と重ね合わせることがどうしてもできなかった。楓は沙弓の向かいに腰を下ろし、「琉生から、私をM国へ行かせたがっていると聞きました」と切り出した。沙弓は頷き、値踏みするような鋭い目で楓を見据えた。「あなたが私とM国へ来るなら、ニックファミリーの後継者の座をあなたに与える。そうすれば、あなたは一生使い切れないほどの富を手にし、この世のすべてを意のままにできる」それは、この世の誰もが拒絶できない究極の条件だと彼女は信じて疑わなかった。この娘も当然、喜んで飛びついてくるはずだ。だが、楓は静かな眼差しで彼女を見つめ返し、淡々と問い返した。「……この世のすべてが手に入る?」沙弓は少し考えた。現在の自分は、確かに望めば何でも手に入る立場にある。彼女は頷いた。「ああ、そうだ」「ならば……私が失った過去十数年分の『母からの愛』も、私に与えてもらえる?」沙弓は眉をひそめ、理解しがたいといった色を浮かべた。まさか娘が、これほど愚にもつかない感傷的な戯言を口にするとは予想外だったのだ。「今日あなたに会うまで、私はあなたにそれなりの期待を抱いていたんだがな。まさか、ここまで幼稚で未熟だとはな。もう少し賢い頭を持っているなら、そんな馬鹿げたセリフは出てこないはずだ」楓は自嘲気味に笑い、ゆっくりと言葉を紡いだ。「沙弓さん。あなたにとっては、使い切れないほどの富が何よりも重要なのでしょうね。でも、私
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