月曜日。 午前八時四十分。 歌原彩の自宅。 兼、UTAHARA MODEL OFFICE。 「おはようございます」 良太は玄関を開けた。 返事はない。 彩はすでに学校へ行っている。 家政婦も別の部屋で仕事中だ。 靴を脱ぎ、事務所スペースへ向かう。 鞄を置く。 パソコンを開く。 大会後に届いた仕事の依頼。 その数を見て、良太は苦笑した。 「……すげえな」 画面をスクロールする。 「なあ、レイラ」 返事はない。 「仕事につなげるって言っても、高校卒業までは月一ペースだったよな?」 静かだった。 良太は少し待つ。 「……ああ」 昨夜のことを思い出した。 《少し疲れたわ》 コンテストでは、一日中、良太の身体を使わせた。 幽霊がどうやって眠るのか、正確には知らない。 それでも、疲れたと言っていた。 「まだ寝てんのか」 良太は一人で納得した。 「まあ、今日くらいゆっくり休めよ」 そう言って、仕事を始めた。 ◇ 午前九時十分。 最初は支払いだった。 RE:CODE MODE CONTEST。 佐久間博之。 相沢七瀬。 高梨奏。 請求書、交通費、制作費、追加費用。 契約内容と照合しながら、一件ずつ確認する。 「……高い」 返事はない。 「いや、仕事考えたら高くないんだけどさ」 もう一度、合計金額を見る。 「まとめて見ると、やっぱ高いわ」 普段なら、 《払うものは払いなさい》 くらいは返ってくる。 良太は椅子の背にもたれた。 「……寝てるんだったな」 支払いを実行する。 資金はある。 彩も以前、必要なら姉が残したお金を使ってほしいと言っていた。 それでも、良太には目標があった。 いつか、彩の資産に頼らず、事務所の収入だけで運営できるようにすること。 「そのためにも、ちゃんと仕事取らないとな」 一拍。 「もちろん、彩に無理させない範囲で」 返事はない。 良太は少し笑った。 「今、結構いいこと言ったんだけどな」 そのまま次の請求書を開いた。 ◇ 午前十時半。 大会後の仕事依頼。 若手デザイナー。 ファッション誌。 Web企画。 コスメ。 国内ブランドの広告。 映像出演。 金額も条件も、それぞれ違う。 良太は一件ずつ確認した。
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